【4話】義娘は”超”がつくほどの美少女でした
翌朝。
ふかふかのベッドの上で、フェリシアは目を覚ました。
体の下にあるベッドは、イスピラル子爵家で使っていた今にも壊れそうだった粗末なベッドとは大違い。
まだ脳が完全に目覚めていないフェリシアはあまりにの違いに、
「これは……夢?」
心配になってしまった。
ほっぺたを指でつねってみる。
「……痛いわ」
ちゃんと痛い。
(よかった、現実だったわ)
フェリシアはホッと安堵。
体を起こして周囲を見渡す。
「……本当に広い部屋だわ」
昨日メイドに案内されたときにも思ったことを、あらためて実感した。
ここはフェリシアにあてがわれた部屋だ。
イスピラル子爵家で使っていた部屋の、何倍もの大きがある。
これまでの暮らしとははなにかもが違う。
フェリシアは、まるで別の世界にでもきてしまったような感覚になっていた。
「失礼いたします」
ぼーっとしていると、メイドが部屋に入ってきた。
「フェリシア様、おはようございます。朝食の準備ができました。食堂までお越しください」
「ありがとう」
部屋を出ていくメイドを見送ったあと、フェリシアはパジャマからワンピースドレスへ着替えた。
食堂へと向かう。
フェリシアは一階にある大部屋――食堂に入る。
中央の食卓テーブルでは既に、グラディオが食事を始めていた。
フェリアシアはグラディオの対面まで進んでいく。
「グラディオ様、おはようございます」
「おはよう」
グラディオの三白眼は今日も絶賛吊り上がっているが、怒っているわけではない。
優しい雰囲気で挨拶を返してくれたことがその証明だ。
フェリシアは足元の席に座る。
グラディオと向き合う形となった。
ほどなくして、朝食が運ばれてきた。
フェリシアはナイフとフォークを手に持ち、食事を始めていく。
カチャカチャカチャカチャ。
大きな食堂に響くのは、静かな食器の音だけ。
グラディオとの初めての食事が始まるも、会話はいっさいなかった。
(……気まずいわ。こういうときって、なにか話した方がいいのかしら。でもいったい、なにを話せば……)
共通の話題があればいいのだが、フェリシアは昨日やってきたばかり。
当然、そんなものはない。
会話のネタ選びに悩んでいると、ガチャン。
出入り口の大きな両扉が開いた。
トコトコトコと小さな足取りで食堂に入ってきたのは、銀髪の美少女。
(か、かわいすぎるんだけど!!)
フェリシアは一目見た瞬間、大きな衝撃を受けた。
背中まで伸びた銀の髪は、絹のように美しい。
くりくりとした瞳は青色。サファイアのような輝きを放っている。
あどけない顔立ちは整っていて、人形みたいだ。
要するにその少女は、超がつくほどの美少女。
こんなにかわいい生き物はみたことがない。地上に舞い降りた天使だ。
「娘のリリアンだ。君には彼女の教育係になってもらう」
「――!!」
フェリシアの顔に満面の笑みが浮かぶ。
(さいっっっ、こーだわ!!)
こんな美少女の教育係になれることが、もう嬉しくてしょうがない。
契約結婚をしてよかったと改めて思った。