表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/31

【31話】本当の夫婦


 ボルクとの決闘を制したグラディオが、駆け足でこちらへ向かってきた。

 

「二人とも無事か!」

「はい! 私もリリアンも、怪我はしていません!」


 ボルクは体を拘束してきただけで、それ以上のことはしなかった。

 危害を加えない、というあの言葉は本当だった。


「待っていろ! すぐにロープを切ってやる!」


 グラディオが剣でロープを切ってくれた。

 柱に縛られ拘束されていたフェリシアとリリアンの体が、自由になる。

 

 二人を見たグラディオの赤い瞳から、スーッと涙がこぼれおちた。

 

「無事でよかった……!」


 グラディオは、二人の体をギュッと抱きしめた。

 

 抱きしめられているフェリシアとリリアンも、ボロボロと涙を流す。

 グラディオの大きくて温かな胸の中で、二人はわんわん泣いた。

 

 

 気を失ったボルクの身柄を衛兵に引き渡してから、三人はレクシオン公爵邸に戻ってきた。

 

 エントランスの手前にある中庭で、グラディオの足がとまる。

 

 後ろにいる二人も、それに合わせて足をとめた。

 

「二人とも少しいいだろうか」


 グラディオは後ろを振り返った。

 真剣な表情をしている。

 

「今回の仕事で俺が生き残れたのは、大事な家族のことを思い浮かべたからだ。リリアン、そしてフェリシア……二人のことをだ」


 グラディオがフェリシアをまっすぐに見つめる。

 真紅の三白眼には、大きな決意が宿っていた。

 

「フェリシア。君はもう俺にとって、大事な家族の一員となっている。これはまぎれもない本心だ。だからもう、嘘の関係は終わらせたい。これからは本当の夫婦として、君と歩んでいきたい」


 片足でひざまづいたグラディオが、手を差し伸べた。

 

「フェリシア、愛している。俺の妻になってくれ」

「……はい!」

 

 力強く返事をしたフェリシアは、その手をギュッと握る。

 緑色の瞳からは涙が溢れていた。

 

 それはずっと、フェリシアが求めていた言葉。

 でも決して、欲してはいけない言葉だった。

 

 今の幸せな暮らしを続けるためには、グラディオを好きになってはいけない。

 だからフェリシアは、気持ちをしまってきた。

 

(でも、グラディオ様がそう言ってくれるなら……!)

 

 もう我慢はしなくていい。

 本心のまま動いていい。

 

 だからフェリシアに、断る理由なんてあるはずがなかった。

 

 温かな気持ちが全身をくまなく満たしていく。

 人生で一番嬉しい言葉を言ってもらえたフェリシアは今、人生で一番の幸せを味わっていた。


「やったー! お母様!」


 リリアンがフェリシアに抱きついた。

 お母様、と呼ぶその声は弾みに弾み、口元には満面の笑みが浮かんでいる。

 

 

 新しい関係となった三人を照らすのは、明るい太陽。

 その輝かしい光は、これから三人が歩ていく未来の道を示してくれているかのようだった。

これにて完結です!

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!


もしよければ、↓にある☆☆☆☆☆から評価や、ブックマーク登録をしていただけると、とても嬉しいです!


それではまた、次回作でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
完結お疲れ様でした。 星4はもう少し深みが欲しかったと思います。 妹や親のその後、主人公の幸せな話とか番外編で書くのかもしれませんが今の段階では惜しいと思いました。 今後の活躍を期待してあえた5は裂け…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ