【18話】嫌な再会
午前九時。
フェリシアはいつものようにリリアンの部屋で、令嬢教育を行っていた。
今日もリリアンは最高にかわいい。
見ているだけで朝から元気を貰える。
あまりのかわいさに口元が緩んでしまいそうになるが、今は令嬢教育教育中。
しっかりと気を引き締める。
(集中しなきゃ!)
気合を注入した、そのとき。
ドアから丁寧なノック聞こえてきた。
「失礼します」
部屋にメイドが入ってきた。
フェリシアのところへ向かってくる。
「フェリシア様にお客様が見えております」
「私に?」
フェリシアには、わざわざ訪ねてくるような親しい間柄の人間はいない。
いったい誰だろうか。
「お客様の名前は?」
「ミレア・イスピラル様です」
「――!?」
フェリシアは声が出なくなる。
イスピラル子爵家を出たときに、もう二度と会うことはないと思っていた。
ミレアがなんのために会いにきたのだろうか。
わからない。
(でも、いいことだけでないのは確かだわ……)
ミレアはいつも、フェリシアを傷つけることを楽しんでいた。
そんな相手が、フェリシアにとって得になることをするためにやってきたとは思えない。
「ミレア様は、グラディオ様とフェリシア様に面会を希望されていました。ですので既に、ゲストルームへご案内しております。それでは私は、これで失礼します」
「……ありがとう」
メイドを見送るフェリシアは顔が真っ青になっていた。
イスピラル子爵家でミレアからさんざん受けてきた、数々の罵倒と暴力の記憶がよみがえる。
震えがとまらない。
「フェリシア様……大丈夫ですか?」
「……心配ないわ。リリアン……悪いけど令嬢教育をいったん中断させてもらうわね。お客様に会わなくてはいけなくなってしまったわ」
ミレアには会いたくない。
リリアンとこのまま、令嬢教育を続けていたい。
でも、それはダメだ。
会わなければならない。
ここで出ていかなければ、ミレアはなんらかの方法で報復をしてくる。
彼女はそういう人間だ。
その矛先がフェリシアに向けばいいのだが、そうとは限らない。
レクシオン公爵家へ向くということも十分に考えられる。
グラディオやリリアンに、迷惑はかけたくない。
「心配してくれてありがとうね」
心配そうにしているリリアンの頭を優しく撫でた。
それから、リリアンに背を向ける。
(ここは勇気を出す場面よ……!)
恐怖を押し殺すようにして、フェリシアは奥歯を噛んだ。
拳を強く握る。
緊張した足取りで、フェリシアはゲストルームへ向かっていった。
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