『あの子たち』3人娘の会話
「目標、あと1匹、場所は...リレッタ、そちらに行きますわ」
「了解、やっちゃうね!」
「よろしくお願い致しますわ」
「ーー主よ、悪しき御魂を導き給え...」
「そして世に平穏のあらんことを」
「...リレッター」
「ベレッタ」
「滞りなく、ですわね。さすがですわ、リレッタ」
「うん、ベレッタもお疲れ様」
「ですが...くすっ...その口上はやはりおかしいと存じますの」
「べ、別にいいでしょ...黙ってやるよりも、なんか言いながらやった方が、かっこいいじゃん...」
「信心深いって思われますわ」
「神さまとか信じるってわけじゃないけど、もしいるんだとすれば、祈るくらいはしてもいいんじゃないかなって思っただけだから」
「それもいいことかもしれませんわね」
「それに、辛い時に祈ると救いになる。修行中とか訓練中とか」
「...その言い方ですと、やはり僧侶か何かだと思われますわね...」
「そうでもしないと泣きたくなる」
「やはり辛いんですのね。リレッタが掃除した後ですが、たまに涙だか汗だかが垂れてますわよ」
「...それは内緒で...それより、ネリーは?」
「そうですわ!うっかり忘れてました。合流致しませんと...あら...?」
『〜〜~♪〜〜~』
「これはネリーのだね...心地よい響き...」
「心も身体も癒されていくようですわ...」
「...『よう』...じゃなくて...癒されてる...の...」
「ネリー、お疲れ様、ありがとう、癒してくれて!」
「......『癒しの音色』......満足、した......?」
「ええ、大変癒されましたわ。ではそろそろ帰りましょうか」
「おっけー!」
「...ごめん、なさい...ネリー、もう、眠く、て...リリィ、おんぶして......」
「いいよ!でも、いいの?走るからかなり揺れるけど、ベレッタの方が良くない?」
「......ベリィ、ネリィのこと、忘れた......」
「...き、聞こえてましたの...申し訳ございませんわ...ネレッタ」
「......ぷい......」
「まあまあ...ベレッタ、準備は出来てるの?」
「あら、私なら心配ご無用ですわよ。『浮遊』、『自動追尾』、『障害物避け』の魔術を用いてふよふよと優雅にあなたを追いかけますわ」
「ベレッタもちょっとは動いて体力つけた方がいいんじゃないかな?」
「体力などいりません。私が使うのは頭と魔力だけで十分ですの...それともなにか?ドレスを身にまとった美少女が汗だくデロデロで疲れきっている姿を見たいなどと言う趣味嗜好でもお持ちですの?」
「自分で美少女言っちゃったよ…それにドレス着た女の人が冒険者として森に出向いてるってのもおかしいからね...」
「ネレッタやお母様、お姉様にも同じこと言えまして?」
「う...母さんはひざ下スカートだけどまだマシな格好だし、フリフリのロリータだけど戦闘スタイル的にあまり動かないネリーはいいとしても、師匠はなぁ......なんでマキシ丈スカートであんな動きができるのか...」
「素材的に軽量であり、特殊な技術で作られた決して壊れないそうですの。見た目もパーフェクト、機能的にも素晴らしいなんて...どこまでも素敵ですわ…!」
「ベレッタってばその言い方だと、師匠が好きなのか師匠の服が好きなのか分からなくなっちゃうよ?」
「あらリレッタ、人の着ている服が好きになるなんて発想こそ普段からしていなければできませんわよ?」
「それは普通の事じゃない?あたし結構可愛い服は好きだし。ネリーの服みたいにフリフリってしてるのも可愛いし、ベレッタのドレスも綺麗で素敵だと思うよ?」
「...それはありがとう存じます。けれどリレッタ、あなたのその服の着方は少々異なっていると存じますが...」
「東国の着物だね。左右間違えると死装束になるって」
「スカートみたいなものもあったのではなくて?」
「袴のことだね。あたしは袴は好きじゃないからスパッツ履いてるけど」
「なかなか酷い格好だと存じます...」
「結構動きやすくていいんだけどなぁ」
「...まぁいいですわ。帰りましょう」
「そだね!それじゃ行くよー!」
「...ん...ぅ......」
「ネリー?起こしちゃった?まだもうちょっと着かないけど」
「...思ったより、揺れない...リリィの、背中...あったかい...」
「そ、それは、良かったね...」
「...リリィ、止まっ、て...」
「わかった...ズサーっとストップ。それで...」
「...気が、ついた...?」
「リレッタ、気づきまして?囲まれてますわ」
「気配的に気づいてたけど、やっぱ囲んできたね...どうしよっか?」
「...出来れば平和的に解決したいところですわね」
「こんな森の中で女の子のパーティ囲んで来るなんて、絶対平和的にならないよね…ネリー、一旦降ろすね」
「...ん...」
「へっへっへっ...ようやく諦めたようだなぁ?」
「よく見りゃ可愛いらしいお嬢ちゃんばっかりじゃねえか」
「奴隷としても高く売れそうだな!へへっ!」
「あの、盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、あたしら急いでるんだよね。道を空けてくれたら嬉しいんだけど?」
「ヒャハハ!状況がわかってねえのか!?」
「そんなに急ぎてぇんなら、身ぐるみ含めて全部置いて行きな!」
「...なんとも耳障りな音色ですこと。調律をなさった方がよろしいのではなくて?」
「...調律、したところで...良く、なりそうに...ない、から...廃棄で、いいと、思う、よ...?」
「ねえなんで挑発みたいなことしてんのかな?一応平和的に話してみてるんだけど?」
「リレッタ、残念ながら交渉は決裂しているようですわ」
「判断が早いねぇっ!?」
「何わけのわからないことを言ってんだ...置いてくのか、抵抗するのか、どっちなんだ!?」
「こっちは判断が遅いねぇ...」
「ああん?」
「目の前で漫才みたいな話してる時点で抵抗する気満々ってことでしょ?ちゃんと人のお話聞いててよね」
「このガキが...」
「噛み合ってるようで噛み合ってるとは思えませんわ...大丈夫ですの?この流れ...」
「...きっと、大丈夫...リリィなら...上手に丸く納めてくれる、はず...」
「人を見かけで判断しようとするなんて、お馬鹿さんだけだよ?」
「......あっ...ダメ、そう......」
「平和的な話し合いはどこへ行ってしまったんですの?」
「あたしより先に交渉決裂って言ってた子達が何を言ってるんだろうかねぇ?」
「そんなこともありましたわね」
「...遊んでる場合じゃ、ない、よ...そろそろ...やっちゃお?」
「妹たちとの会話が成り立たない件についてぇ...」
「この人数差だ、よもや勝てると思ってんじゃねえだろうなぁ!?」
「ざっと見て、たった40人ぽっちですの」
「...3対40......少ない、ね...」
「普通に考えたら多いんだけどなぁ...でもさ、『レッタ三姉妹』ならその限りじゃないんだよねぇ」
「れ、『レッタ三姉妹』だとぉっ!?」
「3人だけで大盗賊団『101匹わんちゃん』を壊滅に追い込んだ、あの!?」
「楽器演奏で強大な存在を操るゴスロリ幼女、末っ子『ネレッタ』、自他ともに認める魔術馬鹿似非貴族令嬢、次女『ベレッタ』、信心深いことで有名な長女、神速の双剣士『リレッタ』ってことか!?」
「...ネリィって呼んでほしい...」
「立派な他己紹介でしたわ。褒めて差し上げます」
「...神速って二つ名、好きじゃないんだけどな。もっと速い人がいるのにさ...ともあれそういうことだから、もし怪我したくなかったら武器を捨てて跪いて神様に許しを祈ってね。きっと許して貰えると思うよ!」
「ひ、怯むな!ハッタリかもしれねえ!全員でかかりゃ怖くねえ!」
「やろう、ぶっ殺してやる!」
「...実に、愚か...『魔操・天獄界の奏』」
「見せてあげますわ、魔道の神髄を!!広域魔方陣展開!多重火炎弾、掃射!!」
「もう、みんな血の気が多いんだから......我が願いは平和な世界、我求むは抑止の力、我が祈り叶うためならば、我は鬼にも畜生にもなろう。我がゆく道即ち修羅の道なり...『羅刹・縦横無尽』...世に平穏のあらんことを」
「うん、こんなもんだね」
「......眠気、増すだけだった...雑魚ども、め...あふ...」
「初級魔術しか使ってませんのに、骨のない人達でしたわ。『拘束』、『運搬』、『追尾』...さてさて、これ以上時間を食うと大変ですの。早く参りましょう」
「んにゃ?何かあったっけ?」
「お姉様から指令、ですわ」
「師匠から?...通信来てたんだ...『魔人と戦闘するから早く帰ってらっしゃい』...?えぇー...地獄じゃん…」
「という訳ですから、さぁいざ参りましょう!お姉様が待っていますわ〜!」
「...ネリィ、今度は、ベリィの方にお願いする、から...」
「うんわかった。早く帰れるように全力で走るね!その前にこいつら引き渡してからだけど...まぁすぐ終わるでしょ!」
「出発!ゴーゴー!ですわー!!」
前回からずいぶん間が空いてしまいましたが、あの子たちの会話でした。
レッタ三姉妹とコロネリアやフィアラとの関係、分かりにくいけれど会話の中じゃなかなか出てこないかなと思い、こんな形となりました。最終的に設定みたいな感じで説明出来ればと思います。
本当はもっと三姉妹の能力を引き出すために展開を考えてたんだけど、今回は見送り。このお話以外で色々書ければと思います。
次回はついに魔人との戦いになるかと。ここまで読んで下さりありがとうございました!!