私は春を嫌う
春の訪れは
そっと忍び寄る
心に触れないでと
何度願っても
それは日差しの隙間から
滑り込む揺れる花びらのよう
春が嫌いだ
髪が伸びる
遠い記憶が指先に絡みつく
その一本一本が
過ぎ去った時だというのに
短く切ったはずの髪が
知らぬ間に背中を覆い始める
それは何かを隠そうとしているのか
それとも何かを呼び戻そうとしているのか
桜が咲く季節に
髪は風を捕え
結び目をほどいてしまう
春は嫌いだ
髪が伸びる
私を追い越し
向かおうとするから
何度春を迎えても
この気持ちは変わらない