五話 一緒に
その夜、就寝準備をして勇と蓮は共にベッドへ入った。実をいうと、蓮はとてつもなく怯えていた。何度か前の主と一緒に寝た時に窒息されられるギリギリまで首を絞められたのがトラウマだからだ。夜もまともに寝れないのはそれが理由。寝たとしても30分や1時間が限界なのだ。
「……。近い……また罰が来る……早く、早くしないと……(小声)」
「……zzz」
「……、とりあえず準備しないと。」
「……何処へ行く?」
「……起きていたのですか?」
「うーん……?」
寝ぼけているな……、こんな姿を見た女性は勇に一目で惚れてしまうほど美しい顔立ちだ。蓮は勇の姿を改めて見つめ直していた、美しい天使のような悪魔のような……。よく分からないが、一つだけ言えるのは、何を考えているか分からないこと。醜い僕に何故かまってくるのか、その意図は到底読めるものでは無い。蓮はそう感じるのだった。
「……ポンポン」
「ん?……何をしている……?」
「頭。撫でさせてもらってます。」
「……心地よい。」
「……ありがとうございます。」
「……眠れそうだ、お前も早く寝ろよ。」
「えぇ……。仕事を終えたら(小声)」
ベッドから離れた蓮は、勇の姿を見ながら密かに抜け出せる準備をした。そして、いつも通りの手順で家へと向かった。
翌日、勇が目覚めたら横に居たはずの蓮が居ない。そう思いながら部屋を見回すと、窓を拭いている蓮を見つけた。
「蓮。」
「お目覚めになりましたか。おはようございます。」
「……良く寝れたか?」
「……えぇ、おかげさまで。」
「そうか……、なら良い。今日も励むように。」
「承知しました。」
「……お前、顔のやつどうした?」
やはり聞かれた……。そう、今日の夜中、蓮は家に帰り顔面に傷を付けられてしまったのだ。正確には、割れた窓ガラスの破片が顔に深く刺さってしまっただけだ。そのおかげで、顔に応急処置をして、勇に見られてしまうという嫌なプチ事故に当たった。
「……実は、昨晩寝ている間に自分で傷付けてしまったと思うのです。無意識なので、正確なのかは分かりませんが。」
「そうか……。何かあったら言え。」
「承知しました。」
深く聞かれないよう言葉を考えて出したが、心配されてしまったな……。蓮は少し申し訳ないと感じた。いずれ真実を話さなければいけなくなる……、その時が近いことは誰も分からなかった。