四話 仕事は信頼できる人に
次の日の朝早く、蓮は仕事に手をつけ始めていた。幸い、服の下に隠れる傷だったので軽い応急処置だけで済んだ。……誰にもバレることが無いといいけど……。心配しながらも仕事をこなす。
「……おい。」
「はい。どうかなさいましたか?主様。」
「朝早くからやっているのか?」
「……えぇ。僕はよく眠れないので。」
「……ほう?なら、今夜にでも子守りしてやろうか?」
「!?い、いえいえ!主様にそんなことをされていい人間では無いです!!」
「は、はぁ……」
いきなり言われたら驚くだろ!……傷や抜け出しがバレたら今度こそ死が来る……。なんとしても、近づくのを阻止しなければ!そう思う蓮は、行動に移した。
「そういえば、主様は何のお仕事をされているのです?」
「まぁ、色々極秘情報の管理とかだな。」
「へぇ、凄いですね!」
「……興味あるのか?」
「責任重大な仕事に下手に手を出しては、何かあったら怖いので。」
「そうか……」
勇は悲しそうな顔をした。……なんだ、こんな子供みたいな主様。余計に怖い……。
「はぁ……何して欲しいのですか?」
「俺の仕事を手伝って欲しい。」
「……執事さん居ないのですか?」
「居ない……。頼んでいいか?」
「はぁ……、そういう仕事はもっと信頼できる人にやらせるものです。出会ってから間も無い人間にやらせたら何が起きるか分かりませんよ、これは覚えておくべきですからね?」
「わ、わかったから、頼めるか?」
「引き受けさせて貰います。」
「助かる。」
……こんな事情まみれの人にそんな大事なことは頼むと危ういって教わらなかったのか……。困惑しながらも、主様のことを案じている蓮であった。
主様に仕事部屋まで案内され、蓮は手入れをしながら主様の仕事にアドバイスをしていた。勇はそのアドバイスを元に色々書類を片していた。そして夕暮れ時……
「今日は助かった。ありがとう。」
「(案外寂しがり屋さんだな。)いえ、次から信頼できる人に頼むことです。僕のような怪しい奴には頼んではいけませんよ?」
「あぁ、次からは気を付ける。」
「では、仕事を終えたので失礼します。」
「……待て。」
「……はい?」
「お礼に今日一緒に寝ても良いか?」
「は?本気ですか?」
「あぁ、悪いか?」
この人、やっぱり正気じゃない……イカれてる!蓮は困惑よりも迷いが生じた。何せ、自宅の家事代行をしなければいけなかったからだ。
「先程申し上げましたよね?信頼できる人に頼めと。僕のような怪しい奴には頼むなと。」
「あぁ、仕事をしながら信頼できる人だと感じたから行ったのだが。何か問題でも?」
「大アリですよ!!」
困った主様だ。忠告を聞いてたのか……。蓮は更に困るばかりだ。ここは潔く諦めて、次の家事代行の時に重い罰を受けるとしよう。いや、深く眠らせれば抜け出せるか。
「……わかりました。今晩は共に寝ましょうか。」
「!……あぁ!」
嬉しい顔しても、すぐに離れる可能性があるのに。