二話 初仕事
今日から召使い。……また。蓮は以前、召使いという職業をやったことがあったのだ。ただ、勤めていた場所の当たりが悪かったのか、そこの主が蓮に暴行を加えていて、多量出血で警察沙汰・大事件にまでなったのだ。それがトラウマになったのだ。それからずっと召使いや人のお世話をする職業は出来なくなってしまった。だが、また召使いとして働くことになった。借りを返すこともあるが、トラウマの克服も兼ねてこの仕事を受けたのだ。 ……一瞬、おかしくなったかと思ったが、あの時は直感が大丈夫と言ったから信じてみたけど、やっぱり怖い……。大丈夫かな……。
【これからお世話になります……。】
【ふん、好きにしろ。俺はお前に期待してない。】
住み込みの召使い。……昔と同じ。上手くこなして、誰にも殴られずに、傷付けられない生活を送らないと……!連は挨拶を終えてから仕事に入った。
この家(豪邸)は、プリスム王国の皇帝勇であり、蓮を助けた張本人である。蓮以外にも召使いは数人いるが、皆家庭事情で人手不足だったらしい。いるのは勇と執事の想來しか今は居ない。本当に人手不足だ。僕を助けたのはそれが狙いだったようだ。……所詮、僕は役立たずだと思われていた方が気が楽だ。
「さて……まずは書斎からだな。」
書斎に入るとホコリが酷く、口に布を当てて掃除をした。
その後、台所・御手洗・各部屋を掃除し、初日を終えた。
「……お呼びでしょうか、主様。」
「あぁ、今日の成果を一応報告しようと思ってな。」
「なるほど……、お気に召されない場がありましたら手はつけません。何なりと申し下さい、罰は受けます……。」
「罰?ははっ、そんなことはしない。よっぽどなことがない限りな。その逆だよ。」
「……え?」
「とても綺麗で驚いた、清々しい気分になった。ありがとう。」
「……いえ。」
「今日はご苦労だった、明日からも続けるように。」
「御意。失礼します。」
褒められる……どういう事だ?蓮は今までに褒められたことは無い、むしろ出来て当たり前と言われてきたのだ。何か企みがあるのかもしれない……。そう心の中で感じた。