一話 出会い
「これからお世話になります……。」
「ふん、好きにしろ。俺はお前に期待してない。」
僕はこの人の執事になる。……これも自分のためなんだ、何がなんでも耐えないと。
ー数日前
「……痛い……、やめて……」
「はぁ?やめるわけねぇだろ!」
「お願いしま……す。」
僕は蓮。今は、とあるお店の裏でカツアゲらしきことを受けている。これも今日で6回目、慣れたというかなんというか……僕は昔からこうなんだ。
「おい。」
「あぁ?何だおめぇ?」
誰かが助けに来てくれたみたいだ、でもさほど期待はしていない。……見捨てられるくらいなら、1人で大人しくしていた方がよっぽどいい。だけど……助けてくれるだけでもお願いしたい。僕は心の中で望んでいた。
「俺か?ただの通りすがりだ。」
「……はぁ?喧嘩売ってんのか!?」
「喧嘩は売ってない。そこの奴がなんかしたのか?」
「……(下を向いて俯く)」
僕はビクッと身を震わせた。カツアゲらしきことをしてきた人が変なことを言ったら、もしかしたら警察沙汰になるかもしれないと直感が言っている。僕は再度、身を震わせた。
「あぁ、コイツが俺らの財布全部盗んだんだ。」
「ほぅ?(蓮を見る)」
「(こっち見たやん……終わった)」
「……そんなことする人には見えないがな?」
「あぁ?」
「え?」
素の声が出てしまった。そんなこと言うとは全く思わず……。僕は上を見上げ、その人の顔を見た。とても綺麗で美しい顔立ちをしている。何処かの王子様っぽい感じだ。
「俺らが嘘を言ってると?」
「あぁ。何か?」
「ふざけんなよ!」
殴りに行った、あの人はもう終わりだ……。と思った矢先、
「ぐはっ」
「……え、ど、どういうこと……?」
カツアゲ勢がみんなやられていた。そんなに強かったのか…この人と目の前の光景を見ながら心の中で感じていた。
「おい、お前。」
「!は、はい。」
「大丈夫か?」
「へ、平気です、助かりました……ありがとうございます。」
「……」
助けられたのはいいが、実のことを言うと迷惑をかけるのだ。その実のことは、働いていたお店からクビを言われたのだ。……まぁ、こんな事態になるのはクビにされた人が受ける罰だと感じていた。……慣れたから。
「お前、この店で働いてるのか?」
「……まぁ、ついさっきまでですが。」
「ふーん?……俺の召使いにならないか?」
「……は?」
急に召使い?!どういうことだ……。僕は今までにないほど動揺と混乱が脳を襲っていた。
「だから、召使い。ど?」
「……なんで僕なんかに……?」
「人手が足りないから。じゃ、承認ってことでよろしく。」
「はぁ……わかりました。助けられた借りですね。」
「まぁ、そういうことでいい。来い、俺の家に連れて行く。」
「……はい。」
こうして、僕は召使いという新たな仕事をクビの直後に貰ったのだ。仕事は数日後に始まる、それまでに色々と準備をした。服、道具、働き場所の内装等などを頭の中に入れた。こう見えて記憶力だけはとても良いのだ。そして今に至る……