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01 世界異動サービス

 俺たちは動物だ。


 見りゃわかるだろ。犬、猿、雉だ。


 俺たちはいま1つの遺体を引きずって帰ろうとしている最中だった。


「真っ先に死にくさってからに! このダボハゼがぁッ!」


 ボグゥ! 頭が弾け飛んだ遺体を、猿が蹴り飛ばす!


「やっぱレベル足りなかったじゃろがぁッ! 何考えとんじゃぁッ!!」


「やめろ。猿三郎」


「じゃけん! オメェもそう思うじゃろ! 犬次郎!」


「…思う。だが、塵太郎コイツは馬鹿だったんだ」


 俺たちはズタボロの状態だった。


 力量差も考えず、ろくなレベルアップもせずに鬼ヶ島に乗り込んでフルボッコされたからだ。


 そして、真っ先に塵太郎バカが死んだ。

 

 鬼による棍棒の一撃を受け、頭蓋骨陥没の即死だ。今もまだ脳味噌が道端にボロボロと溢れ散っている。


「もうやめましょうよ…。いまはこれからどうするかが重要よ」


「…そうだな。雉四郎の言う通りだ」


「……じゃけん、塵太郎復活させんじゃろ? 教会…じゃのうて、神社に連れてってお布施払うしかないわい」


「…お布施は金か?」


「…金よね。普通は」


「…おい。誰か金は持ってるのか?」


 猿三郎も雉四郎も首を横に振る。


 当たり前だ。我々は動物だ。金なんてない。


「風俗に注ぎ込むからじゃぁ! このダボハゼがぁッ!」


 ボグゥ! 再び猿三郎が塵太郎ゴミを蹴り飛ばす!


 そうだ。コイツが路銀を風俗に注ぎ混んだせいで、鬼ヶ島にイカダを作って乗り込むハメになったのだから仕方ない。


「…甦らさせないで捨ててかんか、コイツ」


「それができたら苦労はしない」


「ええ。そうよ、“キビダンゴの呪い”のせいでね」


 そうだ。この塵太郎の育ての親だかなんだか知らんクソババアが、黒魔術で呪いをかけたキビダンゴを食ったせいで、我々は鬼退治することになったのだ。


「…呪いに逆らうと、腹痛悶絶死が待っているけんな」


 猿三郎がゴクリと息を呑む。

 死ぬかどうかまでは試してはいないが(当たり前の話だ)、この塵太郎に逆らうと腹部に激痛が走る。

 この呪いを解くためには、鬼ヶ島の鬼を絶滅させるのが条件になっている。


「この顔だけのクソ男がッ!」


 ゲシッ! と、雉四郎の蹴りが遺体に決まる。


「何が“カワイイ娘だ”よ! あんなクソ団子食わせといて! それにアンタがつけた“雉四郎”って何よ! アタシは雉でも女のコよ!」


「…死体を蹴っても何にも解決しない。先を急ぐぞ」


 俺たちは肩を落として、再び歩き出す。


「……なあ、犬次郎。なんとかならんけんか?」


「…ならんな。コイツを復活させて鬼を倒して解放される。俺はいまそれしか考えていない」


「……そうけ」


 猿三郎は神妙な顔つきでひどく沈み込む。


 だが、コイツのこういう態度が演技なのは充分に知っている。

 

 コイツはクズだ。自分が生き残るためにはなんでもする。腹が減って食うものがなければ間違いなく雉四郎を焼いて食う。そんなヤツだ。

 

 塵太郎という史上最低のクズのせいで、対比的に持ち上げられているだけで、世間一般的な常識の範疇に照らし合わせて見れば一発アウトだ。


「…はぁ。でも、落ち込んでいたって始まらないわ。皆でガンバロ♡」


 雉四郎が、カワイイと本人が言ってはばからないポーズを取る。


 コイツはカスだ。なぜか鳥類の癖に自分がカワイイと思い込んでいるヤバイヤツだ。自分が目立てるなら、猿三郎を自分で崖に突き落として、悲劇のヒロインぶって涙だって流すだろう。


 塵太郎という史上最低のクズに持ち上げられたせいで、はた迷惑な勘違いをしているが、何かやるたびに周囲に害毒を撒き散らしていることに本人が気づいていない。無自覚な最悪だ。


「……ひとつだけ方法がある」


 なんでコイツらと共にいるかと言えば、呪いのせいだ。


 そうだ。呪いさえなくなれば問題ないのだ。


「ひとつだけ…?」「方法ですって?」

 

「ああ。旅の道中聞いたのだ。“世界異動サービス”なるものがあるらしい」


「世界異動?」「サービス?」


 本当にコイツらは馬鹿なのか? いちいち俺の言うことを復唱する必要はないだろうに。


「南蛮風の変わった店でな。…この世界とは違う場所に移れるらしい」


「南蛮風…」「らしい…ですって?」


 まったく意味が違ってきてるだろ。ふざけてんのか。


「…このキビダンゴの呪いはこの世界のもの。違う世界に逃げれば機能しないとは思わんか?」

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