第七話 犠牲
「なんでお前は陸にいるんだ。」
そこで、私は我に帰った。
「・・・私のことは・・忘れろ。」
そう言い残して、私は海に戻った。私の、元いる場所へ。
私、馬鹿だった・・。
’’リン!やっと帰ってきた!’’
海に潜ると、すぐにディティが迎えに来てくれた。
「・・ディティッ・・!!」
ディティに向かってまっすぐ泳ぎ、抱きしめる。
’’どうしたのっ・・体が、熱いよ・・’’
「私・・生気が・・」
’’リン・・!?まさか呪いがっ・・?’’
「・・かあ・・さま・・」
そう言って、私の意識は無くなっていった。
気づくと、私は見たことの無い洞窟にいた。
’’・・・そう。もう100年経つの。随分と早かったね。’’
ぞっとする、寒気を感じた。
「ディティ・・・?」
でも、目の前にいるのはディティだけだった。
’’リン、もうあれから100経ったよ・・。そろそろ、生気が無くなってきたんじゃない?’’
いつもそばにいるはずのディティのはずなのに、何故かとても怖い。
’’人間から、生気を奪うんだよ・・リン。人間の生気は、人魚の生気なんかよりもっと力が強い。それを手に入れれば、リンはこれからも愛しい人と生きられる。ひぐらしと会えるんだよ。’’
「―・・・!!!」
ひぐらし・・。あの日、魔女の襲来で生気を吸われて永遠の眠りについた私の想い人。
「ディティ、ひぐらしはもう・・もう、いないんだよ。」
’’何言ってるの・・。ひぐらしは眠ってるだけ。生気を分けてあげれば、生き返るよ。’’
「そんな・・ことって・・。」
’’できるんだよ・・。生気を分けてあげることぐらい。ひぐらしと、また会いたいでしょう?’’
「でも、どうやって・・・」
’’奪うのよ、生気を・・。人間とキスをすれば、生気は奪える。リンは、ひぐらしを助けたいのでしょう?’’
いつの間にか、ディティの姿が薄らだけど海の魔女になっていた。
でも、そのことにすら私は気づかず、ただぼぅっと宙を見ていた。
「待ってて・・ひぐらし。」
私が、今すぐ生き返らせてあげる。