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完璧

「何だって! 大陸の何処にいるかもわからない、彼女のお母さんを捜したいだって?」

「しっ! 静かにしろ。これは俺たち三人だけの秘密だ」

「なんで秘密なの?」


 三人は寝床を確保するため寝室らしき部屋の掃除に取り掛かっている。

 とりあえず部屋中に散乱しているものを一箇所にかき集め、せっせと床掃除をしていたら、ヒロがまた突拍子もないことを言い出した。


「理由はわからないけど、彼女は生まれつき、あの薄暗い塔に幽閉されていたんだ。アルギナはその御母上を人質に彼女から自由を奪った。もし捜索していることがアルギナの耳にでも入ったら、また身動き出来なくなってしまう。だからコッソリと、俺が彼女を迎えに行くまでにその足枷を何とか外してあげたい」


「…………宗教国家バミルゴの姫君にして、趣味は読書。博識で、お前より腕が立つほどの剣術を身につけ、顔に似合わず馬鹿力。唯一の弱点は大の芋嫌いなこと……か」

 カイは一旦、手を止め考えこむような表情で言った。


「いっ、芋嫌いって、その情報は何処から仕入れた?」


「あの従者に教えて貰ったんだよ。芋を御飯に出してプンプン怒っている所で蹲ったって。そうだよね、カイ? 加えて見たこともない銀髪に翠色の瞳、陶器のような白い肌をもつ超絶美少女でスタイル抜群。性格も良いし、まさに完璧だね。欠点が見つからないもの」


「ああ、それに引き換えお前は、この滅亡してしまった国の冴えない王太子で、今も寝床を確保する為に、自ら掃除に明け暮れている。お前ら本当に恋人同士か? 迎えに行く頃には、彼女ひくてあまたでさらに好条件の相手と婚姻関係を結ぶんじゃないのか?」


「ぐうぅぅ! 俺たちは本当に好きあっているんだ。やっかみはやめてくれ!」


「他に女の子の知り合いなんていないから、一方的にヒロが恋焦がれているだけなんじゃないの? それにあの従者だって案外侮れないよ」


 ヒロにとって、それは由々しき問題だった。

 鏡の中で「もう怒らないで、先生」と寝ぼけて腕に抱きついてくるくらいなのだから、気を許した相手なのは間違いない。

 しかも、六歳の頃から二十四時間絶えず傍にいて、たった二人きりで暮らしている。

 あちらは男女で、自分が血縁関係のない兄弟とのんびり過ごしているのとは訳が違う。

 今こうして掃除している間にも、二人は主従を超えた関係に発展していないか、こうなるともう気が気でない。


 そんな苛立ちを隠すためにヒロはさらに猛烈な勢いで床を掃き出した。

 挙句の果ては苦労して集めた塵を更に撒き散らしてしまう。


「あっ! お前、そっちは集めた塵だぞ! まったく……。

 でもきっとそんなおっちょこちょいなお前だから、何かと難しい立場な彼女もほっこりして気持ちを寄せてくれるんじゃないのか? そうじゃなければ俺たちを庇って二度と国外に出ないことをアルギナと約束するわけないだろ。今はまだ名案が浮かばないけど、落ち着いたら御母上様の捜索も始めようよ」


 しゅんと肩を落としていたヒロはカイの言葉を聞き、いつも笑顔にしてくれ、初めて会った時から好きだとシキが鏡の中で言ってくれたことを思い出し、ぽっと顔を赤くして、俄然元気を取り戻した。


「そ、そうか? じゃあ口付けをしながら気分が高揚しすぎて、彼女を崖から押し出してしまったのも許してくれるかな?」


 がらん、がらん……。

 テルウが思わず持っていた箒を落としてしまい、カイは言葉を失って棒立ちになっていた。


 いやそれはさすがに…………。


 そう思っていた時、アラミスが進み具合を見にやってきたのだった。


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