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救済を意味するのか、それとも

(どこまでが彼自身かもわからない状態で、頭脳明晰で圧倒的なカリスマ性の裏側に残虐な一面も隠し持っている)


 それもまた一環であるのかもしれない。

 だが、ユイナが言っていたように、敗北を肝に銘じるために皇帝がジェシーアンを傍に置き続けたという事実から察するところ。

 自らの積年の怨念を晴らすべく、二千人にも及ぶ刺客に対峙しながら、血と汗で積み上げた修練の結晶であるとも言えるだろう。


(………彼女はようやく見つけた、まばゆい光だ)

 あの言葉の意味は救済を意味するのか、それとも特別な感情なのか。


 《最後の一人》となるまで戦い続ける宿命を背負ったコドモタチ。

 コドモタチは力に導かれるように互いを引き寄せ合う。

 不遇の生を背負い続ける彼もまた、差し出されたシキの白い手を、知らず識らずのうちに掴もうとしていたのかもしれない。




「ところで、お前はコドモタチの本当の意味を知っているか?」


 ヒロは鍔迫り合いの中で、鋭くシュウに問いかけた。


「大陸に危機が訪れるときに現れ、生まれながらにして不思議な力を持つということか?」


 シュウは冷静に剣を払い、ヒロを強引に吹き飛ばす。



 吹き飛ばされたヒロは床を転がりながらも、剣を杖代わりにしてゆっくりと立ち上がり、息を整える。


「その通りだ。しかし、それだけではない。《最後の一人》となるまで、この闘いに終わりはないのだそうだ」


 ヒロの言葉を聞いた瞬間、シュウの表情にわずかな陰りが走った。



「……でも俺は、誰かの犠牲の上に成り立ってでも、天下泰平の世を創り上げることが、コドモタチの運命だとは思わない。何か別の方法がどこかに必ずあるはずだ」



 ――微弱なものとなったまばゆい光――


 シュウは、ヒロが投げかけた言葉を予想以上に重く受け止めていた。

 その言葉が単なる御呪いではなく、痛烈な記憶と重なったからである。


 野原で繋がったあの瞬間、腕の中で儚く、まるで雪のように消えていった彼女。

 その姿が、現実の中でも、今や微弱な光となって消えかけているのではないかという思いが、シュウの中で過ったのだ。


 シュウは暫く黙ったまま、目を伏せていたが、やがて低く呟いた。


「なら、ちょうどいいではないか? 此処で一気にお前を倒せば、一人減るわけだ」


 言葉と同時に、シュウの手から放たれたのは、真っ赤で巨大な炎だった。

 その炎は、まるでヒロに対する怒りが凝縮されたかのように猛々しく燃え上がり、ヒロに向かって一直線に襲いかかる。


 空気が熱波で歪む。

 シュウが放った巨大な炎は凄まじい勢いで王座の間の一番奥にある大きな窓に激突し、周囲の壁や装飾までも巻き込みながら爆音とともに粉々に破壊した。

 そしてすぐにガラスの破片が辺りに散り、外の冷たい風が、崩れた壁を通して一気に吹き込んできたのだ。






 リヴァに支えられながら、シキは何とか城の中心部へと進んでいた。

 疲労が色濃く見えるシキの足取りは重かったが、リヴァの支えがかろうじて前進を可能にしていた。


 途中、白の兵士たちが何度も襲いかかってきたが、リヴァはその都度、敏捷な動きで彼らの攻撃を巧みに躱してきた。彼はシキを守るため、できる限り無用な戦闘は避けたいと考えている。

 しかし、運悪く、前方から足音が徐々に近づいてきた。


 仕方なくリヴァは、柱の影にシキとともに隠れながら剣を構えた。

 息を潜め、吊り上がった鋭い目で周囲を見渡しながら、次の瞬間に備えて緊張を張り詰める。


 すると、見たことのない色の甲冑が目に飛び込んできた。

 青銅色の鎧の上に纏った青いマントは鮮やかに揺れ、端正な顔立ちの青年が現れる。リヴァは、その姿を一目見るや、思わず大声をあげてしまった。

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