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デルタトロスの子どもたち ~曖昧な色に染まった世で奏でる祈りの唄~  作者: 華田さち
荒地の子どもたち編

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白薔薇の騎士

「師匠の命令は絶対だろ? デルフィンは誰もが恐れるサディストだ。それに君が出て行くとややこしいことになる。ここは弟弟子を信じて任せようではないか」


 ロウェナはこの時ほど、ペンダリオンのことをうつけ者だと思ったことはなかった。

 本当は騎士団が束になりかかってきても、軽々と打ち負かす凄い腕前をもっている。

 それにもかかわらず出場を辞退し、まだ弟子になって二年足らずのリヴァが代わりに出場することを何とも思わない。

 自己鍛錬もまともに行えなかったなんてまったくの嘘。一人きりになった時には鍛錬を怠らないことをロウェナは知っている。


 “そんなに彼を潰したいの? あなたの方がよっぽど恐ろしいサディストだわ!!”



「……ロウェナ。私は大丈夫だよ。勝者には白い薔薇の花が一輪贈られるそうだ。私は勝利してそれを君に贈るよ」

 彼女を気遣い、リヴァはそう言ってロウェナの額にキスをした。


 予期しなかった出来事に真っ赤になり照れているロウェナの様子を、はらわたが煮えくりかえる思いでペンダリオンは見ている。


 動揺を隠すようにロウェナはリヴァの防具の十分な安全性を再確認し、顔を覆う可動式のバイザーがついた兜を持たせてから送り出した。


 そしてもう一人。


 接客係の仕事を抜け出して様子を見に来たメンデューサは、そんなペンダリオンの普段とは異なる一面を物陰に隠れて偶然にも見てしまったのだ。



 やがて入場していた一人の青年を見て会場からどよめきがあがっている。

 若いだけでなく、およそ騎士とは思えない端正な容姿であるため女性陣からは白薔薇の騎士のようだと溜息が漏れた。


 そして実力も折り紙つきである。

 お手本のような正確さで降り下ろされた剣は確実に小太りな男の脇腹を捕え、その後も左右から攻撃の嵐は留まることを知らない。


 攻撃とは最大の防御なり。


 年齢も実力も敵わない騎士を相手にして簡単にあしらわれると誰もが思っていたが、これを逆手に取り、若さとスタミナを利用して、圧倒的な差を見せつけ決着をつけたのである。


 ダリルモアはリヴァの無事を確認し、安堵の表情を見せる。

 そしてようやく目の前のグラスに手を伸ばした時、デルフィンは何を思ったのか拍手をして急に立ち上がった。


「いやあ、実に清々しい勝ちっぷり! さすが、大陸一と呼ばれた剣士の弟子である。さてあの若者、まだ息が上がっていない。この場に居る者は遥々、西側から足を運んだものもいるとか。これは滅多にない機会だ。そこで、私はこの御前試合の続行を要請する」


 その言葉に観客は大いに盛り上がりを見せる。

 だがダリルモアは「なっ、なにを!?」と言って手に持ったグラスを落としてしまった。


 するとあらかじめ打ち合わせをしていたかのように、次は背の高い男が入り口から颯爽と入ってきた。


 至極満足そうにしてダリルモアの様子を眺めているデルフィンを見た時、ようやく事の次第がのみこめてきた。


 この御前試合はキルアの騎士団と、大陸一の剣士の弟子が闘うことが目的ではない。

 可愛い愛弟子が痛めつけられ、苦悩するダリルモアの姿を退屈凌ぎに眺めることにあるのだということを。


 怒りに震えながら、ここからどうやって彼らを救おうか考えているうちに、もう既にリヴァは数人の男たちを倒していた。


 そして健闘する青年騎士を前にして、皮肉にも試合会場の観客の熱気は最高潮に達している。

 勝者に贈られる白い薔薇は小さな花束になっているはずである。


 このような時、ダリルモアが下手に動けば、デルフィンの格好の餌食となってしまうことは目に見えている。


 しかし次の出場者が入場してきた時に、ついに一番恐れていたことが起きてしまったのだ。

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