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翌朝、いつも通りに登校する。
昨日の泥で汚れてしまった靴はちょっとズルをして綺麗にした。
馬鹿三人組は、天恵を使わずに徹底的に返り討ちにした。
天恵を使わずに負けるというのは、今までの人生で感じたことがないほどの恐怖だっただろう。
依頼主が余程の馬鹿でない限り、もう手は出してこないはずだ。
格の違いを見せたからな。
馬鹿じゃないことを祈る限りだ。
しかし俺は今日その祈りが外れることを思い知ることになる。
教室へ入るといつも通りの光景だった。
クラス全員の俺を見た反応を見る。
一人の生徒があからさまに驚いている。
顔を憎しみで歪ませ教室を慌てて出て行った。
あいつが依頼主だろうな。
予想通りだったな。
大方俺が今日学校に来るとは思っていなかったんだろう。
あの三人組は手慣れた様子だったし、仕事に関しては信頼されているんだろう。
逆恨みもいいところなんだがな。
「クソッ!なんであいつが学校に来てんだよ!お前らは何しくじってんだ!」
一人の一年生の男子生徒が、三年生の三人組の生徒に暴力と罵声を浴びせている。
下級生が、上級生を蹴っているのは、どう見ても異様だった。
その三人組は昨日、氷我を襲った、三人だった。
「す、すんません!あいつが、がはっ!あんなに、うっ、強いなんて思ってませんでした!」
「言い訳はいいんだよ!」
男の言葉がさらに怒らせたのか、横腹に全力の蹴りを入れた。
「がはっ!オェェェ」
蹴られ続けた男は、とうとうその場で嘔吐する。
「どうやって落とし前つけてくれんだよ!あぁ!?」
さらに暴力はレベルを上げていく。
「報酬は要りません!それでどうか!」
「それは当たり前だろうが!次またしくじってみろ。殺すからな?」
「そ、その話なんですが、俺たちはもうこの件から手を引きたいと思っています」
「は?」
「あの男は異常です。異能を使わずに異能力者に勝つなんて普通ならあり得ません。それに三人になんて常識を軽く外れています。どうかお願いします。手を引かせてください!」
「天恵を、使わずに?冗談はいいんだよ!」
そんなものはありえないと一蹴する。
「冗談じゃないんです!どうか、どうか…」
それでも、恐怖に体を震えさせながら訴える男を見て、本当なのだと理解する。
「でもそれがなんだ?俺より怖いって言いたいのか?もう一回俺とやるか?」
試すように聞く。
「ヒッ、しっ失礼ながらあの男の方が強いと思われます!」
その瞬間男が吹き飛ぶ。
男は壁に激突し、人形の跡を作る。
「チッ、気にくわねぇが本当みたいだな、まぁいい俺も出る。バレる危険性を考えて出なかったが、仕方ないだろう。お前ら今日の放課後仕留めに行くぞ」
「いや、俺らはこの件から」
別の男が抗議する。
「いいな?」
「「はっはい!」」
圧力に負け、男達は二つ返事をする。
返事を聞いてその場は解散と思われたが、
「待ちなさい、お馬鹿さん達」
「あ?誰だテメェ」
凛々しいがどこか嘲りを含んだ声に男が反応する。
燃えるような赤い髪の少女がそこにはいた。
その腕には赤と黒のカラーリング。
「あ、アンタは」
男の一人が、指を指し喋ろうとしたが、抉れる音によって遮られる。
それは、指を指した男の、すぐ隣のコンクリートの地面に無数の穴が開く音だった。
「ヒッヒィ!」
「私に指を指さないでくれる?次は貴方がそうなるわよ」
「テメェいま何した!」
「うるさいわ、私が誰か、何をしたかなんて今はどうでもいいわ。問題は貴方の低脳さよ。この男達の話を聞いて答えがそれなんて、呆れるわ」
「調子にッ!」
男が一歩踏み出したがそこで止まる。
「賢明な判断ね。それ以上動いていたら足に穴が開いていたわ」
男の爪先ギリギリに穴が開いている。
「さて、話を続けるわよ。今のままだと、貴方達は返り討ちに遭うだけよ?戦力差がまるで分かってないわ。猿でもわかるレベルなのに。そこで、勝つための方法を教えて欲しいかを聞きにきたのよ?」
「ど、どうするんだよ…」
彼我の力の差を知った男は少し怯えながら返事をする。
「殊勝な態度だけど、敬語を使えると満点だったわね、まぁいいわ教えてあげる。戦力差を埋める方法はいくつかあるけどこの場合は、数と戦場、この二つが必要ね。まずは、数。放課後までに三十集めなさい。これは大前提ね」
「さ、三十!?」
「一、二、三年生全体で見ればそう難しくはないわ。汚いあぶれ者は沢山いるもの。次に戦場よ。放課後にあの男を娯楽施設に行かせなさい。貴方が行ってもいいし、誰でもいいわ。自分から行ってくれたら好都合だけど。出来るだけ遅くなってから、人のないところに連れ出すのよ。そこで不意を突き確実に仕留めなさい。全員でよ。まぁこんなところね、このまま挑むよりは遥かに可能性があるわ」
「なんであんたは、こんなことを?」
「決まってるじゃない、あの男が狂いそうなほど憎いからよ」
少女の目は、憎しみに燃えていた。
「じゃ行くわ」
その場で身を翻し去る。
「会長、目を覚まさせてあげます。貴方の思っているほどあの男は強くないことを。この私の手で。うふふふふ」
少女の名前は、神楽坂 緋色。
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