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そうして織姫の試合が始まる。
相手は陽キャグループの一人。
茶髪に軽いパーマをかけたチャラい感じの男。
能力は物質創造系の中でも割と強い部類に入る眷属召喚だったはず。
といってもこいつの眷属は大型の犬を三匹小型の犬を三匹といった戦闘面ではさほど強くないものだ。
強くはないが織姫にとっては相性が悪いように思える。
どこまで実力を隠しているかは分からないが、同時に七つの対象に催眠を掛けられるのか。
掛けられるとして間に合うのか。
そこが分かれ目になりそうだ。
「じゃあ羽衣石さん対田中くんの試合始めるよ!
二人とも準備できたねー」
「ん…」
「余裕だぜぃ!」
「おっけー!三、二、一、始め!」
どうやら田中というらしい男が腕を振り上げ叫ぶ。
「いくぜぇーー!召か「おやすみ…」
一言織姫が呟くと田中が倒れる。
そうか…
これはなかなかだな。
「御堂さん…終わった…」
「え?あっ」
あまりにもあっけなく終わったことに上の空だった愛光は織姫の言葉で我に帰る。
「羽衣石さんの勝ち!」
トコトコと音がしそうな足取りで織姫は舞台から降りる。
「それは寝てるだけ…」
よく見ると田中は軽く体を上下させ鼻から風船を出している。
一瞬で眠らせる能力。
一応空間干渉系に入る精神攻撃はある程度の精神力でレジストできる。
だが恐らく織姫の催眠は俺でも意識しないと持っていかれる可能性がある。
どれだけの才能とセンスがあればあそこまで高速で催眠をかけることが可能なんだ。
それがあってのあの性格なのかもしれないが。
「みてた…?」
「あぁ、みてたぞ。圧勝だったじゃないか。おめでとう」
また後ろから薄い気配で忍び寄ってきた織姫に称賛の言葉を言う。
「別に…あんな雑魚余裕…」
一切表情を変えずに恒例の罵倒を口にする。
「相性が悪いんじゃないかと思ったが関係なかったな」
「相性…?」
「あぁ田中の能力とお前の能力は相性が悪いと思ったんだが。違ったか?」
「たかなの能力なんて知らない…」
「お腹空いてるのか?田中だぞ。犬を六匹召喚する能力だ。数があるから苦手だと思ったんだが」
「別に犬っころ六匹と人面犬一匹なんて相手にならない…催眠が使えなくても…」
「人面犬ってまさか田中のことか?」
「そう…」
余りにも非情に告げる。
「そ、そうか。だが召喚されたら不味かったんじゃないか?」
「未熟…私の能力は催眠だけじゃない…」
催眠だけじゃない。
となると、可能性はひとつだけ。
「まさか」
「そう…私は多重異能力者…」
何度か戦場で目にしたことがある。
発現する能力は基本一つだがごく稀に幾つかの能力を発現する人間がいる。
それを世界では多重能力者という。
だが目にしたことがあるといっても両手で数えられる程だ。
「そうだったのか。ならその余裕も納得だ」
「ふふ…」
「今笑ったのか?」
よく見ると口角が数ミリ上がっている。
「全然驚かない…やっぱり君は力を隠している…確信した…」
しまった。
一般の学生が多重能力者なんてみたことがあるはずがない。
初めて出会ったら驚くに決まっている。
「そんなことはない。これでも驚いているぞ」
「そう…」
信じてもらえた様子はない。
「いつか見るのを楽しみにしてる…」
そういって織姫はどこかへ歩いて行った。
その後のトーナメントは織姫が全ての試合を瞬殺で決勝までコマを進めた。
途中で後藤との勝負を勝ちで収めた相原ともぶつかったが圧勝だった。
相原が走り出した次の瞬間に相原は転がって止まった時には寝ていた。
もう片方の決勝枠に駒を進めたのは黒髪の男だった。
笑顔で観客席に手を振っている。
穏やかな目をしているが、瞳の奥では笑っていない。
名前は終夜 黒刀。
この男は俺が唯一このクラスで警戒している。
この男の力は底が知れない。
異能は模擬戦を見ている限り黒刀を出す能力。
その黒刀にも様々な能力があるみたいだが。
名前に黒刀とあるが発現してから名前を変えたのかも知れないな。
立ち振る舞いはとても軽く陽キャグループに属している。
すごく演技じみているが
だがそんなことはどうでもいい。
問題は最初の模擬戦と決勝に上がってくるまでの試合だ。
全ての試合がギリギリの勝負だった。
素人目から見たら。
俺ですら最初は気付かなかった。
今日試合を見ているうちに気づいた。
この男は試合中にその刀で自分の名前を描いて遊んでいる。
黒刀と漢字で。
ふざけているみたいだが本当の事だ。
試合を見ていると何か違和感を感じて太刀筋を追った。
太刀筋を全て同じ位置に集めて重ねてみると毎回黒刀になる。
全試合その画数である十三回しか刀を振っていない。
次の一画で受けられるときは剣で受けそれ以外の攻撃は全て避ける。
もしくは、ギリギリを装うよう体をかすめている。
必ず致命傷にはならないような場所だが。
そして剣を振ったその時はどんな体勢でも、相手の攻撃が迫っている状態であっても次の画の通り致命傷にはならない程度に必ず体を掠めている。
そして刀の最後の一画である払いで勝利を収める。
毎回左肩から右腰までの袈裟斬りで。
こんなことができるのは俺が見てきた中でも数少ない。
並外れた刀の腕と、身のこなしが必要。
恐らく刀だけなら俺と同等もしくはそれ以上の腕だ。
黒刀は俺に勝てるかも知れない。
そう思わせるほどに強い。
これは異常だ。
ただの高校生が持っている力じゃない。
それこそ俺や桐崎のように特殊な環境で育ってきていないと。
織姫も相当な実力者だ。
催眠だけでも十分すぎるほどの力だが、多重能力者としてのもう一つの力もある。
だが、俺には黒刀が負けるビジョンが見えない。
恐らく織姫は負ける。
「じゃあ!決勝戦始めるよー!
いつも眠たそうな顔をしている羽衣石さん!ここまでの試合全てを始まった瞬間相手を眠らせ終えています!対するのは終夜くん!これまでの試合全てギリギリだったが、今回もギリギリで勝ちを収めるのか!睡眠をレジスト出来るかどうかが鍵となってきます!」
随分と愛光は楽しそうだな。
参加してないのに一番楽しんでるんじゃないか。
羽衣石は相変わらず表情を一切変えずに目を擦っている。
終夜は穏やかな笑顔でニコニコ笑っている。
その姿は女子からしたらカッコよく見えるのか修哉が手を振ると黄色い歓声が飛んでいる。
俺からしたら不気味でしかないが。
「いくよー!三、二、一、スタート!」
自分九州の方なんですが台風怖かったっす。
学校は休みになりましたけど窓がガッタンガッタンなってました。
自分の地域は然程被害はなかったんですが。
なので執筆しました。((((勉強しろや
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