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 私は、幼い頃から引っ込み思案で、いつも人の顔を窺ってばかりだった。

 自分で主張することはなく、そこにいるけどいなくても変わらない無害な人間だった。

 小学生の時は友達なんているはずもなく、いつも一人だった。

 でも寂しくなんてなかった。

 私には家族がいたから。

 そこそこ大きな企業の社長さんで、仕事中はとってもかっこいいのに、家ではおっちょこちょいでいつも酔っ払って母に甘えたり、だらしない顔でいびきをかきながら寝たりしていた間抜けな姿を晒していたけどかっこいい父親。

 凄く天然でいつもいつも必ずズレたことを言うけど、とても優しく私が知っている人の中で誰よりも慈愛にあふれた綺麗な母親。

 まだまだ小さくて、幼く、いつも大きな声ではしゃいでは転んだり、どこか打ったりして大きな声で泣く可愛い弟。

 そして私を含めた四人家族は今時珍しい円満な家族だった。

 笑顔で溢れていて毎日がとても楽しかった。

 この家族さえいれば友達がいないとか、虐められているとかそんなことはどうでも良かった。

 ずっと続くんだろうと思っていた。

 でも、そんな子供じみた甘い考えなんて続くはずもなかった。

 なんでもない休日。

 私は塾に行っていた。

 その日は私の誕生日で、塾が終わった瞬間に教室を飛び出して、自転車を全力で漕いで帰った。

 玄関を開け、大きな声でただいまを言うと、返事はなかった。

 サプライズをしようとしているんだろうと思った。

 いつもならおかえり、と必ず誰かが言ってくれる。

 にやける口元を直しながら、リビングへの扉を開けた。

 まず目に入ったのは机の上のホールケーキ。

 ○○12歳の誕生日おめでとう!

 と書かれている板のチョコと苺がたくさん載っていた。

 次に目に入ったのは、足元にいた弟。

 弟はこちらを見ていた。

 片方の眼球に穴を開けて。

 話しかけても返事はなく、揺すってもなに一つ変わらなかった。

 全然信じられず、覚束ない足取りで歩いた。

 そして、父がいた。

 父は、胸に穴を開けていた。

 数十個も。

 上から下までたくさん。

 まだ希望にすがろうと、母を探した。

 どうせあの天然な母は、寝ているんだと。

 そう信じた。

 一階にはおらず、二階を探した。

 両親の寝室から母の声が聞こえた。

 知らない男の荒い息遣いと共に母の嬌声が。

 寝室にゆっくり歩いて行き、中を覗いた。

 その行為の意味は当時はわからなかった。

 ただそこには、泣き叫びながらも、聞いたことのない声を出す母、その上に裸の男が覆いかぶさっている姿があるだけだった。

 

「おかあ、さん?何してるの?」


 途端、男の動きが止まりこちらを見た。

 私を見た男はニヤリと笑った。

 立ち上がりゆっくりと向かってくる男は恐怖の塊だった。

 なんとか逃げようと思っても、足は動かず、母に助けをと思っても声は出ない。

 すぐに捕まり、服をビリビリに破かれた。

 そして私の体を弄り始めた。

 今までに感じたことがない体験は気持ち悪いものでしかなかった。

 そして男は汚い自分のものを押し付けようとしてきた。

 その瞬間、私は自分の右の掌に痣があることに気づいた。

 不思議と空気を弾にし男の眉間を貫くまでに、難しいことはなかった。

 男は後ろに倒れた。

 その姿を見て私は、意味もなく、何発も何発も空気の弾を撃った。

 男の顔から足の爪先まで、穴だらけにした。

 気付いたら男はただの肉の切れ端になっており、私は返り血と天恵の使用限界による自分の血で真っ赤に染まっていた。

 この日私は覚えてしまった。

 奪う優越感を。

 後ろを向くとベッドの上に母が死んだように仰向けになっていた。

 死んでいないのは、呼吸の音でわかる。

 私は驚くほど冷静な頭で、警察を呼んだ。

 すぐに来た警察は、私と母を保護した。

 母は、喋れる精神状態ではなく、病院に入院した。

 男の動機は、ただの逆恨みだった。

 父の会社に入ったが問題ばかり起こして、首になった。

 職をなくした男は、父を恨み殺したそれだけだった。

 しばらくして、母は退院した。

 私はその間ずっと祖母の家にいた。

 精神の安定を見るために学校には行かなくていいとのことだったが、今思えば殺人をした私を目の届くところに置いておくためだったのだろう。

 母に会うのは久しぶりで、少し嬉しかった。

 少しだけ前の生活に戻っていく、そう思った。

 母は、笑顔で私を迎えた。

 お腹は大きくなっていた。


「お父さんの子供なの、うふふ、残してくれたのね」

 

 そう言う母は心からそう思っているみたいだった。

 目は完全にここではないどこかを見ていた。

 そして、病院から電話がかかってきた。

 それは、母のお腹の子が父親のものではないこと。

 それを言うと、母は暴れだすこと。

 家でゆっくり治療をする方針になったこと。

 私は少しでも母を元気付けるために明るくなった。

 あらゆる手を尽くした。

 テストでいい点をとったり、一緒にご飯を作ったりした。

 少しだけど、母の元気は戻った気がした。

 そして私は天恵を見せた。

 ビー玉を十個ほど操ってみせた。

 色とりどりのビー玉は綺麗な軌跡を描いて飛んだ。

 密かに練習しており見せた時に喜ぶのが楽しみで仕方なかった。

 しかし母の反応は違った。

 見たことのない鬼ような顔で私を突き飛ばし、罵った。

 あの男と同じだと。

 お前みたいな娘は知らないと。

 そうして母は台所へ向かい、自分の大きな腹を包丁で刺した。

 大きな腹はたちまち穴だらけになった。

 私はそれを茫然と見るだけだった。

 涙なんてでず、ただ死にゆく様を見ていた。

 母が動かなくなると、警察を呼んだ。

 私はまた冷静だった。

 女性の警察官が優しく話しかけてくれた。

 だが、傷ついている心などなく、鬱陶しいものだった。

 それからまた、祖母の家に送られた。

 そうして一人の時間が増え、沢山のことを考えた。

 結論から言うと、私は壊れていた。

 大好きな弟、父、母が死んだのにもかかわらず、泣くことなんてなく、いつだって冷静だった。

 大切なものが消えたというのに、私は怒りや、悲しみすら覚えなかった。

 母に罵詈雑言を浴びせられたのに、あーあ、程度だった。

 私は壊れていた。

 家族に対して愛情なんてなかったのだ。

 それからの人生は、私は全てを奪う側に回った。

 奪われてばかりの私は奪うことにした。

 私を虐めていた奴らには、力を見せつけ一番上に立った。

 しばらくして、中学を卒業した。

 異能高校に入った。

 そこでは私は特別強くはなかった。

 また奪われる側になった。

 そんなのは許せなかった。

 何回も死んで、何回も殺した。

 気づけば生徒会に入る程に強くなっていた。

 生徒会の試験は、会長と模擬戦をして、実力を見るそれだけだった。

 そこで私は初めて手の届かない強さに触れた。

 どれだけ研鑽しても、必ず届かない。

 そんな強さを目にした。

 私は全てを真っ向から受け止められ、ねじ伏せられた。

 結果として惨敗だったが、私は生徒会に入ることを許された。

 この人になら奪われても構わなかった。

 いつでも汚れることなく、何人たりとも寄せ付けないそんな会長に憧れた。

 だというのに、進級した頃それは始まった。

 会長は、私の知らないうちに汚れていた。

 圧倒的ではなくなっていた。

 そんなことがあるはずがない。

 私は汚れの原因を取り除こうとした。

 結果がこれだ。

 今私は下を見ていて、あの男は私を見下している。

 また私は全てを奪われた。

 でも、あの時と同じで痛みなんか覚えない。

 どうせまた、あーあで終わる。
















 はずだった。

 今はこんなにも苦しい。

 昔は痛みなんか覚えなかったのに。

 いや、あの時もこうやって覚えていたんだ。

 弟や父、母が死んだのを見て、痛みを感じた。

 耐えられる痛みじゃなかった。

 だから、大切なものから外した。

 そう思い込んだ。

 奪われる痛みを味わいたくないから奪う側に回った。

 奪うことが楽しかったんじゃない。

 奪われることが怖かったんだ。

 会長が大切に思えたのは唯一の圧倒的な存在だったから。

 奪われるはずがなかったから。

 でも、今奪われた。

 そして思い出した。

 あの時の痛みを。

 私はちゃんと家族を愛せていた。

 いなくなったら悲しめていた。

 私は壊れてなんかいなかった。

 家族の一員としてあれた。

 ずっと穴の開いていた心が埋まった気がした。

 奪うための強さだったけど、

 本当は守るための強さだったんだ。

 みんなに怒られちゃうな。

 これからは償いの意味も含めて、誰かを守ろう。

 まだ私は強くなる。

 もう私みたいな人間を産まないためにも。


 


 この男は会長に似ている。

 圧倒的な強さが。

 これから私はどうなるかわからない。

 でも少しだけ、この男が会長に届く姿を見たいと思った。





 『『『ひぃ(ねぇ)頑張って』』』


 そんな声が聞こえた気がした。

最後の部分わかりにくくなっちゃいましたね。

すんません!

もっと精進します!

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皆さんの1秒をどうかーー!

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