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「生徒、会」
突然攻撃してきた女は確かにそう言った。
ツインテールの赤い髪に、まつ毛の長い二重の真紅の目。
礼儀正しいがどこか見下すような、口調。
その振る舞いはさながら、どこかの姫を連想させる。
「そうよ。貴方のような下等な雑魚には手の届かない存在だけれどね」
「別に生徒会に興味はないぞ。あのクソ女がトップの集まりなんてこっちからごめんだ」
「貴方如きが会長と関わるだけで罪なのに、ましてやクソ女だなんて、はは、死になさいよ!」
突然の轟音。
「危ないぞ。何故俺たちを襲う」
先程同様、軽く十を超える小さな物が高速で俺たちに向かって飛んできた。
当然氷で防いだが俺の氷に傷をつける辺り威力は相当のものだ。
防がなければ死んでいただろう。
「貴方に教える必要はないわ!」
「別になんでもいいんだが、辞めておけ。お前では俺に勝てないぞ」
「…ッ!貴方も!会長も!私を!舐めているわ!いいわ!すぐにその間違いを正してやるわ!会長の間違いも一緒に!」
「少し話が読めてきた。お前、嫉妬しているんだな?」
「はぁ?」
「分からないのか?お前の大好きなクソ会長さんが俺のことを気にかけているからだろう?」
「黙りなさい?それ以上会長を侮辱してみなさい。穴だらけにするわよ」
「元から殺すつもりじゃないのか?」
神楽坂は怒りに歯を噛み締める。
しかしすぐにそれをやめ、
「そのつもりだったけど、やめたわ。決闘方式にしましょう。条件は簡単よ。私はポイント50万を賭けるわ。貴方はまだポイントをそんなに持っていないでしょう?だから貴方のその身を賭けなさい。私に負けたら私の奴隷になるのよ。そうして這いつくばる貴方を会長に見せて、失望させる。そして私は会長に見直してもらう。素晴らしい筋書きね」
恍惚とした表情をしながら言う。
「それはそれは流石だ。素晴らしい提案だな。だがそれに応えることはできないな。俺はもう今月五十万ポイントを得ているからな」
「は?嘘おっしゃい。まだ貴方学校始まって何日目よ。流石にありえないわ。」
「ここで嘘をついてどうする。じゃあ見るか?」
そうしてスマホの今月の獲得ポイントを見せる。
そこには500000/500000と書かれていた。
毎日舐めてかかってくる上級生を狙ってかき集めていたからな。
すぐに溜まった。
「へぇ。でもまぁ貴方が勝つ確率なんて一ミリも存在していないからね。いいわ、私もこの身を賭けましょう。さぁ、決闘を承諾しなさい」
「嫌だと言っても、逃すつもりはないんだろう?」
「当然よ」
スマホに目の前にいる神楽坂からの決闘の申し込みが入る。
内容には今こいつが言った通りのものが記されてあった。
しかし、
「いいのか?決闘場を使うとはいえ、死ぬまでなんて、一生のトラウマになるぞ?」
勝敗は死ぬまでもしくは降参するまで。
「せいぜいほざいていなさい。それに、そんなものは慣れているわ」
「慣れている?」
「貴方とは一年間の差があるのよ。決闘で殺されることなんて何回もあったわ」
「へぇ、お前に勝つ相手なんていたんだな」
「でも、今はもう全員殺し返したけどね。で?早く受けなさいよ」
「いいだろう。だがその代わり、俺が勝った場合はお前からのこの決闘の口外は無しだ。生徒会役員を負かした、なんて目立ちすぎるからな」
「さっきから、勝った時のことばかり!一生のトラウマになるぐらいに凄惨に殺してあげるわ。決闘場、展開」
瞬間俺たち三人を光が包み、止んだ時にはそこはコロシアムに変わっていた。
愛光は、広すぎる観客席にポツンと一人座っている。
「氷我君、君が強いのは知ってるけど、無理はしないでね!私には何も出来ないけど、信じて待ってるから!」
愛光が大きな声で、声をかけてくる。
「あぁ、すぐに終わらせるよ」
「挨拶は済んだかしら、じゃあ、始めるわよ!」
挨拶代わりと言わんばかりに、先程の小さい何かが飛んでくる。
視認はできないが、気配を感じれば避けることはできる。
横に飛んで回避する。
しかし、着地した瞬間には次が迫っている。
「チッ!」
氷の剣を作ろうとしていたが、間に合わない。
俺の氷は適当に作る分には一秒とかからず作れるが、剣や槍などを一から作る分にはイメージがいるため一秒はかかる。
だが、今はその一秒が惜しい。
目の前に氷の障壁を作る。
全てを弾く。
「さっきから思っていたけど、それ鬱陶しいわね!」
また飛んでくるが、氷の壁があるため再度氷は作らなかった。
が、それは判断を間違えていた。
氷に当たった何かは、そのまま氷をえぐる。
勢いは止まらない。
氷を貫通する。
驚いたが、冷静にその場で背後に体を反ることで、眉間を狙うその一撃を回避する。
その際に貫通した物体を見たがそこには何もなかった。
やはりこいつの能力は、
「空気を弾丸にして飛ばす能力か?」
「へぇ、気づいたのね。そうよ、私の能力は空気を弾丸にして飛ばす能力。不可視の弾。でも気づいたから何?」
「そうだな、気づいたから特に何かあるわけじゃないな。今度はこちらからも行くぞ」
両手を後ろに回す。
その二つの手から、焔が噴き出す。
当然空気の弾は飛んでくるが、身を捻ったり横に飛んだりして回避する。
距離は後五メートルほど。
しかし途中で倒れる。
別に躓いたわけではない。
バランスを崩したわけでもない。
ただ、踏み出した右足がなかっただけだ。
「足落としちゃってるわよ?」
後方に俺の脚が落ちている。
場所を見るに、
「横から飛ばしたのか。不覚をとったな。考えてみれば前からだけの攻撃な訳がない。前方を守れる相手と戦う時負けがほぼほぼ確定するからな」
「今更気づいたのね。無様だわ。這いつくばって、私の勝ちかしら」
「そんなわけがないだろう」
氷で義足と刀を作る。
俺が一番得意な獲物は刀だ。
「さぁもう不覚は取らない。第二ラウンドだ。」
「諦めの悪い男だわ!」
全方位に気を巡らせ全ての空気の弾を刀で弾きながら、接近する。
流石に全てを防ぐことはできず、致命傷以外の弾が俺を掠る。
「ちぃ!」
明らかに苛立っている、神楽坂は俺から逃げ回りつつ、あらゆる方向から俺に向けて空気の弾を打っている。
しかしだんだんと距離は近づいている。
十メートル五、四、三、二、一
そうして、神楽坂へと向けて俺は刀を振り下ろす。
だが、そんな絶体絶命の状況で神楽坂は不敵に笑った。
「追い詰めていると思ったの?全て作戦よ!」
そう言った瞬間、神楽坂の右掌の痣が輝き、攻防でえぐれた決闘場の床の瓦礫が、大小関わらず高速で俺に向かって飛んできた。
完全に不意をついた一撃。
俺はすでに振り下ろしている体勢のため、刀で防ぐことができない。
「私の勝ちね!」
勝ちを確信して、神楽坂は叫ぶ。
「バレていたのか、そうだな、全て俺の作戦だ」
「は?」
俺はあらかじめイメージを練っていた、氷の壁を周囲に作る。
強固に作っているため、一つも貫通することはない。
その壁は全ての瓦礫を防ぐ。
俺は最高速度で刀を振り下ろす。
油断していた神楽坂はぎりぎりで体を横に捻ることで、右腕を無くすだけに抑えた。
「流石生徒会役員だな。今のを避けられるとは思っていなかった」
だが、俺は返す刀をそのまま、神楽坂の首へ当てる。
恐怖というよりも、怒りに体が震えている。
「何でよ!なんでこの不意の一撃が分かったのよ!」
「言っただろう。全て俺の作戦だったんだよ始まってから今までの全てが」
「そ、そんなわけないわ!貴方の右足は確かに私の作戦で奪ったし、最初の氷を貫通だって「そうだ、それすらも俺の作戦なんだよ。」
神楽坂の言葉を遮り言う。
一度呆気にとられたが神楽坂は続ける。
「せ、説明しなさいよ!」
「はぁ、まだ分からないのか。まず俺はお前の能力を、自分の触れたものを弾丸にする能力だと当たりをつけた」
「ッ!!」
「一番最初の不意の一撃。あの時点で、お前の攻撃には実体がなかったことに気づいた」
「それは、瓦礫を飛ばせると分かった理由にはつながらないわ!」
「その点に関しては勘だ。もっとも途中から確信に変わったがな」
「か、ん?」
「次に決闘が始まってからの氷の貫通。あれも演技だ。あの場で能力が分かったと、間違えたものを言えばお前は確実に油断するからな。それが窮地を演じれば尚更だ。事実お前は次の攻撃で致命傷じゃなく、足を狙った。足を飛ばされたのも演技だがな。あそこで一度引っかかることにより、更にお前を油断させた。そして、」
「ま、待ってよ!この決闘場でも痛みは感じるはずよ。慣れた私だって痛い。なんで足を犠牲にできるのよ!」
「俺は死ぬのが怖くない。それなのに、死なないと分かっている攻撃なんて怖いはずもない」
驚愕した顔で俺を見ている。
「そして、お前は逃げる途中で不自然に瓦礫を蹴飛ばしていた。それに、攻防に関係ない所も瓦礫が発生していた。俺の足場を悪くするためということも考えたが違ったみたいだったからな。ここで確信した。お前の能力をな」
「そうよ、私の能力は弾丸化。触れたものを操って、高速で放つことができる」
「その後の最後の一撃に自信を持たせるために、演じた。最後の不意打ちを防ぐことはお前を予想できていなかった。これが俺の作戦だ」
顔を下げ、両手を上げて、言う。
「完敗ね。どうしようもないわ」
「さぁ降参しろ。お前の首を取るなんて、したくないからな」
「はぁ、甘いわね」
神楽坂は乾いた笑いをしながら言う。
「俺が?甘いだと?」
「私は、私は負けるわけには!いかないのよ!」
顔を上げた、神楽坂の顔は憎悪で溢れていた。
首を飛ばそうとしたが、俺の剣が、俺に向かって飛ぶ。
右腕を切断したとき触れたのか!
そっちに気を取られているうちに、神楽坂は自らを弾丸化させ、後方へ飛ぶ。
そのまま壁へぶつかる。
「はぁぁぁぁー!」
神楽坂が、獣のように声を上げる。
決闘場が揺れだす。
俺は距離を詰めたが、間に合わない。
決闘場が崩壊を始める。
地面、壁が壊れだす。
観客席も例外ではない。
だが、愛光はいなくなっていた。
おそらく観客席に被害を与えたら、空間から出す設定なのだろう。
そして、壊れた瓦礫は、空へ集まる。
やがて、それは太陽を隠すほどの大きな弾丸になっていた。
これほどまでの大規模な天恵の使用は、その使用者にも影響を与えるだろう。
限界の差はあれど誰にでも存在する。
俺だって使い過ぎればあの日のようになる。
事実、神楽坂は目、耳、鼻、口から血を流している。
激痛も伴っているだろう。
「こ、れで、終わり、よ、ぉぉぉぉぉ!」
超質量が、ゆっくりとしかし着実に迫ってくる。
あれでは氷も役に立たない。
「さぁ!潰れなさい!防ぐ手立ては何もないでしょう!私の勝ちね!」
勝ち誇っている。
実際俺にあれを防ぐ手立てはないように思える。
だが、舐めすぎだ。
あんなガラクタの集まりがなんだ。
俺が、最強の、『氷焔の死神』、たる所以を見せてやる。
「焔と氷は我のものだ。
氷焔の鎌を持って、お前の魂を狩ってやる。
お前の全てを凍てつくす。
その目に焼き付けろ。
氷焔の死神を」
あたりが急激に寒くなる。
右手をそっと前に出す。
「永久凍土」
俺と弾丸の間に今までにないほどの巨大な氷の壁ができる。
今度は急激に暑くなる。
左手をそっと前に出す。
「紅焔」
床を溶かすほどの高熱を発する、小さな球型のそれを氷に向かって飛ばす。
それが、氷に触れた瞬間、その爆発は起こった。
目を焼くほどの閃光。
大気が震えるほどの轟音と、衝撃。
しばらく続いたそれらは、突然消えた。
光が消えた時に、そこには氷の壁も、熱を発する球体も、瓦礫の弾丸もなかった。
そこに存在しているのは、絶望し跪いている少女と、それを冷たい目で見下す死神だけだった。
この話は書きたいところナンバースリーに入りますね!
書いてて楽しかったです!
皆さんも楽しんでいただければ!
昨日も言ったんですが、ここ2日でアクセス数とブクマとポイントが急激に増えてます!
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そして、毎度のようですが、
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