第二話
朝食をすませ、日課となる木剣での素振りを行う。 正直、子供向けに短く軽いものとはいえ、まだまだ満足に振る事などできないが、剣術の指南役であるシーヴァス領諸侯軍でも一番剣の達人であるケビン曰く、幼い頃から剣を握り正しく振る癖をつけるのが上達の近道らしい。
実にスパルタではあるが、ケビンの指導では無理に素早く数多く振るのではなく、振り下ろす速度を求めず、まっすぐに振り下ろす事を求められブレがあると指摘するという意外と理にかなった教え方であった。 それなら何故、最初はいきなり模擬戦をおこなわせたか謎である。
気絶させた張本人であるカイル兄さんは目覚めた後、ものすごい勢いで心配しながら謝ってくれた。 トラウマにならなければいいが...。
昼食をとり、午後は自室にておとなしく絵本を読んでいると見せかけ魔力の検証を行う。
「ミアの話だと魔力のもとは、へその下らへんか。 意識してみても何も感じないな...。」
ミアに魔力について聞いた後、魔力を感じられるよう意識してみるが、温かく感じることはなかった。
「前世だと、場所的に丹田って呼ばれてた場所だよな。 うーむ、丹田、丹田・・・。 あ!! 思い出した! 昔、読んだ本にあった!!」
学生の頃、読んだ小説の猫を肩に乗せたランクルが愛車の大男の主人公を思い出した。
「確か、呼吸法だったような気がする。 息を吸いながら、吸い込んだ息が頭から徐々に下へと降りていき丹田に溜まるだったかな。」
うろ覚えではあるが、ものは試しと何度も繰り返してみる。 何度繰り返しただろうか、座禅をおこなっている時のように座り目を閉じ繰り返す。
そうすると徐々にへその下辺りが熱をおびてきたような感覚になった。
「おぉ、少しだけ温かくなってきた。 正しいかはわからないが毎日時間があるとき繰り返してみよう。」
それからは毎日、暇な時間を瞑想に費やした。 午前中、素振りを行い午後は書庫の本を読みつつ合間合間に瞑想を行った。
そして三ヶ月が過ぎた。 最初のうちは、ほのかに熱を感じるほどだったが、今ではしっかりと熱を感じるように成長した。 確かに丹田の部分に熱を感じ、貯まった熱がわずかに蠢くようになった。
「たぶんこれが魔力だろう。 今後も瞑想は行とうとして次のステップは魔力を動かす事かな?」
実際に魔力を動かす事を意識してみたが、まったく動かない。 蠢いているだけでピクリともしない。 それでも諦めずに動かす意識を持ちながら生活した。
諦めずにさらに一ヶ月、ついにわずかだが動かせるようになった。
「やっと動かせるようになった! きっとこのトレーニングは間違っていないはず!」
時間はかかっているが思い通りに進んだ事で調子にのり、ますますのめり込んでいく事となる。