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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
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第45話 親玉登場

諸事情により編集しました。

 冒険者育成学校に通った6年、冒険者になって2年、計8年間私は多くのモンスターと対峙してきた。魔物魔獣関係なく様々なモンスターと戦ってきた。時には容易に尚且つ簡潔に討伐したことも、時には苦戦しながらも討伐に成功したこともあった。私が出会った中で最大の大きさはせいぜい私より一回り二回り大きい程度だった。だけど今宵私たちが目前しているモンスターは、その程度とは比べ物にならないほど体が大きく勇ましかった。


「・・・なるほど。・・・あの、人族、2体の、せいで、侵略が、遅れて、いるの、か。」


 燃えている西門越しで巨大モンスターは私たちを目視するとそう呟く。私は驚愕した、モンスターが喋ったことに。学校で言語を発せれるモンスターは存在することは知っている。だけど、そのモンスターはほとんどが上級モンスター、つまりは先まで戦っていたゴブリンたちと比べて能力や知能が高く、数多いモンスターの生態系で上位にいる存在。分かりやすく言うと完全回復している私が挑んでも絶対に負けるということだ。


 最悪・・・最悪だッ!!まさか最後の最後で上級モンスターが出てくるなんて!?


「・・・この壁、邪魔。・・・壊す、か。“離れろ”。」


 私たちを囲っていたゴブリンたちは巨大モンスターの言葉を聞くと、すぐさま私たちに向けていた武器を下ろして西門から離れるように村へ走り出した。私はどうすればいいのか分からなかった。突如として変化した状況に戸惑いゴブリンの対応を遅れてしまった。だけどそんな私とは違って『狂人化』は発動しているアスタくんが動いた。背後を見せたゴブリンたちを見て好機と思い、彼は倒したゴブリンからまた剣を奪い、ゴブリンたちを追いかけるように走りだす。彼は1体のゴブリンに追いつくと、その背中に深い一撃を入れる。

 攻撃を受けたゴブリンは奇声を上げながら倒れるが、アスタくんの攻撃はまだ続いた。彼は倒れたゴブリンの背中を逃げないように踏みつけて、剣の持ち方を変えて突き刺し始める。ゴブリンは刺される度に叫ぶその奇声が徐々に弱まり、5回ほど刺すと声を出すのを止めて絶命した。流石にここまでされると他のゴブリンたちも黙っていないと思い、私は急いで彼の下へ向かおうとした。しかし予想はみごとに外れた。他のゴブリンたちは全く見る気もせず、ただ淡々と走り続けた。まるで先の命令を優先しているかのように、そのゴブリンを見捨てて自分たちだけ離れて行った。


バキバキバキバキッ


 離れていくゴブリンたちとは反対に何やら聞きなじみのない音が聞こえてくる。間違いなくあの巨大モンスターが何かしたのだろう。私は後ろへ振り返り剣を向ける。


「う、うそ・・・。」


 振り返った先の光景で私は言葉を失いかけた。巨大モンスターは村に入るため西門を地面ごとえぐり取り、その豪腕な両腕で持ち上げていた。燃えている西門を素手で持っているにもかかわらず、巨大モンスターはまるでその熱さを感じていなかった。


「・・・なるほど。あそこに、固まって、いるの、か。・・・丁度いい、一気に、片付け、やすい。・・・この2体、だけでも、十分だな。・・・ギィィィィアアアアア!!」


 この鳴き声ッ!!やっぱりこいつだったの!?


 巨大モンスターは独り言をつぶやくとその持ち上げた西門を咆哮するのと同時に力強く投げ飛ばした。砲丸のように空を飛ぶ西門はとある場所へ真っ直ぐに向かう。そのとある場所は、ペレーハ村で一番広い敷地を有している村長の家だった。


ドカーンッ


 放物線を描くことなく直線的に飛ばされた西門はそのまま村長宅に直撃する。その際に発した爆発音は間反対にいる私たちの耳まで響き渡り、村長宅はその原形を保てずに土煙を立てて崩れた。そして燃えていた西門の炎が燃え移り、村長宅は一気に火事場騒動へと一変した。


 そんな・・・あんな大きな建築物を軽々と投げるなんて・・・!?しかもあんな正確に直撃させるなんて、・・・なんで村長宅だったの?何かつぶやいていたけど・・・“固まっていた”、“片付けやすい”・・・まさかッ!?あそこに・・・村のみんなが避難していたの!!


「・・・今、投げた、場所だ。“行け”。」


 巨大モンスターはまたゴブリンたちに命令した。後方へ待機していたゴブリンたちはその言葉を聞くと村長宅へ向かって走り出した。アスタくんもゴブリンたちを追いかけようと走り出そうとするけど、ペレーハ村に入って来た巨大モンスターを見てその足を止めた。彼はじっと巨大モンスターを見つめた。いま彼の中で何を考えているのか理解できない。だけど彼がゴブリンよりも先にこの巨大モンスターを対処しようとしているのだけは分かった。巨大モンスターと目を合わせた彼は剣の持ち手を変えて、その足元に向かって全力で走り出す。


「アスタくんダメ!止まって!」


 押し倒してでも止めようとした。攻撃される覚悟で止めようとした。だけどアスタくんの足は想像以上に速く、私が服を掴もうとするよりも早く横を素通りして巨大モンスターへ真っ直ぐに向かった。追い向かれた以上もう追いつくことはできない、それでも私は彼を止めようとその後を追うように走り出した。


「・・・向かって、来る、か。」


「止まってッ!お願い、止まってぇッ!!」


 アスタくんは減速することなく巨大モンスターへ向かった。彼は走りながら装備した剣を後ろに振りかぶり、敵の片足に十分に近付いた瞬間その剣を力いっぱい横に切りかかる。


カキーンッ


 アスタくんの剣はその金属がぶつかり合うような音を立てながら、折れた。刃こぼれや彼の手から離れたのではなく、巨大モンスターの片足の強度に負けて折れてしまった。折れた刃は彼の頭上を通って後方の地面に刺さり、『狂人化』した彼はいったい何が起きたのかまるで理解できていないように固まる。


「・・・次は、儂じゃな。」


 巨大モンスターが足元にいるアスタくんを見下しながらそう言った瞬間、モンスターの片手が彼を襲った。真正面から来たその手は、すくい上げるように張り手で攻撃して、彼を天高く空に飛ばす。彼が私の頭上を通るまで、今まで起きた出来事理解できずに、ただ傍観していた。そして彼はそのまま、まだゴブリンに攻撃されていない一軒家の屋根に落下する。その際に聞こえる木材が折れたような音を聞いて、私の脳はようやくすべてを理解して、全て現実だと実感した。


「・・・ふぅ、ただの、阿呆、か。・・・いや、ただの、間抜け、とも、言うべき、か。・・・期待損、だな。」


 ・・・は?今・・・何て言った?


「・・・次、そこのメス、掛かって、来い。・・・動くのは、面倒、お前から、来い。・・・先手、くれてやる。・・・早く、しろ。」


 アスタくんが・・・間抜け?私より頭が良くて、強くて、勇気があって、そして優しいアスタくんが・・・間抜け?そんなことないッ!アスタくんは、本当は戦うことを嫌っているのに、私のために来てくれた!そんなアスタくんのことを間抜けって言うなんて・・・。


「・・・許さない・・・。」


「・・・はぁ?」


「絶対に許さない!この化け物ッ!!」


 我を忘れそうになるほど怒りが高まり、人生で一番の大声を出した。先まで勝ち目が分かっていたけど今はもう関係ない、私は巨大モンスターに勝負に挑んだ。もう後なんて考えない。今はこの巨大モンスターだけを仕留めたい気持ちでいっぱいだった。私は剣を一旦鞘に納めて紐で硬く固定して、そのまま鞘ごと剣先を巨大モンスターに向けて狙いをつける。残っている全魔力を使って2つあるうちのもう1つの剣技を発動する。


【剣砲:レッド・フル・ペレーハ】


 鞘の中で大量の魔力を帯び続ける剣はその密閉した空間で耐え切れず、鞘を爆発させてその刃が柄から折れて巨大モンスターの首元目掛けて飛んで行った。このエクストラスキルは敵との距離があっても問題ないなく、まさに不意を衝くにはうってつけの奥の手。だけど爆発の衝撃で後方に飛ばされながら、魔力不足の現象である吐き気や頭痛に襲われてしまう。飛ばされた際に出た土煙で周りの視界が遮られてしまう。


 気持ち悪い・・・それに腕も痛い、上手く受け流すことが出来なかった・・・!でも、あのエクストラスキルは私の切り札、武器破損覚悟の奥義、まさに一撃必殺!いくら剣より硬い皮膚を持っていても、あの火力なら首の骨を突き破って倒せたはず・・・。


「・・・うぅ・・・やる、な。・・・驚いた、ぞ。・・・まさか、武器を、飛ばすと、は。」


 土煙が晴れると、視界には巨大モンスターが立っていた。首には私の剣技で飛ばした刃が深く刺さっているのに、化け物は平然と話していた。ありえない、急所である首に刃物が深く刺さっているのに、生物としてありえない。


「・・・儂は、切られ、ようが、刺され、ようが、簡単には、くたばらん。・・・さて、次は、儂だ。」


 巨大モンスターはその鋭利な爪で器用に首に刺さった刃物を引き抜き、徐々に私の方へ近づいてくる。1歩、また1歩と巨大モンスターは歩み寄る度に地面が揺れる。その揺れが感じる度に私の心が折れていった。もう無理だ。武器もない、魔力もない、体力もない、もう抵抗する手段がない。人生の終わりを察したこの瞬間、ただ迫ってくる死を待った。


【水魔法:アクア・ピストル】


 私の頭上に水の弾が5発通った。弾は真っ直ぐ巨大モンスターの胸部の中央、心臓付近に着弾する。攻撃されたことに気付いた巨大モンスターは静止した。


「・・・ほう?・・・生きて、いた、か。・・・良き、魔法だ。」


 命中できても巨大モンスターに血を流させるどころか、傷一つつけることが出来なかった。巨大モンスターの胸部は見るからに生身とは思えないほど屈強なもの。だから先のエクストラスキルでは心臓を諦めて首を狙ったのだ。だけどそんなことはどうでもいい。私は今の魔法に見覚えがある。あの魔法を発動した者を何とか見ようと地面に這いつくばる自身の体を無理矢理起こして振り返る。振り返った先には、頭から血を流しながらも落下した一軒家の屋根で立っている、アスタくんの姿があった。

 あの高さから落下して生存していたアスタくんの姿に私は嬉しかった。大切な人、守りたかった人が生きていたことに、心の底から歓喜した。だけどそれと同時に私は絶望もした。今の私にはもう戦う力が尽きてしまった。この巨大モンスターから彼を守れる手段がない事に私は心の底から絶望した。この何とも言えない心境に涙を流してしまう。この涙は嬉しさによるものなのか悲しさによるものなのか自分でも分からない。


「ア・・・アスタ・・・くん・・・。」


【水魔法:アクア・ピストル】


 アスタくんは屋根の上から攻撃を続けた。彼の様子は先と変わらないところを見るとまだ狂人化のスキルが発動中なのだろう。彼は攻撃方法を変えることなく、何度も巨大モンスターの心臓に目掛けて魔法を発動し続ける。だけど巨大モンスターを傷付けることはできなかった。


「・・・うっとお、しい。・・・ふんッ!」


 巨大モンスターがついに動いた。先のゴブリンたちによって燃やされた家を両手でつかみ、アスタくんが立っている一軒家に目掛けて投げた。2つの木製の家は衝突し跡形もなく無くなった。そして、アスタくんの姿もなくなった。衝撃の際に吹き飛ばされたのだろうか。それとも2つの家の下敷きにされたのだろうか。どちらにしても先のようにただでは済んでいないことには間違いない。


「あっ・・・あぁっ・・・。」


 私は過呼吸になるほど焦った。こんな現実受け入れたくない。受け入れられるわけがない。冒険者になって、力があるはずの私が何もできないまま、アスタくんを見殺しにしてしまったこの現実を。


「・・・素晴ら、しい!・・・何という、生存、本能!」


 後方の巨大モンスターの言葉は誰を指しているのか理解できなかった。彼が消えてしまったこの現実に、理解しようともしなかった。2つの家が衝突して少し経つと何か足音が近づいてくる。最初はゴブリンが戻ってきたのかと思った、だけど違った。足音の正体は、アスタくんだった。まさかのあの状況から生きて、倒れている私の前に立っていた。

 投げられた家で視界が遮られて見えなかったけど、アスタくんは家がぶつかる寸前に自分からその投げられた家に飛び移り、そのまま上空へ避難するように飛んだ。しかし先の巨大モンスターによって飛ばされたのと同様に上手く受け身が出来ず、彼の片足も含めて左半身は酷い重傷を負っている。いや、よくそれだけで済んだと言うべきだろう。当たり所が悪ければ死んでいたのだから。

 アスタくんはその骨折した片足を引きずりながらも巨大モンスターの方へ歩き出した。彼の雰囲気から狂人化のスキルはまだ解かれていないことはすぐに分かった。もうまともに動いてはいけない身体なのにまだ戦い続けるつもりだ。そんな彼に私は最後の力を振り絞って抱き着いて、足ふみを止めさせた。

 今のアスタくんはもうボロボロだ。私以上に戦って、抗って、倒して、だから今ボロボロになっている。もうこれ以上彼が傷つくのは見たくない。吐き気と頭痛で普通に声を出すこともできない私には今、こうして彼を止めるしかなかった。


 お願いアスタくん、もう・・・動かないで・・・。もう・・・いいから・・・。


【水魔法:アクア・ピストル】


 アスタくんは私に抱き着かれたまま、巨大モンスターに向けて魔法を発動する。1発だけ放たれた水の弾は巨大モンスターに命中するけど、先と同様に全く傷つけられなかった。ここで彼に変化が起きた。魔法を発動した瞬間、彼はまるで魂が抜かれたかのように力と意識が無くなり、後ろにいる私の方へ倒れた。どうやら先の魔法を発動した際に、彼の魔力量が『狂人化』の解除条件の一定値まで下がったようだ。

 私はすぐアスタくんの脈拍を確認した。魔力枯渇などもう関係ない。意識が飛びそうでも身体を動かす。そっと触れる片手に彼の鼓動がはっきりと伝わっている。気を失っているだけ、とりあえずは生きている。それが分かった瞬間、私は嬉しかった。この現状を忘れて小さな涙を流した。


「・・・大した、人族、だ。・・・最後まで、急所、狙い続け、た。・・・素晴ら、しい!」


 少し顔を上げると巨大モンスターが目の前まで迫って来ていた。アスタくんのことばかり意識していたせいで、近付いてくる足音さえ気付かなかった。巨大モンスターと目が合った瞬間、私は死を覚悟した。命乞いする声も出ない、仲間のゴブリンを多く倒したのだから見逃してくれないだろう。私は寝ている彼の体に優しく抱きついて、深く謝罪をする。


 ごめんね、アスタくん・・・全然守れなくて。私が弱くて・・・本当にごめんね・・・!


「くくく・・・おい、人族の、メス。・・・貴様と、そのオス、助けて、やろう、か?」


 そんな時、まるで考えを察したかのように巨大モンスターは不気味に笑うと、悪魔の誘惑のように私に囁く。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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