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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第九十九話 白い花が咲く時、第七の能力が目覚める

いきなり登場の新キャラ紹介


白咲由梨しろさきゆり:スミレが属する女子ソフトボール部の部長。プライドが高く、部員に対しては愛と厳しさを持って接している。新人で即レギュラー入りしたスミレのことを快く思っていなかったのだが……


大郷益荒男だいごうますらお:女子ソフトボール部の顧問。時に熱血、あとはほとんど優しい、部員からはそのように評価されている。優秀なコーチで皆から信頼されている。

 ここは、こしのり達が通う市立毒蝮高校のグラウンドである。今は放課後で、運動部の面々が活動中である。そんな運動部の中でも、今回はスミレや水野が所属する女子ソフトボール部に焦点をあてたお話をお送りしよう。


 今日もソフトボール部は活気に溢れた中で練習に取り組んでいた。皆が練習をしている中、グランド脇のベンチの前では、二人の人物が会話をしていた。

大郷だいごう先生、質問してもいいですか?」と言ったのは女子ソフトボール主将の白咲由梨しろさきゆりである。

 大郷はバットの先を地面に当て、握り手部分に両手を置いて杖のようにして立っている。「ああ、俺達教師は、いつだって生徒の問いに答えるのが仕事だ。遠慮なく言ってみろ」教師の役割をきっちり心得ている大郷はそう答えた。

「正直、性的な目で部員達を見たことがありますか?」

「……俺はまだ30そこそこの独身男だ。普段は潔白な青年教師に見えても、その実まだまだ心には獣を飼っている。お前達をそういう風に見たことがない、と答えたら、お前たちの若さの魅力を否定し、己の中の男の部分に嘘をつくことになる。答えはコレで良いか」

「……分かりました。今のは聞かなかったことにします」

「ああ、そうしてもらえるとありがたい。今言ったことに嘘は一つもないが、真実として周りに伝わっても良いもことはないからな」

 ここで白咲は咳払いをする。そして次の質問に入る。「では、ウチの後輩のスミレですが、あれ、どう想います?」

「いいなぁ……」大郷はそれだけ言った。

「スミレをそういう目で見ている、ということはありませんか?」

 この問いを耳に入れた大郷の眉間に少し皺が寄った。「尊敬する我が母と、この美しき空と大地にかけてそれはない」

 彼は、家庭を省みない傍若無人な父をどこまでも軽蔑する一方で、この世の愛という愛をかき集めて作られたごとく優しさに満ち溢れた母のことを誰よりも尊敬していた。そんな彼の親は、どちらももうこの世にはいない。

「……そうですか」白咲は大郷の気迫ある返しに少し驚いた。

「では、どうしてスミレが……レギュラーでピッチャーになったんですか。以前は、三年の溝口がピッチャーでした。それなのに新人の一年があのポジションに着くなんて、納得いきません」

 白咲がその質問をした時、丁度投球練習中だったスミレの勢い良い球が気持ちよい音を立ててキャッチャーミットに納まった。

「いい球だ」と大郷は言った。 

「大郷先生、どうなんです?」

「白咲、部活中はコーチか監督かパパかのどれかで呼べと言ったはずだ」最後のパパはもちろんダイゴリアン(大郷の学生時代のあだな)ジョークである。

「……大郷コーチ……」白咲はコーチを選んだ。

「理由が、ほしいか」

「はい。聞かせてください」

「見ての通り、スミレは筋が良い。実際お前ら上級生も討ち取る程だ。まぁ溝口と比べてもどっこいどっこいってところだな」

「では、なぜ溝口ではないのです」白咲がそう言った時、大郷は一瞬遠くを見るような目をし、そして静かに目を閉じた。

 それから大郷はまたゆっくりと目を開けて白咲の問いに答え始めた「……あえて言うと……俺の母親に似ていたから……かな」

「コーチの母に、ですか……」

「そうだ。俺の母だ」

 次は白咲も目を閉じた。そしてため息を一つ漏らした。「名コーチが、母に似ていたからと理由で選手を選んだ。なら、もう不満は言えませんね」白咲はいにしえのルールに従い、スミレがレギュラーに選ばれたことへの納得を示した。

「では、私も練習に戻ります」白咲は晴れやかな顔をしてグラウンドに駆け出した。

 その時である。皆の下に走り寄る白咲目掛けてサッカーボールが飛んできた。それに一番に気づいたのは、スミレであった。スミレは口よりも先に足が動いた。スミレは白咲の元へ駆け寄り「先輩危ない!」と叫んだ。白咲は自分を襲う危険にまだ気づかず「はぁ?」という顔をしていた。

「間に合わない!」とスミレは想った。このままでは白咲の頭にかなりの勢いで迫るサッカーボールが当たってしまう。こんな時に、炎を消し飛ばすくらいの風を起こすこしのりの能力が自分にあれば、風でボールを吹き飛ばして先輩を救えるのにとスミレは強く想った。スミレは、白咲に5メートルのところまで迫っていた。スミレは踏み込み、一か八か白咲に飛び掛かった。

 スミレが宙に浮いたその瞬間、スミレのミニスカが強く光った。するとスミレの赤と黒のチェックのミニスカの黒色の部分全てが、まるでスライドパズルのように動いて消えた。そして次の瞬間何もなくなった部分に入れ替わるようにして青色の柄が、これまたスライドパズルのようにして現れた。1秒と掛からぬ間に赤と黒のチェック柄は、赤と青のチェック柄に変わってしまった。

 スミレの体の周りには風が渦巻き、膜のようになった。そして空中でスピードアップし、白咲向けて進みだした。スミレが伸ばした両手は白咲の両肩を掴んだ。そしてその時になってサッカーボールは白咲のいた位置に到達したが、スミレを覆う風の膜に当たって跳ね返った。

 スミレは白咲を強く押したまま地面に倒れこんでしまった。部員達は練習を中断し、倒れた二人の下へ駆け寄ってきた。

「スミレ!キャプテン!大丈夫なの」水野はそう言いながら一番に駆けつけた。

「ああ……びっくりした。なに?」仰向けに地面に倒れた白咲が目を開けると自分の上にはスミレが覆いかぶさっていた。白咲はコロコロと転がるサッカーボールに気づいた。「スミレ!私を庇って……」白咲はやっと状況に気づいた。

 自分は今までスミレのレギュラー入りに不満を抱き、そしてスミレが早くして実力を認められたことに嫉妬までしていた。そんなことを考えていた自分を、目の前のこの娘は身をていして救ってくれた。それを想うと白咲は複雑な気持ちになった。

「ああ……先輩怪我はありませんか」スミレがこう言った時、スミレは白咲の顔を挟んで地面に両手をついていた。所謂いわゆる床ドンの形になっていた。

 スミレの顔が近い、吐息がかかり、スミレの大きな黒目が良く見える。白咲はこの急接近に心をかき乱してしまう。「ああ……近くで見るとやっぱり小さい顔に決め細やかな肌、毛穴とかないんだぁ……それに運動して汗をかいてるというのに、なんか良い匂いがするし……それから、それから……胸、あたってる。結構でかいな」と白咲は想った。

「先輩、まさか!頭を打ったんですか!」スミレは顔を近づけて聞いた。

「おい!担架いるか?」大郷が大声で問う。

 スミレと急接近した白咲は、近くで聞こえる透き通った声、甘い匂い、そして自分の胸の上に重なる自分よりも大きくて柔らかい胸の温もりを感じ「ああ、あ、あ」と呻く。

「先輩!顔が赤いです。熱でもあるんですか?」スミレは床ドンしたまま更に顔を近づけて聞いた。この時、スミレの吐息が白咲の敏感な耳にかかった。これを最後の一手にして屈強な白咲の理性の壁は崩壊した。次の瞬間、白咲は両手でスミレを突き飛ばした。そしてさっと立ち上がると顔と耳を真っ赤にして「あ、あ、これ以上くっついたら、私、咲いちゃう~~!」と叫びながら校舎に向けて走り出した。

 ちょっと天然なスミレは、白咲が元気にランニングを始めたと想い「よかった元気そうで」と太陽のような明るい笑顔で言った。

 走り去る途中で白咲は「ああ~ヤバイ!ヤバかった!あの、なんて破壊力を持っているの。それにしてもなかなかのボリュームで柔らかかった。本当に恐ろしい!」と想っていた。スミレを突き飛ばした時、白咲の両手は丁度スミレの胸部に実る二つの極上果実をへこませていたのであった。

 彼女はヤバイと想っていたが、実はこの時、既にヤバさを越えて白咲の心には白き花が咲いてしまっていたのだ。花が咲く瞬間というのは人に気づかれにくいものである。


 白咲が全力ダッシュでグラウンドを去って行ったその時、「わ~!ちょっとどうしたんだコレ!俺のどこに行ったんだ!」という声がグラウンドの端から聞こえた。

 立ち上がって、服についた砂を払いながらスミレは声のする方に目を向けた。そこにいたのは、例の四人、詳しく述べるとこしのり、丑光、根岸、堂島であった。声の主はこしのりであった。丑光の呼びかけで、珍しく彼らはサッカーボールを蹴って遊んでいたのだ。白咲を襲ったサッカーボールの出所がスミレにはすぐ理解できた。そして、もう一つすぐに理解できたことがある。こしのりがパンいちで前を手で隠して立っていた。丑光が手を広げてこしのりの前に立っていたが、普通に隠せていいない。

「こしのり!アンタか!てか、なんて格好してるのよ!」と言ったスミレは、自分のミニスカが赤黒チェックから赤青チェックになっていたのに気づいた。そして先程自分が風の力を得たのを思い出し「ああそういうことか!」と合点がいった。

「ああ!スミレちゃんのミニスカのチェック柄が青に!こしのりのミニスカが急に消えて、スミレちゃんのミニスカがああなっているという事は……」と言った丑光も理解が早い。

「そういうことか」スミレはそう言うとサッカーボールに目を向けた。するとサッカーボールはふわりと浮いた。そして勢いをつけてこしのりの頭目掛けて飛んでいった。

「うぼぇえ!」見事サッカーボールを喰らったこしのりは叫びをあげて倒れた。

「こんな狭いところで遊んでんじゃないわよ!」とスミレは怒った。

 倒れたこしのりの奥に立つ堂島の様子がおかしい。堂島は下を向いたまま黙っていた。状況的に自ら良い出せなかったが、強力なシュートを放って白咲を危ない目に合わせた犯人は彼であった。



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