第九十四話 ミニスカ女王とご機嫌なカラフル野郎共
スミレの16歳を祝う誕生日パーティー会場はものすごい光に包まれていた。一枚分でも「いい加減にしろ!」というレベルで迷惑な光を放つミニスカが、一気に六枚光りはじめたのだ。
謎な状況に対して水野は「何これ。何かの出し物なの?」と一同に問う。
「わわっ!水野さん、これは予定にないよ」丑光が言った。
「なんやこれ、眩しすぎてかなわんで」室は自分の下半身に目をやることさえ出来ない。
スミレは立ち上がり「ちょっと、私の部屋で何する気よ」と言った。
六枚のスカートそれぞれから、鉛筆くらいの太さの棒状の光が伸び始めた。その何れもスミレの下半身を目掛けて伸びていた。
「何々!?こっちに来るんだけど」
六人の男の下半身から伸びる棒状の光全てが、スミレの下半身にたどり着いて交わった。スミレの下半身で交わった六つの光線はそのままスミレの腰の周りをぐるりと光で覆った。そして、スミレの下半身がミニスカ六枚分のものすごい光を放った。この瞬間、この場にいた誰もが目を開いていることが出来なかった。
スミレの部屋全体が、5秒程光の海に浸された後、あっという間に光の海は潮引きを始め、スミレの部屋は元の20系の蛍光灯4本分の明るさに戻った。
「はぁ~ビックリした」こう言いながら目線を下に落としたスミレは「ああっ!」と大声を上げた。
「スミレちゃん!それは!」丑光はそう言ってスミレの下半身を指差した。なんと、さっきまでショートパンツを穿いていたスミレの腰を覆っていたのは、可愛らしい赤と黒のチェックのミニスカートであった。
「スミレちゃん……可愛いね、それ。アイドルグループ『イブニングどら息子。』のデビュー曲の時の衣装みたいじゃないか」と丑光はマニアックな知識を引っ張り出して感想を言った。
「うん、スミレ可愛いよ」とうっとりして水野は見ていた。
「おい、スミレだけじゃない。俺達のミニスカも!」そう言ったのは根岸だった。
「なんだい僕達のミニスカが何だっていうんだい」そう言って丑光は目線を自分の下半身へ向けた。そして「わぁ!」と一声あげた。丑光のミニスカは、それまで特に詳しい設定はしなかったが、とりあえず地味ということになっていたあのミニスカから、眠いお目目も覚める美しいピンク色のミニスカに変わっていた。「これは一体どうゆうことだろう。考えてみよう」そう言って丑光は考え始めた。彼は考えるのが得意である。それとは別に普通にバカなのだが……。
「ああ!俺のは青色になっている!」とこしのりは言った。同様に根岸は黄色、堂島がオレンジ、室は紫、田代は緑とそれぞれのミニスカにカラーリングが施されていた。今の一瞬の間にこれだけ不思議なことが起こったわけである。それにしても何てカラフルなミニスカ軍団になったものだろうか。
水野は「これは昨日BSで見たアイドル番組に出ていた7人組アイドルグループ『ジャパニーズNEXT』のメンバーカラーと一緒ね」と分析を交えたコメントをした。
「じゃなくて!何よコレ!いつの間に!」そう言ってスミレは穿いた覚えもなければ、自分で所持してもいない気味の悪い赤黒チェックのミニスカを脱ぎ捨てた。その瞬間である。彼女のミニスカの下から姿を現したショートパンツが光出して、下から上に向かってどんどん消え始めた。消えた部分は光の粒子となって部屋を舞い、やがて見えなくなってしまった。ショートパンツが消えたら、次に見えたすばらしい物が何だったかもう予想はつくだろう。
「きゃああ!!何これ!」スミレは悲鳴を上げた。
「うおおお!」こしのりが興奮の声を発した。
一同はスミレの下半身、彼女の素敵なパンツに目が言っていた。個人の、ましてや年頃の乙女のプライバシーに拘わるので、柄とかの情報は何も記さないでおこう。とにかく素晴らしい眺めであった。スミレはすぐに先程脱ぎ捨てた赤黒チェックのミニスカを穿いた。
「はぁはぁ……どうなってるの!気に入ってたショートパンツはどうなったの?」スミレはさすがに混乱している。
男性諸君は、まさかこんなものが見れるとは想ってはいなかったので未だに目を丸くしていた。
「ふむふむ、今のではっきり分かった」考え終えた丑光が遂に口を開いた。「六枚のミニスカの力を得て、七枚目のスカートが誕生した。それを穿くのがスミレちゃんだ。六枚のミニスカが王と選んだ者、それが七枚目の穿き手なんだ。間違いない」
丑光がそう言うならそれで間違いない。
「だったら、どうして今までミニスカを保管しているこしのりの家の隣に済んでいるスミレがミニスカに選ばれていなかったんだ?」と堂島が問う。
「それはだね、今日と言う日に関わりがある。今日は彼女の誕生日だよ。スミレちゃん、今は何時だい?」
「え、夕方の5時を過ぎたところね……」
「そうだね。君が生まれたのは、16年前の今日、もっと時間を絞れば17時だった。まさに今だよ」
「で、その時間が何だっていうんだ」こしのりが問い詰める。
「彼女は今を持って正式に誕生から16年の時を経たんだ。そこでだ、このミニスカは女子に限っては、女子が大人になったと認められる16歳まではミニスカ侍として反応しないようになっているんだよ。か弱い女子をか弱いままに闘いに巻き込むこと、そこに関しての忖度がプログラムされているんだよ。間違いない」
「成る程、16歳を迎えて、脱か弱い女子を達成したスミレには、真にミニスカ侍の資格が与えられたというわけだ」と堂島は納得した。
「そうだよ。16歳になったスミレちゃんは六枚のミニスカが選んだ王、いや、女子だから、ミニスカクイーンとして覚醒したわけさ!」
丑光の名推理は全部あたったいます。そっくりそのままこの設定で行きます。
「それより丑光君、鼻血ふけば」そう言って水野は丑光にティッシュを一枚渡した。
「うむ、ありがとう水野さん。いやいや、いつも近しい距離にいるスミレちゃんからだからこそ、たまにこうした予想もしないものを見せられると多感な時期の僕には……刺激が強すぎたようだよ。水野さん、もう一枚頼むよ」
「あんたね、冷静にそんなこと語らないでくれない?」スミレは顔を赤らめつつ怒った表情でそう言った。
確かにいきなりの幼馴染からのパンチラには結構な威力があるものである。