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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第九十二話 16歳、それは個人的に最も脂が乗ったとされる年齢

 遂に、遂に2017年も最後の月となる十二月に入ってしまった。

 そんな折に我らがミニスカ侍達は何処で何をしていたのか、それをこれから語ろう。

 十二月三日、ミニスカを穿いた六人の男達は、スミレ自宅の彼女が寝起きする自室にいた。しかも本人抜きの状態であった。主が留守中の女子の花園に、なぜこのようなメンバーで上がりこんでいたのか、これは気になるではないか。そこのところのネタばらしを含んだ会話が次の通りである。


「はいはい皆、きびきびと飾りつけを行おうよ。腹を空かしたスミレちゃんがダッシュで帰ってきちゃうよ」

「そういう丑光こそ、さっさとやれよな」こしのりがそう返した。

「それにしても、まさかスミレが俺達の中で一番生まれるのが早かったとはな~」と堂島が言った。

「はっは~、もう50代の私を忘れてもらっちゃ困るよ」田代がそう返した。新たなミニスカ侍の田代は、早くもメンバーに馴染んでいた。なんせ彼はカリスマホームレスとして街ではちょっとした有名人だったので、元から顔は良く知られていたのである。

「しかし、前に丑光も言っていたが、なんだか色物集団として出来上がってしまったな」本を片手に根岸が言った。

「おいおい根岸君、君って奴は本当に冬眠知らずの本の虫だね。手伝いたまえよ」と丑光は注意した。

「ふん、今回の代金は、その飾りも含めて俺持ちだぜ。金を払っていないお前達こそ働くが良い」根岸お坊ちゃまはそう返した。

「確かにそうだぜ丑光、お前は食うのを止めてさっさと作業をすべきだ」こしのりがそう言いながら目線を向けた先にいた丑光は、ソフト煎餅の「べちゃべちゃ焼き」を食っていた。

「むしゃむしゃ……てへっ、そうだね。今日はしっかりスミレちゃんを祝ってあげなきゃね」丑光はこんな感じで、集団で行う学校行事などの準備を隙あらばサボろうとする。彼の様な行いを社会的手抜きと言うのだろう。

 本日十二月三日は、我らがヒロインスミレ氏の誕生日であった。彼女と同級生のこしのり、丑光、根岸、堂島の誰よりも早く彼女は16歳になったのである。四人はいずれも2018年にならないと次の誕生日を迎えられない。

 同級生の、特に保育園からずっと一緒だったこしのりと丑光ら幼馴染の間では「1・2・3はスミレの日!」と、まるで標語のようにして口にされていた。高校生になってもこの日になればスミレの誕生日だと、彼女と親しい仲の者は思い出すようになっていた。彼女は皆から愛される娘であった。

 ことによっては、あと一ヶ月でこの世は終わりを迎えるというやばい事態ではあるのだが、だからこそ最後になるかもしれない誕生日は盛大に祝ってやろうと提案したのが丑光であった。それは第何回目になるのか、もはや筆者の私も忘れてしまった十一月後半に開かれたミニスカ侍ミーティングの中で提案された。残りの者は、他に話題もないし「何か面白そう」と想ったので丑光の意見に賛成してサプライズバースデーパーティー決行に乗り出したのである。

 スミレは現在、学校で部活動中である。世界の平和を守ること以外は、全くの暇人であるミニスカ侍達は彼女の親に許可を取った上で、彼女の部屋に上がりこみ、せっせと会場準備をしていた。疲れて、たっぷりと腹を空かして帰って来た彼女を驚きと感動の渦に巻き込み、あわよくば泣かせてやろうと各々が張り切っていた。諸々の経費は根岸家持ちであった。金持ちの友人がいればこういう時に心強い。


「そしてだ。こいつが今日のために用意した俺の傑作よ。はっきり言って食っちまうが惜しいぜ」そう言って堂島がスミレの勉強机に置いた箱の中身は、バースデーケーキであった。同級生に金持ちと菓子作りの得意な奴がいれば、友人間で行うバースデーパーティーはきっと華やかな物になるだろう。一同は、ちょっとだけ箱の中を覗いてみた。

「おお!……すげぇ、すげぇ奴が同級生にいたもんだぜ」こしのりはケーキのすばらしい出来に感動している。そして言葉を続ける「堂島よぉ、こいつをもらって嬉しくない奴はどうかしているぜ。例え糖質ダイエット中の奴であっても、これをもらえばきっと食っちゃうよ」

「へへっ、なんたって自信作だぜ」

「わぉ!すげ~な。早く食いたいな。姉ちゃん早く帰ってこんかいな」涎を垂らしながら室が言った。彼もすっかりスイーツ好きになっていた。

 もちろんこのケーキ代も根岸持ちである。堂島はケーキの注文を受けて、自分の腕を振るうことが出来るので、ノリノリでケーキ制作に乗り出した。彼の自信作の出来は本当に素晴らしい。写真でお見せ出来ないのが実に残念である。

「確かにすばらしいね。で、堂島君。まさかコレに使った砂糖は堂島シュガーじゃないだろうね?」丑光の言う堂島シュガーと言うのは、先日発覚した彼の手のひらから噴出される砂糖のことである。

「ああ、それはないよ。オヤジから菓子に使う砂糖は、今まで通り仕入れ先のを使うから、手から出したものなんかを客に食わせるなって言われたんだよ」

「ふむふむ、良識のあるオヤジでよかったな」根岸がそう言った。


 彼らがそんな話をしている間に玄関から音がしていた。スミレのお帰りのようだ。二階の自室に向かって階段を上がってくる音がする。彼女が自室に到着するまであとわずかの距離に迫っているようである。

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