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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第八十九話 loser & stronger

 根岸をピンチから救った土上どのうえとピンチに追い込んだ小神兵こしんへいとの睨み合いは長くは続かなかった。土上の足元から砂煙が上がった瞬間、既に小神兵の視界から土上は消えていた。小神兵も速いが、土上も速かった。彼女は一瞬にして小神兵の間合いに入った。小神兵も対応が速く、自分に向かって直進して来る土上にパンチを放った。

土上どのうえ!」根岸は、土上に反応して小神兵がパンチを放った時、彼女を心配して意識せずにそう叫んでいた。その時、土上は直進の動きから滑らかな流れるような動きに変わり、自分に向かって真っ直ぐ放たれた小神兵のパンチを見事に避けた。

 小神兵の突き出した腕の真横に立った土上は閉じた傘を両手で握り、振り上げた。そして次の瞬間、まるで刀のように傘を振り降ろして、小神兵の硬い腕を切り落としてしまった。土が固まって出来た腕の切り口からは砂利がボロボロと漏れていた。 

 丑光は口を開けて「わぁぁぁぁ……」としか言えなかった。いくら何でも次元が違いすぎるバトルが目の前で行われているので彼は驚き、そしてびびっていた。

 丑光がそんなリアクションを取っている間にも、土上は畳み掛けるように次なるアクションに移る。土上は次には小神兵の腹を傘で突き刺し、そのまま体重を乗せて小神兵を地面にたたき付けた。この時、ドンッと大きな音が立ち、小神兵の倒れた周りの地面には亀裂が入った。小神兵は背中から地面に倒れこみ、傘は腹を貫通して地面にまで刺さっている。二人は睨みあっていた。

「もうこれで動けませんね」

「……どうかな」そう言うと小神兵はニヤリと笑った。

 先程土上が切り落とした小神兵の腕がウネウネと動きだした。そして腕は土上の背中目掛けて伸びた。伸びた小神兵の腕は巨大化した。土上が後ろから迫るそれに気づいた時、回避するにはもう遅かった。巨大化した腕は、土上の綺麗なメイド服の上から彼女の腰をガッっと掴んでしまった。

「しまった!」土上が腰を掴まれて傘から手を離した瞬間、小神兵は残った片手で傘を引き抜き、ゆっくり立ち上がった。土上は切り落としたはずの腕に掴まれて動けない。

「ああ……土上さんがやられちゃう」丑光の歯はガタガタ言っていた。

 小神兵は動けなくなった土上を前に片腕を振り上げた。

 その時、小神兵の後ろの林からすごい勢いで黒い影が飛び出し、小神兵に強烈なタックルをかました。小神兵は再び大きな音を立てて倒れた。

「われぇ、何しょんじゃい……」とりあえず丑光には聞きなれないどこかの地方言葉で怒りを口にしたのは、最初に小神兵に吹っ飛ばされた室であった。

 タックルで倒れた小神兵に馬乗りになって熊の室は鉄拳を次々と打ち込んだ。

「ふん!ふん!死にくされやぃ!」室の目は、獲物を狩る野獣の目になっていた。

 ガン!ガン!と石の砕ける音が響く。小神兵は滅多打ちにされてボロボロに崩れてしまった。

「ふぅ…ふぅ…化けモンが!」室は立ち上がりながらそう吐きすてた。

 どうやら小神兵は崩れて活動停止したらしい。土上を掴んでいた手もボロボロと崩れ去った。この時丑光は、安心したのと同時に、室のマジギレモードに恐怖もしていた。

「助かりました室さん」

「あぁ姉ちゃん無事か、コイツはマジでいかれたやばさのチビだったな」

 戦闘が終わってのこのセリフのやり取りは、生き残った強者のみの間で行えるもので、丑光などはびびって腰が抜けていた。根岸も土上に助けられた時のまま、地面に両手と尻をつけたままの体勢であった。

 とりあえずの危機は回避したが、小神兵に対して何も出来なかった者達にとっては、チームで勝っても個人としては敗北を喫したことになる。根岸と丑光にとっては、助かったことの喜びよりも、敗北したことへのショックの方が大きかった。そしてそれは、地面に転がっているこしのりと、林の中に姿を消した堂島にも言えることだった。

 彼らが改めて知った恐怖の事実、それは「敵は強い」ということであった。 

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