第八十六話 シュガーハンドと金平糖
すっかり設定が忘れられつつあると思ったのでミニスカ侍達の持つ特殊能力を一覧にしました。
こしのり:風おこし。初期は指先から微風しか起こせなく、女子のスカートをめくることがやっと出来たくらいであった。愛の力によって風力が倍増するということが前のお話で明らかになった。
丑光:2秒間のみ壁を抜けられる。次の発動までに1分かかる。女子の入浴を覗くのに使えそうでやっぱり使えなかった能力。覗きは普通に犯罪です。
室:リアルな熊からデフォルメされたユルキャラ的な熊に変身できる。そして人の言葉も喋れるようになる。リアルの時の身長2m程で、変身後は150cmになる。彼は熊なので、ミニスカを穿かなくても普通に強いです。
根岸:何もない空間から紙飛行機を出し、名前を念じた相手の下へ飛ばすことが出来る。紙飛行機には25文字までならメッセージを書ける。飛ぶのがクソ遅い。念じた相手と同名の別人がいたら、間違ってそっちにいくこともあるという欠点がある。
堂島:このお話で能力が明らかになります。
田代:その内明らかになります。
「それはそれとしてなんだけどさ」丑光が話題を変えた。「堂島君の能力って一体どんななんだい?」
「確かに!堂島の能力はまだ知らないぜ。一体どんなしょうもない能力なんだよ」こしのりは、これまでの例から、たいしたことのない能力だと決め付けてそう言った。
「おい、見てもいないのに何でしょもうないって決めてるんだよ」堂島はそう答えた。
一同は、どうせ期待を裏切るのを分かりつつも、堂島の未知なる力に興味を抱いていた。
「よし、見せてやろう。ただ、外に出てもらうぜ。部屋の中で使うとやっかいだからな」
堂島がそう言うので全員こしのりの家の庭に出た。
「十一月ともなればすっかり緑も減ってきたね」外の景色を見て丑光が言った。
「そうやな。そろそろ冬眠の準備の時期なんだけど、このミニスカを穿いてからというもの、体が温かくて冬でも寒くないんだよな」室は、ミニスカを穿くことで快適に体温調節が出来ることを発見したようだ。
「え、これ防寒対策できるのか?でも夏はしっかり暑かったぜ。下半身は汗をかいて蒸れるからさ、夏は風呂でしっかり洗わないといけなかったぜ」こしのりは、蒸れる下半身事情を語った。
「あんたねぇ、隣に女子がいるのにそういうことを言わない」スミレに注意された。女子に気を使えないこしのりのこういう部分は直していかなければと思うが、私は彼のこういうところが決して嫌いではない。
「おいおい、お喋りはそこそこにして、この堂島のスーパーパワーにしっかり注目してくれよ」
「では拝見しようじゃないか」縁側に腰掛けた根岸がそう言った。
堂島は両手を空に向けて高く上げた。
「よ~し、いくぞ!」その声と共に堂島は両手を勢い良く下げた。その時、彼の手の中から白い粉が飛び散った。白い粉はあたりに広がり、一同の顔や体に少なからずかかった。
「わわっ!何だこの白いのは!」こしのりは驚いた。
「ひどいじゃないか堂島君、なんだいこれは、服にかかったじゃないか」そう言った丑光をはじめ、他の者も急に白い粉を被って驚いていた。
「んっ、コレは!」根岸はそう言って縁側から立ち上がった。「甘い……これはもしや……」飛び散った粉に驚いた根岸が口を開けた時にわずかばかりであるが、粉が口内に侵入していた。「間違いない!これは上白糖だ!」普段飲む紅茶に入れることから、砂糖に慣れ親しんでいる彼がはっきり言い切ったのだからそれで間違いない。
「ご名答!」そう言って堂島はまた両手を高く上げ、第二弾をぶちまけた。
「ごぼぇ!」こしのりと丑光は砂糖をモロに被って二人して奇声を上げた。室は大口を開けて受け止め「甘くておいしいわい」と言って飲んでいた。
第二段の砂糖をぺロリと舐めた根岸は「んっ!このザラっとした感じ……今度のはグラニュー糖!」と言った。
「またもご名答!そして最後はコレだ!」そう言って堂島は第三弾をぶちまけた。なんと、次に撒いたのは黒い粉だった。この場でソムリエ的に砂糖の種類を言い当てて来た根岸は、黒い粉は避けて舐めることはしなかった。そして彼はこう言う「ふふっ、この順番で来ると次は舐めずとも何か分かっている。こいつは見たままの黒砂糖だな」
「またまたご名答!どうだ、これが堂島の砂糖三弾活用だ!」
「ていうか、男の手から出た砂糖なんて舐めさすなよ」今になって根岸はツッコミを入れた。甘くておいしい砂糖だが、根岸のいう事も確かで、人の手から出てきたとなると口にするのはやや抵抗を感じないでもない。そう思ったのか、スミレは十分に距離をとって砂糖を避けていた。
「げほっ、そうか、菓子作りを得意とする堂島君ならではの甘々な能力だったんだね」
「待て丑光、まだそれだけじゃない」堂島はそう言うと、次は力をこめて両手をぎゅっと握った。そして次の瞬間、パッと開かれた彼の手の中から信じられない物が現れた。
「これは、金平糖だ!」堂島の手の中に急に現れた金平糖に驚きながらこしのりが言った。
「そしてだ、室、こいつを食ってみな」堂島は室に金平糖を勧めた。
「ふむふむ……甘くておいちい!」室は舌鼓を打っている。
「そうだ、甘くておいちいんだ」堂島はどや顔で言った。
「どうだ、これが俺の能力だ」
「これは使えないだろう……砂糖をぶちまけてもなぁ」こしのりが言った。
「おい考えてみろ。俺の家は製菓店を営んでいる。砂糖がないとやっていけない商売だ。砂糖ってのはすごく高いものではない。だが、いくら高くないと言ってもタダでない以上は出費は必ず出るわけだ。俺のこの力があれば、商売で使う砂糖の出費はタダに出来る。大量に砂糖を使う製菓店で、砂糖の出費がタダになれば、店はものすごく助かる。店をやることを長い目で見ると、いったいいくら金が浮くと思う?バカだってすごく金が浮くとわかるはずだ」
「確かに!」こしのりが言った。
「この能力を使えば我が家は経済的に助かる。そして金平糖を出すこの能力を、お楽しみ会とかでマジックとして披露すれば、皆にウケるとしか考えられない」堂島は自信満々でそう言った。
「わっ、この能力はとんでもないものだぞ!すごい効果が約束されているじゃないか!確かにお楽しみ会で見せたら絶対喜ばれるよ」丑光は絶賛している。
「もっとくれ~」室は砂糖のおかわりをねだっていた。
「しかしだな、砂糖をばら撒いたところで、あの巨神兵を倒すのには役立つとは思えない……」
「確かにそうね。それに、手から出た砂糖で作ったスイーツって分かるとお客さんはどう思うかしらね……」
騒ぐ連中からやや離れて、根岸とスミレは冷静に言葉のやり取りを交わしていた。