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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第八十五話 それは愛でした。

 引き続きミニスカ侍ミーティングの模様をお届けしよう。開かれるのがこれで第何回目になるのか思い出せないが、毎回だいだいは実のないことを喋って菓子を食っておしまいの話し合いなので回数とかはどうでもいいだろう。


「それで遂に六人目が見つかったんだよ。これでミニスカ侍は出揃ったわけさ」と丑光が言った。その後に不満そうにこう付け加えた「男だけになっちゃったけどさ……」

「で、六人目はどんな奴なんだ?」堂島が問う。

「田代さんと言って、この街ではカリスマホームレスで通っている」こしのりが答えた。

「また次も妙なのが仲間になったものだな」と根岸が言った。

「あぁ、そのおっさんなら知ってるで。たまに河原で魚を焼いて食ってるおっさんだな」室は田代を知っていた。

「しかし、根岸君の言うとおりで妙な集団になったものだよね。僕は良いとして、熊のおじさんに、お坊ちゃま、不良のボスのスイーツ職人にカリスマホームレス、それからこしのりだろ。これは見方によると色物集団に見えないこともないね」丑光が改めてメンバーを振り返った。

「おいおい、それからこしのりって何だよ。こしのりと言うおかしなジャンルがあるみたいじゃないか」自分の属性分けがストレートすぎたのが気になったこしのりがツッコミを入れた。

「それに自分は普通みたいに言ってるけど、丑光も普通に変人だからね」とスミレが言った。

「へへっ、そうだったね」頭をかきながら丑光が言った。


「まぁ皆には、また今度田代さんに会ってもらうとして、今日話しておきたいのは俺の風起こしの力がパワーアップしたということさ」

 こしのりはスミレのシャツに火が着いた時に、一瞬だけだが今ままでとは比べ物にならない程の突風を吹かせたことを皆に話した。

「へぇ~そうなんだ。それはすごい話だね。僕達の能力は、揃いも揃って使えそうでやっぱり使えないものばかりだ。それがレベルアップ可能となったら、これはすごいことだよ」丑光は役に立たない特殊能力に明るい希望を見た。

「そう言えば、あんたの能力は覗き見のために使うものだったわね。しかも覗いた後は相手から逃げられないっていうあんたらしい使えないものだったわよね」

「覗き見?何のことだ」堂島が丑光に問う。

「ああ、何でもないさ~。スミレちゃん酷いな~」

 皆さんはお忘れかもしれないが、以前丑光は自分に備わった2秒間のみ壁をすり抜けられる能力を使ってスミレの入浴シーンを覗こうとしたことがある。しかし壁の中を移動できるのは僅か2秒で、その内に向こう側へ抜けられなかったら壁の中で動けなくなり、次に2秒間の壁抜けを行えるまでは1分間のタイムラグが発生するのである。そんな訳でスミレを覗きに行った丑光は、覗きに失敗した上に、壁から顔のみを覗かせた状態で1分間動けなくなり、その間にスミレにボコボコにされたのであった。(かなり序盤の話数参照)

「こしのり、試しにパワーアップした風の力を見せてくれ」根岸が言った。

「よ~し、風よ~、吹け~!」こしのりは手をかざして風を吹かせた。しかし、吹いた風はいつものように微風で、こしのりが手を向けた先で寝転がっていた室の背中の毛をわずかになびかせただけだった。

「なんやこれ、弱っ」室にそう言われた。

「おかしいな~確かにあの時は出来たんだ」

「確かにいつものこしのりが吹かすクソ弱い風ごときでは、マッチの先に着いた火だって吹き消すのは無理だろう」と根岸が言った。

「クソとか言うなや!」とこしのりはつっこんだ。

「事件当時のこしのりとスミレとの間に開いた距離を考えると、これの九倍くらいの風力がないとスミレの服に着いた火は消せなかったはずだ」頭脳派の根岸はこのように分析した。これを聞いたこしのりは「だったらそこは十倍でいいじゃん」と思ったが口にはしなかった。

「スミレちゃんが火達磨になるかもしれないという窮地に陥ったあの時に、こしのりはバカ力を出すことが出来た。あれはスミレちゃんを本気で助けたいと思ったからこそ起こせたパワーだったんだ。つまり、コレは愛の力さ、スミレちゃんを助けたいというこしのりの愛が風の力を増幅させたんだ。間違いない」丑光博士がそう言うのだからどうやらこの考えで間違いはないようである。

「そうか、愛か……」堂島が言った。

「愛……やな」室も言った。

「ふんっ、愛か、それも悪くない」根岸も言った。

「愛……でした」何故か敬語で丑光が言った。

「愛……そうか俺の愛か、俺は愛の人だったんだな」こしのりは人生15年目にして己が愛の人であったと悟った。

「……」スミレはなんだか気恥ずかしい想いで黙ったいた。そして「こいつら、何を恥ずかしいことを言ってるんだ。それに何で全員納得し合ってるんだ」と想った。

 

 スミレはちょっと恥ずかしかったようだが、人を愛することは決して恥ずかしいことではない。彼女もそれは分かっていたが、人がそれを口にするのを聞くのは慣れないし、しかも自分に向けられたことだとするとどうしても恥ずかしく想った。

 室はおじさんだが後のメンバーは若い。こいつら、青春している。

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