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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第八十話 キャッチー・イン・ザ・オニオン

「こしのり、しっかり探しなさい」

「今やってるよ!」

 こしのりは放火犯を捕まえるために玉葱を2玉投げた。一つは茂みの中へ沈み、もう一つは人様の家の窓ガラスをぶち割った。スミレの監督の下、こしのりは茂みの中の玉葱を探している。もうお気づきの方もいるかもしれなが、こしのりはノーコンだったのでわざわざ放火犯目掛けて玉葱を投げる必要はなかった。スミレ一人で仕事は完了していのだ。

「貴重な家の食材なんだからちゃんと見つけてよね」

「は~い」

 スミレの横にはこしのりが玉葱を投げこんだ家の住人の谷口さんが立っていた。谷口は40代後半くらいの見かけの独身男性で、現在は売れない漫画家として細々と暮らしている。窓ガラスを割られたことに怒って外に出てきた彼は、道に倒れた放火犯、ミニスカを穿いた男子、右肩部分が燃えた女子という普通の状態ではない上に全く知らない三人を目にして、怒りより謎が膨らんだ。

「放火犯退治は良いよ。立派だよ。でもその犠牲で窓ガラスを割られちゃ困るよ」

「すみませんコイツが」スミレは代わりに謝った。

 谷口さんは放火犯を連れていってもらうために警察を呼んだ。そして二人が話している間にも警察が到着した。

「放火犯はどこですか!」来たのは新米の山岡であった。火事の現場から遠くないここに回されたのである。

「あれです」スミレが指差した。

「すぐに逮捕だ!」山岡と共に駆けつけた利根が指示した。


「無事犯人逮捕だ。お手柄ですね」山岡が谷口さんに向けて言った。

「いやいや私じゃないよ。この子達だよ」

「え?君が!」山岡はスミレを見て驚いて言う。

「ええ、それから一応あいつも」スミレは茂みを指差す。

「え、どこ……わっ、君はそこで何をしてるんだ」

「俺の報酬を探してるんだよ」こしのりは買い物のお手伝いのお駄賃として、近い内にオニオンフライとなって自分に食べられる運命の玉葱をさがしていた。

「で、もう一人は誰?」山岡がこしのりの他に茂みの中にいたもう一人の人物について尋ねた。

「僕はこの近所に住んでいる者で、放火犯を捕まえた二人の友人ですよ。玉葱探しに駆り出されてここにいるんです。事件には関与していないのでお構いなく」もう一人は丑光であった。丑光の家から現場がそう遠くなかったのでこしのりが電話で呼び出して玉葱探しを手伝わせていたのだ。

「……そうかい、事件の詳しいことを聞かないといけないんだ。君達、署まで来てもらえないか」

「今日は見たいテレビがあるんだ。明日にしてくれよ。それより今は玉葱だ」茂みの中からこしのりの声が返ってきた。

「ちょっと待ってよお巡りさん、それよりも家の窓ガラスだよ。今晩は冷えるよ~。割ったのはその子なんだから先に弁償してもらわないと」

「お巡りさん、放火犯に払わせてよ。捕まえる過程でそうなったんだから」また茂みの中からこしのりの声がした。

「はぁ……」山岡は困っていた。「利根さんどうしましょうかコレ」山岡は先輩に相談した。

「そうだなぁ……どうなるんだろうなコレ。今日は色々あって正直俺も疲れているよ」利根もスタミナが落ちる年頃となっていた。

「確かにお嬢ちゃん達は英雄的な行為をしたよ。だから私も鬼みたいなことは言わない。何も全額払えとは言わないよ」

「え!じゃあ半額とか?」茂みからこしのりが応えた。

「いや、八割だ。修理代の内二割はこっちで持つから」

「どんだけケチなんだよ~」こしのりのがっかりな一声が茂みから帰って来た。そして谷口は意外と思い切りが良くない。何せ彼も生活が楽ではない。

「それかこっちのお嬢さんか次の日曜日に私とデートするかだ。いい取材が出来そうだ。それなら半額にしよう」

「え!そこはタダにしろや!まぁでもそっちでいいや。それで頼む」こしのりは弁償半額コースで契約を進めた。

「ちょっと勝手に話を進めないでよ!」交渉材料にされたスミレは黙っていない。

「あのね~一応警察もいる前でそんな商談を進めないでくれるかい」利根が言う。

「こしのり、君って奴はまた面倒に巻き込まれているね。放火犯を捕まえてお手柄と想ったら、次は人の家のガラスを割るなんてね~」

「うるさないな丑光、早く玉葱を見つけろよ」二人はまだ茂みの中をガサガサやっていた。

 こしのりは想った。人の家の買い物を手伝って、放火犯をお縄にかける活躍をしたのにこの扱いは何だ、と。こしのりがそんなことを考えていると携帯にメールが入った。奴からだ。


(今いる場所から左に三歩進んだら その真下に探し物があるよ  あなたのトレジャーハンター巨神兵)


「ふむふむ……あ!あったぞい!」巨神兵の指示通りの位置に玉葱はあった。

「やれやれ、田代さんもそうだったけど、今日は変り者によく会うな」と山岡が言った。

「ところで君達どうしてスカートなんて穿いてるの?」この場にいる紅一点のスミレがジーパンを穿いているのに、その友人の二人の男子はミニスカを、それもズボンの上から穿いている。いくらファッションに疎いとはいえ、まさかこれが昨今の男子の流行とは思えなかった利根が尋ねた。

「え、今それ?」こしのりが今更の説明は面倒だと言わんばかりに応えた。そう、何も知らない彼らが今知りたいのはそれなのである。

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