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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第六十八話 世界を救う前にまずアイスを一口

 六十話を越えたところで私は考えた。

 私は、漱石や実篤のように深いメッセージ性を含んだ観念的な作品に感銘を受け、ユーミンや長渕やミスチルの歌う詞の世界観に心地良く酔いしれ、仮面ライダーやウルトラマンのような皆に好かれるヒーローに憧れ、カードキャプターさくらやセーラー戦士(特にマーキュリー)のような可愛くも正義のために立ち上がる素敵ヒロインに恋し、デ・ジ・キャラットやギャラクシーエンジェルのような可愛く萌えるヒロインを愛でた。といった具合に様々な作品から受けた感動を盛り込んだ最高の話を書きたかったのだ。

 しかし、なんだかそれからズレた出来になっている気がしてならない。そこらへんを反省して物語の新展開をどう繰り広げるか、それについては物語の登場人物と同様に私も悩み考えているのだ。

 この話数では、特に何も起こらないので別に読まなくても大丈夫です。

 今は十一月、言い換えると世界の終わりまであと二ヵ月を切ったところである。

 ミニスカ侍四人と一匹は例によって例のごとく、こしのりの部屋に集まっていた。


 パタン。根岸が本を閉じた。そして口を開く「なぁもう十一月だ。そろそろマジで巨神兵のことを何とかしないといけないだろう」

「だからそれを話合ってのるに、君ってやつはまた例によって例のごとく文学の世界に気持ち良くダイブして、さっきから声をかけても一向に反応しないじゃないか」と丑光が言った。

「そうか、すまなかったな。潜水艦で海に潜ったは良いが、海の氷に挟まれて浮上できないっていうハラハラな展開だったもんでこの本に夢中になっていたようだ」

「根岸は本当に本の虫だな、本なんて何がおもろいんかワイににはわからんで」熊なら妥当とも言えよう意見を発するのは室である。

「なぁ皆、スカートはあと一枚残っているわけだが、こうなったらもう五人で乗り込まないか」こしのりが提案した。

「頼もしい五人目が加わったし、案外いけるかもな」堂島が答えた。


「五人目ねぇ…はぁ~ どうして五人もいて女子がゼロなんだろうか。戦隊ヒーローだったら五人いれば一人は女子でしょ。シリーズによっては二人いるパターンもあったね」女子メンバー不在に未練がある丑光が言う。

「まぁ、それは言うなよ丑光。ささっ、お前の好きな粟おこしを食いな。茶もあるぜ。ばあちゃんが美味い茶を仕入れたって言うからズズ~と行きな」

「ああ~こいつはうまいな~歯ごたえがええなぁ」室が答える。最近の彼は人間と触れ合ったことで、肉食寄りの食生活がかなり雑食寄りになった。

「はぁ~美味い。しかし、せっかくこんな数奇な運命が訪れたにしては、なんか地味なんだよね~。このスカートだってなんか色も柄も地味だし、僕の壁抜け能力も使えないし、もっと振り切ったファンタジー展開が良かったよね。エルフとかウィッチとかを引き連れて地下ダンジョンに潜りたいな~」丑光はここへ来てとんでもない愚痴を吐いた。吐いた愚痴と入れ替わるようにして口には粟おこしが運ばれた。

「確かにな~。俺の能力は微風起こし。前の喧嘩の時に全然役に立たなかったな~。あと地下ダンジョンには潜りたいな~」こしのりも暢気に答えた。

「おい根岸、こいつらはいつもこうなのか?」堂島が言う。

「……」根岸はさっきの間にまた本を読み始めて返事をしない。

「また読んでやがる。やれやれ、ポイズンマムシシティは一体どうなることやら」


 スパン!

 五人がだらだらしているその時、大きな音を立てて障子が開いた。スミレ氏の登場である。

「あんたら、いつあの巨神兵を倒しに行くのよ!」

「ああ、そう言えばさっきそれを話していたんだ。それがいつしか地下ダンジョンに潜るの潜らないのって話になって……」

「はぁ?こしのりは3Dダンジョンゲームをさせたら画面に酔うわ、バカだから道が覚えられないわで途中で投げたじゃない」スミレはたくさんゲームをする派ではないが、某神様が転生するゲームシリーズが昔から好きなのであった。

「はぁ?うるさいよ。ゲームじゃないよ。マジの話をしてんのよ」

「はぁ~、で、第三回ミニスカ侍ミーティングで話はどうまとまったの?」

「これからだよ。先生か母ちゃんかよお前は。いちいち様子見に来なくてもいいよ」

「アイス持ってても?」彼女が持つビニール袋にはアイスが入っていた。

「スミレ氏、ここに座布団があるよ。まぁ座りたまえ」アイスを見てこしのりは態度を改めた。


「はぁ…堂島君」

「何だ丑光」

「ことによると、僕らの街は助からないかもね」

「弱気なこと言ってんじゃねぇ、と叱り飛ばしたいところだが、奇遇にも俺もそれを想ったところだ」

「まぁまぁ、アイス食ってから救う手立てを考えりゃええやん。未来は明るいで」そう言って室がアイスの入った袋に手を伸ばした。

「ところであの熊は一体いくつなんだ。いちいち言動がおっさん臭い」

「さぁね。とにかく彼はおじさんさ。まぁ彼の言うとおり、世界を救うにもアイスを食ってからだね」


「おい、待てお前ら、その大福餅みたいなアイスは俺が頂こう」本を閉じて根岸が言う。

「彼のああいうところは抜け目がないよね~」


 こしのりは「おいスミレ、皆一緒のじゃないと喧嘩になるじゃないか」と言った。

「じゃあ、私が決めるからあんたらは文句言わずに食べる。いいわね」

 

 こんな具合で第三回ミニスカ侍ミーティングは特に何も決まらずに終わった。

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