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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第五十五話 ミニスカランナウェイ~大きくなってもやっぱりカチカチ山の兎は許せない~

「わぁ、すごいもんだね~。あんなに動き回りながら戦闘を繰り広げているいるよ。まるでどこかの路上でガチバトルする格闘ゲームみたいじゃないか」こしのりと堂島が繰り広げるバトルを見て丑光が言う。

「あいつに感謝しな。ボスの敵意はどっちかと言うとお前に向いていた。お前のためによりヤバイ方をあいつは受け持ったワケだ」内が言った。

「すると、残った君の方が堂島君よりは安心できる人物ってわけだ」

「まぁな。しかし俺は、例え相手が兎のように弱っちそうな奴であっても全力で狩ることを心情としている。昔ばあちゃんに聞かせてもらった狸を騙して川に沈めた兎の話を聞いて以来、そうして生きることにしたのさ」

「なるほど、どうやら君は不良にしてはなかなか賢い人のようだね。君の目には僕が兎に見えてるって訳だ。だが、どうだろうか。本当に兎なんかに全力を出していいのかい?それは無駄な労力ではなかろうか。兎を相手取るなら兎用に優しく拳を握ればいいんじゃないかな。だってホラ、その次にはライオンが控えているかもしれないじゃないか。というかすぐそこに熊が来ているしね」この時、丑光の頭にあった考えはこうである。

(ヤバイヤバイ、こんなにデカい筋肉達磨の手にかかれば、僕のようなか弱い青少年なんかは即ミンチだ。でも、頭まで筋肉の不良と違って僕には知恵があるじゃないか。弁論大会予選敗退の実力を持つこの弁舌で何とか彼の気を引いて、拳を収めてもらおう。時間を引っ張れば外にいる室とかこしのりが何とかしてくれるかもしれない)彼ははなから力では勝てないと踏んでせこい手を打っていたのである。

「なるほど、お前は紛うことなき兎だ。お前こそがべらべら喋って狸を欺こうとする狡猾な悪兎ってわけだ。ふふ、やはり全力だ!お前に耳を貸せば狸のように痛い目にあうかもしれん」

「なにっ!さすがお祖母ちゃんっ子、賢い!」


 意外に論理思考だった内は丑光に襲い掛かった。

「うわっ!」両手を広げて襲い掛かる内はそれまでの倍くらいに大きく見えた。こうなれば丑光に残された策は逃げの一手のみである。

「待てこの野郎!」内が追いかける。

「この状況で待つ奴は頭がどうかしている」確かにその通りと頷ける一言を発して丑光は逃げ回った。


「ふふっ、あいつがミンチになるのも時間の問題だな」堂島が言う。

「何だ、ミンチって……・」こしのりが答えた。

 堂島の激しい蹴り技が炸裂するのをこしのりは何とか凌いでいた。彼は暴力を好む性質ではないので、なるべく平和的に解決したかったが、この堂島を相手にしてそんな温いことは考えていられない。本気で応戦しないとこちらがやられる。しかし、さすがに不良200人の頂点に君臨するボスだけあって一筋縄で行く相手ではない。堂島に打ち込こもうにも隙が見えない。

「どうした。避けるばかりか」

「くそっ」

 先に明かした通り、こしのりは視力が良い。それは戦闘にも役立った。最初は速くて見えなかった堂島の蹴りだが、動体視力も良いこしのりの目にはそれが徐々に慣れてきた。

「さすがに喧嘩慣れした不良だな。しかしなぜ手を使わない」堂島はこれまで足でしか攻撃していない。

「使う必要がないからさ」そう言って堂島は次の一撃を放った。

 壁を背にしたこしのりがそれを避けると、堂島の蹴りは工場の壁を破って貫いた。ガタがきた廃工場の壁とはいえ、蹴りでそれを貫くのは常人の技ではない。

「コイツは避難だ」こしのりは走って堂島から距離を取った。

「待て、お前も逃げるか」堂島がそれを追う。


「二人とも逃げてるな」素麺を啜りながら根岸が言う。

「コラ~二人とも闘え~」スミレが喝を入れた。

「錦糸卵が焼けたぜ」山口は鮮やかな手つきを持ってして、素人なら無様に焦がしてしまいがちなあの薄い卵焼きを見事に焼いてみせた。その鮮やかさがいか程の物であるか皆さんにも是非見せたい所だが、それは叶わない。

「わぁすごいね。こんなに綺麗に焼けるんだ~」

「ああ、見事なもんだ。お前は腕の良いシェフなんだな」

 山口は不良にしては優しい料理を作りすぎる。彼の拳は人を痛めつめる拳骨を握るのではなく、人を幸福にさせる料理を作るためにこそ振るうべきだとスミレも根岸も思った。そして二人は、錦糸卵を浮かべて再び素麺を啜ったのである。

 食いっぷりの良い二人を見て山口は満足そうであった。

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