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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第五十話 当たらない八卦なら用はない

 第五十話目にして、我らがミニスカ侍の三人はうらぶれた路地裏の占い屋に来ていた。しかもお昼の学校をサボってのことである。


「どうしようか。せっかくだから何か占ってもらおうか」暢気な調子で丑光が言う。彼は趣味で魔法陣を描くような中二臭いところがあるので、こっくりさんとか占いとかその手のことには結構興味があった。

「ちょっとあんたら、こっちは長年『カリスマ』の看板を背負っているプロ中のプロなんだよ。小僧が軽い気持ちで来ても、御代の方はまあまあ取るよ」

 

 その時、こしのりの携帯ガラケーにメールが入った。

「あっ、巨神兵からだ」

 以下、メール内容を記載する。

(せっかくだから探し人の居場所でも占ってもらえば?   あなたの巨神兵ここにあり)


 こしのりは後ろを振り返り、ポイズンマムシシティの中央に立つ巨人の像を見上げた。路地裏からでも姿を確認することが出来た。常人を遥かに越える能力を有する巨神兵は、いつだって彼らの行動を把握済みなのである。

「占いってそういうことも分かったりするのか……」

「さぁ、どうするんだい。当たるも八卦、当たらぬも八卦。ドドンと占ってしんぜよう」

 こしのりはパカッっと音をさせてガラケーを折りたたみ、ミニスカの下に穿いたズボン右ポケットにしまった。寂しいことにスマホの流行った昨今では、この気持ち良いパカッの音が街から消えつつある。

 そしてこしのりは言う「へっ、当たらねぇ八卦に用はねぇ」

「言うね小僧。この『毒蝮の母』の名を取った私を目の前にして……」

 こしのりは幽霊とか超能力とかその他オカルティックなあれこれを信じない性質の人間である。なので、ノストラダムスの大予言とか2000年問題とかに対しても「あんなのは嘘っぱち」と最初から決めこんでかかって全く取り乱さなかったこの私と同じタイプの人間であると言えよう。


「よ~し、どうやら私の占いの腕を信じていない小僧に、ちょっとだけ私の力を見せてやろうじゃないか」カリスマ占い師スミレはちょっと本気になっている。

 占い師スミレは水晶玉に両手を当てて気を集中した。

「見える、見える。何から何までスッケスケに見えるよ~」

 根岸は想った。なんて怪しげなババアなんだと。


「よし、まずあんただよ」婆さんは丑光のことを言っている。

「あんたには兄が一人いるね。そしてその兄はつい最近、なかなか怪しからんおっぱいをした女と婚約しているね」

「何だって!馬男兄さんとカスミ姉さんのことを言ってる!」彼には馬男という兄がいる。そして無事巨神兵から世界を救い来年、つまり2018年正月を迎えたならばその時に正式に丑光の義理の姉となるのがカスミである。

「おまけにあんたは隙あらばその兄の婚約者のおっぱいをチラチラと」

「ああ!!やめろ!わかったよ。スミレさんの占いの腕前は本物だ」まだ占いの途中だが、丑光が割って入った。


「次にあんただ」根岸を指差して婆さんが言った。

「あんたは、ちょっと前まで御天道様と没交渉な生活を送っていたね。そしてあんたは自分の身近にいる……なんと言うか、こうヒラヒラした洋服を着たこれまた怪しからんおっぱいをした女のことを憎からず思って」

「ああ!やめろ!わかった、アンタは本物だよ」今度もまだ占いの途中だが、根岸が妨害に走った。


「そしてとどめはあんただよ」婆さんは顎をクイっとしてこしのりを指した。

「あんたは、何度となく親から受け取った金を不正に自分の懐に溜め込んだ過去があるね」

「うっ、なぜそれを」これにはこしのりもビックリ。彼は親から自転車のパンク修理代としてお金をもらっておいて、自転車を修理屋に持ち込まず、自らの手で修理し、浮いたお金を貯金箱に溜め込んだという過去を持つが、今では親にすっかりバレているという話をいつかしたと思う。

「まだあるよ。あんたは最近、仲間達から距離を感じて寂しい思いをしているね。そう、それもあんたのさっき閉まった携帯電話関係の~」

「ああ!やめろ!わかったわかった。認めるぜ、今ここにいるのはカリスマ占い師だ」

「こしのり、君はそんなにLINEグループに入れないのが寂しかったのかい」丑光がちょっと哀れむように友人を見た。

「とっととスマホにしてしまえばいいものを」根岸が言う。

「ふん、うるさい。俺はガラケーのパカパカ出来るのを誇りに思っているのさ」


「皆、スミレちゃん探しはハズレたったけど、このスミレさんの腕前は本物だよ。スミレちゃんの居場所を占ってもらおう」恥ずかしい想いをする前にさっさとそうすればいいものを、随分時間をかけて丑光が提案した。三人はそうしようと決めた。

「婆さん頼む。仲間が悪党につかまっているんだ。婆さんと同じスミレって名前なんだ。早く助けにいかなきゃ女の子の大事なものを失うかもしれない」とこしのりが言った。

「そりゃまた危ない話だね。仕方無い。今回だけは私と同じ名前のその子に免じてタダにしてあげるよ」口はちょっとアレだが、人が良く気前が良いのが毒蝮の母の良いところである。例えカリスマの看板があっても人相手の商売を長く続けるにはこういう心持ちも大事である。


「見える見えるよ~。今度こそあんた達の真の探し人が見える。大丈夫、その子はまだ何も失っちゃいないよ」

「そうか、で、スミレちゃんはどこにいるの?」


「南……南の方じゃ。ああ、見えた見えた。よし、地図を描くからそこへ行くんじゃ。大丈夫、そう遠くはない」

 これでひとまず安心だが、慎重な根岸はこう口を挟んだ「婆さん、その地図なんだが、わかりやすく丁寧に描いてくれ。子供でもわかるようにだ」

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