第四十七話 オレンジ100%
急に登場した新キャラ『代返の松島』にお昼の授業のことを全て任せ、こしのり、丑光、根岸の三人はチンピラから受け取った地図の場所を目指していた。
「はぁはぁ、飯を食ったばかりで動くのはちょっときついな……」こしのりが言った。若さの盛りである齢15の少年でも食後すぐに動くのはさすがにきついようだ。というか彼は元々体力がある方ではない。
「本当だね。脇腹が痛いよ。スミレちゃんもこんな昼時に捕まらなくても……」今の所作品内で最も愚痴多き人物の丑光が言った。
「いや……スミレを捕まえるのに手こずって連絡が昼になっただけで、実際のところ捕まったのは朝じゃないのか……」息を切らして喋る三人目の少年は根岸である。彼はつい最近までヒッキー(引きこもり)を決め込んでいたので当然体が鈍っている。
「あっ、そうか……だったらスミレちゃんはきっとお腹を空かしているね。女の子の中じゃ良く食べる方だからね。どうだろうか、コンビニでパンくらい買っていってあげれば。ついでに涼みたい。お昼に動くと暑いよ」
「言えてるな。丁度あそこにコンビニが見える。ちょっとだけ、マジでちょっとだけ休もう」こしのりが言う。
か弱き女子が凶悪なチーマー連中に捕らわれているこの非常時にも拘わらず、体力のないミニスカ侍達は寄り道をしてしまった。ああミニスカ侍達よ、なんと情けないことだ。
「いらっしゃいませ」地元学生に密かに人気の可愛いバイトのお姉さん泉さんが元気良く言った。
コンビニの中はご機嫌にクーラーが効ていた。十月になってもお昼はまだまだ暑い。
「生き返るね~死んだことないけど」丑光は小学生の頃から言い続けているギャグを口にした。
「しまったな。飲み物も持たずに来たから喉が渇いて仕方無い。貴重な金を使いたくないが、ここで買っておかないと向こうに着くまで持たないぜ。ここの会計はあとでスミレに出してもらうからな」了見の狭いことを口にするのは我らがこしのりである。
「お前はまた何と言うか、ケチで小さい奴だな。おい、支払いはこっちで一緒にしてやるよ」クラス一ブルジョアの根岸少年はタップリな金額がチャージされたnonocoカードを取り出した。
「へっ、俺は少ない小遣いしか持っていないが、だからといってお坊ちゃまのお恵みを受けるなんてのはごめんだぜ」
「こしのり、それじゃまるっきりプライドだけ高い悪党の台詞じゃないか」丑光がつっこむ。
「へへっ、時代劇の再放送に影響されてな。冗談さ。ゴチになりま~す」
三人それぞれのドリンクとスミレ用のドリンクとパンの支払いを根岸が済ました。こしのりも丑光もそして私までもが、こういった時にボンボンの倅の金銭的優位性には圧倒されずにはいられない。
「ぷは~。こいつは美味いジュースだぜ」
「ふふっ、知ってるかいこしのり、正確には果汁100%の飲み物をジュースと言って、君が飲んでるその冷やしあめなんかはドリンクって言うんだぜ」
「はっ?何でもいいんだよ。お茶と水以外はジュースって呼ぶんだよ俺は」
「僕の飲んでいる正真正銘のジュースは実に美味いよ」丑光が飲んでいるのは果汁100パーセントのオレンジジュースである。
「お前らな、昼休みのテンションのままに和むなよ。今は緊急事態だぞ」とか言いながらジンジャエールを優雅に飲み下す根岸少年であった。
「お坊ちゃんてのはまたおしゃれな物を飲むんだな。俺ジンジャエールって苦手なんだよ。なんかスッってくるだろ。スッって」
「そうかな、僕は好きだよ。知ってるかい、ジンジャーって生姜のことなんだよ」
「マジか、生姜を飲んでるのか。いやいや、不思議な飲み物だぜ」
丑光のうんちくが冴える中、二人の歓談は止まらない。
「おい、お前ら。そうやって何時までも中身のない会話をだらだらと続けるのが駄目だと先日のミーティングでスミレに指摘されたばかりだろうが」根岸が口を挟んだ。
「そうだったね。お喋りが過ぎたよ。さぁ地図の場所に行かないと」
その時、バイトの泉さんが相談中の三人に声をかけた「あの、お客様」
「はい、何か?」丑光が答える。
「あの、すみませんけど、印刷機の前なのでお飲み物はちょっと……というか店内での飲食はお控えください」
三人揃って「はぁ……」




