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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第三十九話 別腹の中でも、また別腹に分かれていたりする複雑な人のお腹の事情

 時刻は16時半を回ったところである。

 港での闘いを無事終え、図らずも得た戦利品の煎餅をバリバリやりながらこしのり、丑光、スミレの三人はご機嫌に帰路に就いていた。男二人と女一人の三人で並んで歩いているが、三人ともスカートの丈をヒラヒラさせて歩く姿は不思議な画であった。


「おいしいねコレ」モグモグしながら感想を言ったのはスミレである。

「勝手に角材を持って行って普通なら怒られるところを、どういうワケかこんな美味い土産をもらえた。怪我の功名ってやつだな」喧嘩の武器に破壊力抜群の角材をチョイスしたこしのりがご機嫌に言った。

「しかし君達ときたら揃ってあんな物騒な物を用意するんだから、紳士の僕からすると気が知れないよ。しかしこの煎餅はご機嫌な味と噛み応えだね」似非えせ紳士を気取るのは丑光である。

「どこにこんなスカートを穿いた紳士がいるってんだ。いい加減言うんじゃないよ」こしのりはそう返した。


「で、あんた達は何がどうなって無事に済んだのよ」

「スミレちゃんの気になるそこのところは僕が語ろう。僕らに向かって飛び掛ってくるお馬鹿な有象無象を僕がバッタバッタと投げ飛ばして万事解決さ」丑光は息をするように嘘をつく。

「ホラ吹いてんじゃねぇよ。お前は物陰に隠れて助けを呼んだだけだろうが」

「そうそう、僕のビューティフルシャウトによって騒ぎは収まったんだ。まさに鶴の一声ってね」

「あの野太い叫びが鶴なもんかよ。バカ言ってらぁ」


「あんたらちゃんと話す気あるの?こっちはあんたらを追って来たために部活をサボることになったんだからね」怒りながらそう言ったスミレの手には力が入り、手の中の硬い煎餅もパリッっと音を立てて割れてしまった。


「……ああ、そうだね。それは悪いことをしたよ。あと、ありがとう」調子に乗りすぎたと反省して丑光が言った。そして言葉を続ける。

「僕達が敵の数が多いのに苦戦していたところに根岸君達が通りかかって、この街随一の戦闘力を誇るメイドの土上どのうえさんが一気に敵五人を吹っ飛ばして、それから彼女に恐れをなした賊共は逃げ帰ったというわけさ」


「じゃあ、あんた達だけだったら負けてたのね。ほんと無茶してバカなんだから」

「うるさいやい。相手はザコだったけど数が多かっただけなんだ。単体ならこっちが勝ってたんだよ。ていうかお前何個食ってんだよ。俺のが無くなるだろうが」

 こしのりはちょっとおこであった。そしてスミレは港まで駆けたことと二人を心配したことの緊張から解放されたことでそれまで麻痺していた空腹感が一気にこみ上げるのを感じずにはいられなかったのである。

「一体誰のせいでこんなにお腹の減ることになったと思ってるのよ」

 先の事情を差し引いても彼女は成長著しい食べ盛りの時期であったのだ。


「そうだ、せっかくここまで来たからプリンの美味しい店に行こう」

 学校から港へ行く道は、彼らが学校から家に帰る道とは全く逆方向である。それに加えて普段からもこっちの方に来る用事はほとんどない。そういう訳なのでせっかくの機会にのあたりにある有名なスイーツ店に寄ろう。そうスミレは考えたのだ。大抵の女子はスイーツに目がない。 

「そいつはいいね!煎餅もいいけど洋菓子ってのは元々別腹のお菓子の中でもまた別腹だからね」

 丑光も大抵の女子の例に漏れずスイーツ大好き少年であった。そして彼のお腹の作りはどうやら複雑なようだ。 

「おいおいスミレ、そんなにお菓子ばっかいくと太るぜ」こしのりは女子に対しては特に失礼にあたる一言を発した。

「これのどこが太ってるって言うのよ」

 極めて健康的なプロポーションを持つことを自ら認めているスミレは自信を持ってそう返した。なんせ彼女は日々たっぷり運動をして汗を流している。


「ふむふむ、確かに問題ないスタイルだと思うね僕は。バリバリモグモグ……・」

 煎餅を食いながらスカートから伸びるスミレの足を屈んでチェックして丑光が言った。

「おい、蹴るぞ」

 チェックの結果には満足だが、遠慮なしにチェックをしてくる丑光にスミレは少々の怒りを覚えた。


 それから五分程歩いてお目当てのスイーツ店に着いた。

「あ、ここよ」

「店に入る前から良い匂いじゃないか。根岸君の家でケーキを食べてから洋菓子の良さを舌が覚えてしまってね。それからは食べたくて仕方なかったんだよね」

「確かに美味そう~。ちょいと腹も減ったな」

 三人とも実に楽しみに店何に入っていった。

 店先の看板には『スイーツ堂島』という店名が書かれていた。


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