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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第三十七話 危ない時は素直に大人の助けを借りよう

「え~なになに~ 高校生に絡まれてるの?」

 ジュースを買ってから合流した四人目のチーマーが言った。

「五人相手に一人でって……ああもう一人いたな」

 五人目が言った。


「ああ、僕が数えられているよ~」

 丑光はすっかりビビッている。


「よ~し、こっちは三人までならオッケーなんだ。そっちの選抜メンバー三人と俺とでやるのがいいだろう」

 

 コレに一人目のチーマーが返す。

「何を勝手にルール指定してんだよ。提案をのまずにこっちが全員でかかるってこともありえるぜ」


「ふん、そっちが数の暴力に訴えるならこっちはまさに暴力に暴力を重ねての応戦を行う」

「はぁ?何を言ってるんだお前は」二人目のチーマーが返した。


「つまり、そっちが五人でくるならおれはコイツを使うってわけだ」

 そう言ってこしのりは丑光が隠れている物陰に置いてあった質の良い角材を取り出した。


「握り具合も丁度良いぜ。この握り心地ばっちりの得物で四人分の戦力差がカバーされる。どうだ、これなら五分五分だろう」

 十分な殺傷力を持つ硬い得物を持ってこしのりは危ない提案をした。


「ちょっと待て」

 これに対して三人目のチーマーがもうジュースをグビグビやりながら割って入った。


「俺達は確かに喧嘩に多少の暴力を用いることもしてきた。でもそれはあくまで喧嘩であって、人殺しではない。そこにきてお前が手に持つそれは何だ。危ないじゃないか、それは人を殺すには十分な武器だぜ」


「……」

 まさかチーマー風情に喧嘩のマナーを教わるとは思わなかったこしのりは唖然として「確かに」とだけ思った。そしてこしのりは手にした武器を地面に置いた。


「じゃあ、そっちから三人出すんだな」こしのりが言った。

「いや、武器の危なさを説いただけでそっちのルールのことは俺は知らん」


 一人目のチンピラが号令をかける。

「というわけで総力戦だ。丸腰の坊主をやっちまおうぜ」


「わっ、汚いぞお前ら!」


 こしのり目掛けて四人が飛び掛った。喧嘩に武器を持ち込む危険性を説いた一人のみはまだジュースを飲んでいて参加しなかった。


「ああ~こしのりがやられてしまう」丑光は怯えながら見ているのみであった。


 四人相手ではさすがに勝つことは出来ないが「三人までならいける」と言っっただけにこしのりの方もある程度は攻撃を見切って受身を取り、隙あらば反撃も加える。しかし人数の分だけに向こうの打ってくるのが多すぎて全ては防ぎきれない。


 よく持ちこたえているが、これではじり貧状態のままにこしのりが倒れるのも時間の問題である。


「くそ、風をくらえ!」

 こしのりはミニスカを穿くことで得た特殊能力の指先から風を出す力を使ったが、彼の起こす風はあくまで微風であって相手を吹っ飛ばすには力足りず精々相手の前髪がふわっとなるくらいが関の山であった。


「なんだコイツ。よわっちい風を吹かせてやがる。手品のつもりかよ」

「いいからやっちまおうぜ」

「ゲポッ さぁてジュースも飲み終わったし俺も加わるかな」


 四人でギリギリのところを五人目が加われば忽ちこしのりは倒されてしまう。これは物語始まって以来一番のピンチだ。


「誰か~大人の人~誰か~出来れば大人の男の人~」

 丑光は喉の構造上遠くまでよく通る声で助けを呼んだ。しかし、彼が情けなく叫ぶこれが功を奏することとなる。


 こしのりとチーマー五人がもみくちゃになることで舞った砂埃の中にすごい速さで黒い影が飛びこんだと思った次の瞬間、五人のチーマーはそれぞれ別方向に飛び散った。


「何、どうしたの」攻撃が急に止んだ事態に驚いてこしのりが言った。さっきまで自分に向かって来ていた敵達は皆、こしのりから五メートル程離れた所で倒れていた。そしてこしのりの目の前にはこしのりに背を向けてある人物が立っていた。


「お怪我はございませんかこしのり様」

「あんたは、土上さん!」

 チーマーを吹っ飛ばした黒い影の正体は土上であった。


「痛ぇ……何が起きた?」一人目のチーマーが言った。

「おい、メイドがいるぜ」二人目が言った。

「あのまぶいメイドが俺たちを吹っ飛ばしたのか」三人目が言った。

「信じられねぇ」四人目が言った。

「ああ、あのおっぱいのデカさは信じられねぇな」五人目が言った。


「丑光様の声がしたので来てみれば何ですかこれは」

 土上はチーマー共を睨んだ。

「家の坊ちゃんのご友人を手にかけるというなら例え誰であろうと容赦しません」


「何だとこの女」チーマー共は立ち上がった。


「止めておけ」

 そう言って遅れて歩いてきたのは根岸であった。


「ああ、根岸君じゃないか」丑光が言った。


「いいか、そいつにお前ら五人でかかっても、いや、例え俺とこっちの二人が寝返ってお前らについて八人でかかったってそいつには勝てはしない。仲良く体の骨のどれかを折られておしまいさ。この街でそのメイド程効率良く人体を支える骨を砕くことに長ける奴はいないんだからな」

「坊ちゃん、その言い方ではまるで私が殺人兵器みたいではないですか」


「なんだって。この姉ちゃん骨折りマスターなのか」

「おい、皆ここは退こう」

「いや、ここだけじゃねぇ。このメイドからは金輪際退くことにした方がいいぜ」

「にげれ~」

 チーマー共は逃げて行く。


「待ちなさい」

 土上にぴしゃりと言われて逃げ遅れた最後の一人がぴくっとなって立ち止まった。


「はい、何か?」そいつは答えた。

「空き缶はちゃんと処分しなさい」土上はゴミ捨てマナーを説いた。


「はい~」空き缶を掴んでから最後の一人もその場を去っていった。


「いや~カッコイイな惚れ惚れするよ」

 土上を見ながら丑光が言った。


「お前はまた良い声を響かせてピンチを救ってくれたな。まぁお手柄だよ」

 こしのりは丑光に言った。


「へへ、それはいいっこなしだぜ」

 丑光は照れた。

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