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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第二十四話 インターホンが超文明の発明だと思っていたあの頃も今となっては遠き過去

 丑光に壁をすり抜ける能力が判明したところで、こしのりと丑光は昨日連絡があった財布の持ち主の家に向かうことにした。財布を拾った時には室もいたわけだが、彼は住宅街に馴染まない熊であるので山でお留守番することになった。


「おいおいこしのり、ここは中々富裕層向けな住宅街じゃないかい」

「ぽいなぁ。まぁ俺だってボロを着ても心は錦さ」

「君って奴はまた古風な心得だねぇ」


 二人がお呼ばれされた家は見た感じ高級そうな住居が多く並ぶ住宅街にあった。


「着いたね、どうやらここのようだよ」

 丑光が先導して迷うことなく目的地に着いた。


 二人が目の前にした家にはまず門があり、玄関の周りにはよくわからない種類の色んな植物が育てられていた。テニスくらいなら出来る広めの庭は、綺麗に手入れされていた。庭には白い机と椅子が置かれている。どこかのおしゃれなパン屋のオープンテラスのようだ。


「おいおい、これはまたすごい家だな。見た感じ金持ちっぽちぽいぜ」

 こしのりは自分の家とは真逆な西洋チックな作りの家を見て驚いて言う。


 こしのりが門の横のピンポンを押すとボタン横スピーカーから「どちら様でしょうか」と女の声がした。これはインターホンと呼ばれるものだが、なんせ古風な日本家屋に住んでいる二人の家には無い物だし、他でもそうそうお目にかかる物ではなかったので二人はただ焦るばかりであった。


「え、ここから声がしてんのか。あ~あ~、聞こえますか」

 こしのりは初めてインターホンでの会話を行う。


 相手の女性が笑っているのがわかる。

「ふふ、聞こえていますよ。あなた達が財布を拾って下さったのね」


 これに丑光が答える。

「ん、何だ、僕達が見えているのか。あ、コレがカメラなのか」

「ふふ、こちらから見えていますよ。面白い方々ですね」


 時は2017年、インターホンが全ての家庭にあるとまでは言わないが、現代ではかなり普及してそう珍しい物でもなくなったにも拘わらず、この二人は人生において初めてインターホンのあるお宅にお邪魔したのだ。


「では、玄関へどうぞ」

 相手女性がそう言うと門が勝手に開いた。


「はぁ、コイツはすごいね。近未来小説でも読んでいるようじゃないか」

 丑光が言う。確認しておくとこの手の自動で開く門などは彼の想像する近未来にとうに追い付いた現代技術品である。


 門から玄関までは15m程歩くことになった。

「こしのり、こんなに広いお宅はすごいと思うけど、門から玄関までがこうも距離があるとなんだか不便だね」

 小さい声で丑光が言う。


 白い大きな玄関扉が開き、先程の女性が出て来た。

「さぁ、中へどうぞ」


 二人は壁も床も真っ白の広間に通された。

「わぁ、白い、そして広いね。こしのり上をごらんよ、あれは噂に聞くシャンデリアってやつだぜ」

 何の噂か知らないが天上に輝くは確かに世に言うシャンデリアであった。

 

 次いでこしのりもある物を発見する。

「おい、そっちもすごいけど、あそこ、あの壁見ろよ。鹿がこっちを見ているぜ」

 金持ちの家の定番アイテムともいえる例の物が壁からこちらを覗いている。


「へぇ、すごいね~。あれ? これって鹿じゃなくてトナカイって言うんじゃないの」

「どっちも同じようなもんだろう。すごいな~」


 住人の女性は二人のはしゃぎようを楽しそうに笑って見ていた。 

「そんなに珍しいですか?」

「ええ、それはもう。外国のアニメの『トマとジェラルド』の中でくらいしか見たことがない風景ですよ。同じポイズンマムシシティにこんな家があったなんて知らなかったなぁ」

 丑光がそう答える。


「まぁまぁ そちらにおかけ下さい。土上どのうえさん、お願いします」

 女性がその名を呼ぶと、今までどこに控えていたのか、また別の女性がいつの間にか部屋の中に立っていた。

「はい、かしこまりました奥様」

 別の女性はそう答えて部屋を出て行った。その女性は日本人の普段着とは思えない、動きにくそうなひらひらした服を着ていた。


「おい、こしのり! あれはまさかメイドさんっていう人じゃないか」

 以前、実は正体が闘うロボの可愛いメイドさんが活躍する某アニメを見てからというもの、メイドさんに密かな憧れを抱いていた丑光が目を輝かせて言う。


「へぇ、あれがメイドさんっていうのか、初めて見たな、そしてきっとこれが最後だぜ」

 運命論者のこしのりはメイドさんを目撃するのは今回が人生最初にして最後であると決め付けた。


「う~ん、悲しいけど、僕達のような者が生きる世界では確かにもう見ることはない人かもしれないね。それにしても可憐な女性のわりに、なんだか無骨者なイメージのする珍しい名前だね」

 悲しい運命を受け入れた丑光がそう答えた。


 二人が白い部屋に置かれた白い机の前のこれまた白い椅子に腰掛けていたら先程の土上さんがケーキとお茶を運んで来た。

「さぁ、これは財布を拾って頂いたお礼です。召し上がって下さい。それから申し送れましたが私は根岸とういう者です。以後お見知りおきを」

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