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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第二十二話 皆仲良く地球の上さ

 婆さんを注意した後、こしのりの母は縁側まで出て来てこしのりに言い放った。

「こしのり、あんたに電話だよ」

「え、誰さ?」

「警察からだよ」

「え……」

 こしのりはあまりにも馴染みのない相手からの電話があったことを知って固まる。


「あんた、とうとうなんかやらかしたの?」

 冷静にスミレが言う。


「え、何でよ、ちょっとその、スカートの中を見たくらいでもうお手手が後ろに回るのかよ」

 一昔前ならいざ知らず、現代の社会ではそのちょっと見たくらい、触ったくらいですぐにお手手が後ろに回るのだ。生きづらい世の中になったものだ。あ、しかし逆に言えばそれだけ守られる人もいるのか。何にせよ「徹頭徹尾善人であれ」と祖父に言い聞かせられて大きくなってきた私には、手が前や後ろに回ることなど全く関係のないお話である。


 分けのわからないことを喋る息子に母は言う。

「スカート? 違うよ、拾った財布が何とかって言ってたよ」

「ああ! あったなそんなこと」

 こしのりはすっかり忘れていたが、いつぞやの昼に道で拾った財布を交番に届けたことを思い出して手をポンと打つ。あの時に連絡先を聞かれて家の電話番号を答えたのだ。


 こしのりが電話に出ると、相手はあの時の何とかという名前の冴えないおまわりさんであった。財布の持ち主が見つかり、とりあえず本人に返したということがわかった。ついては持ち主がこしのり達にお礼がしたいと言っているとのことであった。話の結果、こしのりは財布の落とし主の住所を教えられ、明日そこへお招きされることとなった。こっちが出向くのも面倒臭いと思ったが、何かしらのお礼があるというなら彼の思い腰もしばしの間重力を忘れることとなった。


「良かった。俺捕まるわけじゃなかったよ。考えてみれば悪いことなんて一つもしてないしな~。それにしてもコロっと忘れてたよ。夏休みに財布を交番に届けていたんだ」

 笑顔でこしのりが縁側のところまで戻ってきた。

 どうせそんなことだろうと最初からわかっていたスミレは何も心配はしていなかった。


「ふ~ん、でも随分取りに来るのが遅かったのね。財布がないことに気づけばもっと早く警察に行くと思うけどね。落としたことに気づかずに生活してたのかしら」

 そういえばそうだなと納得な意見をスミレが言う。

 

「ん、お前、中々敏感に反応するな。なんだ、犯罪のにおいでもするのか」

「別にそうじゃないけどね、ちょっと気になったの。それじゃそろそろご飯だから帰るね。自転車ありがとう、宿題のことはなんとか手伝ってあげるから」

「おう、じゃあな」


 もう、陽が暮れかかっていた。この時間になれば明るい内にあれだけうるさかった蝉の軍団も大人しくなる。しかし、真夏の自然が奏でるオーケストラはナイター部門もあり、蝉が黙れば夜からは蛙が自慢の喉を鳴らすことになる。夏の内は外は常に喧しい。しかし、こしのりはこういった自然の声におもむきを感じるような洒落た感性を持つ少年であった。ちなみに風情も何もあったものでないお隣の丑光少年は蝉と蛙のうるささにずっと腹を立てている。かつて丑光は「食物連鎖のバランスを取るために貴様らの生存を認めているが、さもなければ打ち滅ぼすところだ」と大自然の使者たる蝉と蛙を相手に気焔を吐いていた。蝉も蛙も一生懸命生きていて、同じ地球に生きる友達である。そこのところをお忘れなく。

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