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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第百四十一話 どこへ帰るのか7つの光

 終わった。ミニスカ侍達の戦いの全てが。その若き青春からなにから丸ごと全てをかけての戦いが遂に終わったのだ。その期間は2017年8月~2018年1月1日までの僅かな間だったが、彼らにとっては無限の時とも思えたことであろう。彼らがだらだら過ごしている時期が長かったばかりに、半年にも満たない期間の物語を描くのに約30万字も費やしてしまった。そして、戦いが終わっても彼らの物語にはまだ続きがあるのだ。



 皆の想いを一つにしたスミレ渾身の一撃が巨神兵を遂に破った。

 スミレは今、ゆっくりと着地した。先程の衝撃でふっ飛ばされた他のミニスカ侍達と和尚は無事な姿を見せ、スミレと合流した。


「よくやったぞスミレ!」両手を高く上げてバンザイのポーズを取ったこしのりが言った。


 巨神兵は目の光を無くしてそのまま動かない。理由なき破壊神は完全に沈黙した。


 こしのりの携帯にメールが来た。

(おめでとうこしのり おめでとう人類 そしてさよならだ  P.S. 君はいつガラケーからスマホに帰るのかな?    滅びゆく巨神兵)

 

 こしのりは巨神兵を見上げる。

「ああ、さよならだ。お前のおかげで騒がしい年になったぜ。ガラケーはまだ使うぜ」


 巨神兵は光の粒子をなって頭から足に向かって消えていく。

 6人のふんどし男と1人のブルマ少女、そして全裸の熊が横一列になって巨神兵を見上げていた。

 全てをかけて戦った7人の戦士は、この時だけはなぜか達成感の喜びを抑え、過ぎ去る歴史を儚むようにして消えゆく強敵を見送っていた。これは例え敵同士であっても、マジとマジとでぶつかり合った者同士でしか芽生えることのない複雑にして尊い感情なのだろう。


「終わったんだね。僕らの戦いが……」丑光がおセンチはいり気味で空を見上げる。「キレイな夜空じゃないか」

「ああ、俺たちが守ってきた夜空だ」こしのりはそう返した。現在の時刻は深夜0時20分程であった。

「よくやったぞ君達。君たちは間違いなく街を守った英雄だ。ありがとう」和尚は目を潤ませて戦士達に感謝を述べた。


 スミレは大剣を地に突き刺すと「ああ、疲れた」と言って地に尻をついた。


「そうだ!スミレを胴上げしてやろう!」

 こしのりはグッドアイデアを思いついた。


「ちょっと止めてよこの格好でそれは嫌!」


「まぁまぁ姉ちゃん、一番の功労者やで、遠慮は無しにしいや」

 室がスミレを抱きかかえ皆も室を中心に集まってきた。


「ミニスカ侍~ファイア!」

 こしのりのいつもの掛け声でスミレは宙に浮いた。



 街上空には、テレビ中継用のヘリが飛んでいた。


「すばらしいです!今ミニスカ侍達は、共に戦った仲間同士で勝利の喜びを分かち合っています。途中で登場した謎の老人も一緒になってのことです。皆さん見てください。かつてあんなに歓喜と栄光に溢れた胴上げをご覧になったことがありますか?私は記憶にございません。後世に残る見事な勝利の胴上げです」

 戦いが終わっても内田の実況はノッていた。


「新年早々、お休みを返上しての初仕事でしたが、私はこの状況をお伝え出来たことを誇りに想います。ありがとうミニスカ侍。22世紀になってもあなた達のことは忘れない」 

 内田は感動して泣いていた。そしてその内田をカメラに撮っていたカメラマンのやっさんもまた成長した内田の姿に感動して泣いていた。

「ウッちゃん……良いアナウンサーになったなぁ……」

 やっさんこと安田カメラマンの心の叫びがついつい口から漏れて放送に乗ったという。


 

「ふぅ、疲れた」

 スミレの胴上げが終わってから丑光が言った。

「恥ずかしい!これカメラに撮られてるんだからね!」

「ははっそうかい。僕たち有名人だな~」


 皆が談笑を続ける中、地面に刺さった大剣が輝き出した。

 剣は一瞬光ると、元の7枚のミニスカに分かれた。そして、7枚はゆっくりと天に昇ってゆく。

 ミニスカがてっきり自分の下に戻ってくると想った一同は、ミニスカの行動を不思議に想ったが、すぐにそれにも納得がいった。


「そうか、もう戦いは終わったんだもんな」根岸が呟いた。

「履き心地にしろ色にしろ私は気に入ってたんだがね……」田代も寂しそうに言った。

「謎の巨神兵が消えたんだ。もう一つの謎のこいつも消えないといけないってワケだな」空を見上げて堂島が言った。


「こうして見ると、良い青色してらぁ」

 こしのりは自分の青いミニスカを褒めた。


「ああ~これを言わずにいられない。皆…どこへ行くの?」

 丑光は夜空に吸い込まれるようにして上昇するミニスカ達に問う。しかし返答はなく、その答えは誰にも分からない。


 闇の中でも光輝くミニスカはそれからも5分くらいは地上から見えた。やがてその強い輝きさえ見えなくなる程遠い地点に達し、遂には誰の目にも見えなくなった。こうして役目を終えたミニスカはどことも知らない場所へと帰っていったのであった。


「へへっ、こうなると不思議と寂しいものだね」

「丑光、明日からは堂々とズボンで外を歩けるぜ」

 こしのりは感傷にふける友を元気付けた。


「さぁ皆帰るんじゃ。この街が、2018年が、君達を待っている」

 和尚の一言を受けてミニスカ侍7人は振り返って歩き出した。

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