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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第百三十七話 ゴールデン大僧正と最強の弱虫

 巨神兵からLINEメッセージが更新された。

(ポイズンマムシシティ上陸ナウ)


 奴はついにその巨大な両の足をポイズンマムシシティに上げた。

 ミニスカ侍達は悔しい想いをしながらもそれを見ていることしか出来ない。


「ああ……僕らの街が……」丑光は悲痛な呟きをを漏らした。

  

 巨神兵は顔を天に向けると大きく口を開いた。その口に光の粒子が集まっているのが確認できた。そうしてパワーを集めた後、巨神兵の口から細く長い光線が発射された。光線は雲を貫き天高く伸びてゆく。

 それから数十秒はあたりが静かになった。しかしまた騒がしくなる。次には先程打ち上げた光線が再び地上へと降り注いだのだ。しかも発射した時の5倍程の太さになっていた。


「何!雲の向こうでどんな成長をしやがったんだ!」こしのりはそう叫んだ。地上の誰もが確認できなかった雲の向こうの世界で光線は確実に破壊力を増すべき成長していた。

 強く輝く光線はみるみる内に地上に迫っていく。あんなデカさのものが落ちたなら、それが街の端だろうが真ん中だろうが、街は街としての機能どころか、その姿さえも無くしてしまうであろう。簡単にそう考えられる程に光線の破壊力は視覚だけで十分に伝わった。

 これが終末の光、大遅刻したノストラダムスの大予言、などなど光線を見上げた人々は色んなことを想った。とりあえず皆が共通して想ったのは「ヤバイ」ということであった。 


 ミニスカ侍7人も「終わった!」と想ったその時、滅びの光線に向かって街外れから一筋の光が超高速で飛んで行った。

「ご先祖様の残した力、今こそ発揮する時ぞ~!」

 黄金の光は光線に激しく打つかった。光線はそれまでの落下スピードに急ブレーキをかけられることになった。空中で巨神兵の光線と謎の黄金の光がつば競り合いをする形になり、街の滅亡には一時停止がかかった。


 闇夜でも遠くを見通す獣の目を持つむろは、黄金の光の中までもを見通した。

「ああ!あれは和尚やないか!」

 なんとこの土壇場にかけつけた第8の戦力、それはミニスカ侍を鍛えたあの毒魔夢寺どくまむじ陀身安だみあん和尚であった。

「ああ、俺も見えるぜ。あんな爺さんは街広しと言えども一人しかいない」堂島も和尚の姿を確認する。

「そう言えば、寺の倉庫の中にもう一つミニスカが残っていたんだ。和尚の先祖様が持っていたという黄金のスカートが」設定を思い出した田代がそう言った。

 

 和尚はミニスカ侍達と修行していた時の作務衣ではなく、黒い法衣を身にまとっていた。そしてその上に先祖より託されたボロボロの黄金のミニスカを纏っていたのだ。和尚は空中で逆さまになり、鉄下駄を履いた両足で光線の進行を阻んでいた。

「悪しき巨神兵よ!食らうが良い!これが72代目毒魔夢住職にして大僧正の地位を与えられし高僧陀身安の力よ!はぁああああ!」

 陀身安和尚は雄叫びと共に力の全てを出し切り、丁度オーバーヘッドキックの形を取って光線を取り飛ばした。街へと進行方向を取っていた光線は大きく方向を曲げて、なんと発進元の巨神兵に向かって伸びていった。

 光線は巨神兵の頭から股間までの範囲を貫き、その向こうに広がる海面上へ伸び、やがて姿を消すことになった。  

 光線に貫かれた巨神兵の上半身は一瞬の内に蒸発したように無くなり、破片が落ちるということもなかった。巨神兵は自分の攻撃にかかって再び上半身を失うことになったのである。


 力を出し切った和尚は浮くことも出来ず地面へと落ちて行く。

「ミニスカ侍達に希望の光を……」和尚がそう唱えると、黄金のスカートは光の玉と変わって、和尚の体を離れた。そしてその光の玉は7つに分裂しそれぞれが7人のミニスカ侍の下に向かって飛んでいった。

 和尚のミニスカのパワーが7人のミニスカに取り込まれた。港に待機していた7人は黄金の光に包まれた。

「おい、これはありありと分かる。絶対に回復している」根岸は体が感じたままを言葉にした。

「和尚のミニスカの力ってわけね」スミレは回復してからすぐにでも体が浮くことを試していた。

みなぎるぜぇ!これであの野郎に反撃できる!」こしのりは復活の雄叫びを上げた。


 ミニスカ侍が勢いを取り戻す一方で、現在落下中の和尚は大変危険な身にあった。落下中は激しい風を受けて和尚の法衣が靡いていた。その法衣の裾の間から黄金の衣が見えた。これは和尚が自分がミニスカを履くことも想定して用意した黄金色のふんどしであった。ミニスカ侍達用のカラフルな褌を発注した際に自分用のこの色も頼んでいたのだった。


「丑光~!受け止めにきなさい!」和尚は大声で丑光を指名した。

「和尚!いま行きます」

 再び力を取り戻した丑光は地面を蹴って両足を浮かすと、そのまま和尚目掛けて飛んでいった。丑光は空中で和尚を見事キャッチした。丁度お姫様抱っこの形であった。

「和尚、なんて無茶なことを。でも助かりました」

「それは良い。それよりも丑光。お前のさっきまでの不貞腐れた態度はなんだ」

「え?」

「全てテレビに映っているんじゃよ。敵に白旗を上げるとは何事じゃ。いいか、あれは負けた後の算段がある者がやることじゃ。白旗を上げれば捕虜になったり、尋問、拷問が待っているかもしれん。しかし一時は苦しい目に会ってもとりあえず生かされていれば逃げることができるかもしれないし、反撃のチャンスだって回ってくることじゃろう。しかしお前の場合は別じゃ。お前の負けには再び巡ってくるチャンスなど用意されていない。勝つか死か、それのみじゃ。お前達は白旗を持つ必要のない戦いをしているんだから勝利に向かって戦うことだけを考えなさい。一応は私の弟子になるのだから恥ずかしい戦いをするでない」

 和尚の空中説教がはじまった。

「くぅ……そうだ。僕はこの街の人の想い、そして僕をブラジルから脱出させてくれたベルナルドやヨンチョさんの想いも背負っているんだ。その僕が我先に死を受けいれるなんて……和尚、あなたの言う通りだ。僕は今ほど自分の未熟を恥じたことはない」

「分かれば良い。お前は弱虫だが、弱虫の中では一番強い。そうじゃったな」

「ぐぅおお。そうです和尚。僕は最強の弱虫です」丑光は涙しながら答えた。

 師弟が話を終えた時には残りの6人も空を飛んで合流した。

「さぁミニスカ侍達よ反撃の時じゃ」

 7人は和尚の言葉に頷いた。

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