第百二十七話 海端会議~大きくなることは恥ずかしいことかい?~
巨神兵の咆哮は港にまで響いた。
「うるせ~!」両耳を塞いで堂島が言った。
「こしのりはどうなったんだ」と根岸が言ったのに対して田代は「こしのりのことさ、大丈夫さきっと」と返した。
室は大の字になって港に倒れていた。そして口を開けると「なぁ、何で姉ちゃんはワイのミニスカだけは持っていかんかったんかな……」と呟いた。皆がミニスカを脱いで褌姿になっている中、室だけは紫色のミニスカを穿いていた。
根岸は「今それ聞く?」と思ったが答えてやることにした。「それを考えると、理由が二つ思い浮かぶ」
室、堂島、田代の三人は根岸が言葉を続けるのを期待して彼に視線を集中させた。
「まず室からミニスカを脱がせると、室は普通の熊に戻って話ができなくなるだろ。そうすると仲間内でコミュニケーションが取れなくて困る。スミレはそこに頭を働かせて室の能力だけは持っていかなったと予想できる。これが一つ目だ」
根岸の話を理解した三人は「うんうん」と頷いた。
「で、二つ目な。これも予想でしかないが、あいつは女だろ。そして室の能力には巨大化があるだろ。俺が思うに、女は巨大化することを恥ずかしがる。スミレは巨大化が恥ずかしいと思ったわけだ」
これを聞いて室は「う~ん、大きくなるって恥ずかしいもんないかいな?」と三人に問う。
「う~ん、これは考えたこともないことだな。この平成の世に生きている者の中に自分が巨大な体になるなんて考える奴はまずいないだろう」腕組をして堂島は答えた。
「そうだね。私も考えたことがないよ。それに加えて、女の子だったら余計にそこら辺の気持ちがわからないね」と田代も答えた。
「全身がもれなくそのまま大きくなるんだから、つまり、なんというかな……」と根岸は言葉に詰まる。
「あっ、わかったぞ!等身大だと色々ごまかしが利く部分も巨大化したらそうはいかないよな。例えば尻に小さな黒子があるとかだったら大きくなったらモロ見えになるじゃないか」と堂島が言う。
「いやいや、服は着てるからな。そうじゃなくてもっと先にだな……」
「根岸の坊ちゃんよぉ、そう言葉を濁さなくてもええやん。教えてな~」と室は根岸に迫る。
「よしよしわかった。年頃の女なんだから、体のラインとかってのがあるだろ。巨大化すればそれがもれなく第三者にもわかって本人としては恥らうところもあるのだと思わないか」
「あっ、おっぱいの話か」と堂島はおっぱいの件に頭が働いた。
「まぁ遠からずな答えだな」
「お尻とかもそうだよね」田代も気づく。
「というか、巨大化してミニスカやったら、下から見たり、ちょっと動いただけでも皆ににパンツ見られるわな!」とここへ来て室も気づきを得る。
「考えもせんかったけど、巨大化して暴れるってのはワイら男やからこそ出来ることやったんやな」
「いや、というかお前が熊だからだろう。俺だって巨大化して皆に見られるのはちょっと嫌だぞ」と根岸は言った。
「まぁスミレは確かにあれだよな。男受けするプロポーションだとは思うぜ、健康的だしな。おっぱいも結構あれだしな。あれで巨大化すれば、色んな奴に変な目で見られてカメラで撮られそうだな」
「堂島君は妹持ちだから気づきが早かったみたいだね」と田代が言った。
「まぁな、この中じゃ乙女心は一番わかってる方だろうな」
「何言うねん、それやったらワイやろ!嫁も子供もおるんやで」と室が物申す。
「それにしてはスミレのおっぱいへの気配りがなってなかったじゃないか」と堂島が返す。
こんな感じで4人が「女子が巨大化するのを恥らうのはなぜか」というテーマで意外にも盛り上がっている所へ「アンタ達うるさい!聞こえてんのよ!」という鋭い声が投げかけられ、次には4人が円になって盛り上がっている真ん中に紙飛行機が舞い飛んで来て「ドンッ」と音を立てて爆発した。
堂島は「くそ、地獄耳め……」と言い、室は「怒ることかいな」と言った。
「女性に対しておっぱいと言うのが悪いんじゃなかったのかな」と田代は言った。
根岸は「多分そういう問題じゃないと思う」とだけ返してもう黙ることにした。