第百二十五話 さすらいの褌野郎共~和尚の気遣い~
「久しぶりだな巨神兵」こしのりは巨大な敵を前にしてそう言った。
その時こしのりの携帯電話にメールが来た。こしのりはパカッという子気味良い音を立ててガラケーを開けた。そこには目の前にいる巨神兵からのメッセージが届いていた。
(こしのり、君とはとうとうLINEでお話をすることなく終わってしまったね 今年最後の巨神兵)
「ふふっ、LINEなんかやってる奴に俺は負けねえ」
ガラケー信者のこしのりはスマホ童貞の上に、LINE童貞でもある。
こしのりと巨神兵が海の上で見合っていた時、街には除夜の鐘が響いていた。
「毒魔夢寺の陀身安和尚が鐘を撞いているんだな」とこしのりは想った。
鐘の音をバックに今こしのりと巨神兵との闘いが始まろうとしていた。
港では田代がこしのりを見ていた。その後ろから根岸と堂島も駆けつけた。
「頼むぞこしのり、もうこっちはガス欠だからな」と堂島は言う。
「こしのりも修行を頑張ったんだ。簡単には負けないさ」と田代は答えた。
「巨神兵の上陸を許したらもうどうしようもないぞ」と根岸も言った。
三人が空を見上げていると、ザバッっと音を立てて海から人が上がってきた。室を回収したスミレであった。
「ああっ室!無事かよ」
三人は室とスミレに駆け寄った。
「うう……すまねぇ、やられちまったぁ……」室はかなり疲れていた。
「いや、室は立派に闘ったさ、私は見ていたよ。それよりも私の力不足だった。すまない」田代は室の手を取ってそう言った。
「という訳なんだスミレ。俺たち男連中は4人ともガス欠だ。こしのりを支えて何とかしてくれ」と堂島は言った。
「言われなくても何とかするわ。皆が頑張ってくれた分は無駄にしないからね」
スミレは、空高くジャンプするとそのまま飛行に入る。
「じゃあ、皆の力借りていくからね」と一言残すとスミレは巨神兵向けて飛んで行った。
「借りるとはまさか……」と根岸が言った直後、根岸、堂島、田代のミニスカが強く光り、次には彼らのミニスカは小さな光の玉へと姿を変えた。光の玉となったミニスカは空に舞い、スミレの穿く赤と黒のチェック柄のミニスカへと引き寄せられて行った。ミニスカが飛んで行ったことで三人の下半身は寂しいことになっていた。
三つの光の玉はスミレのミニスカに取り込まれた。するとスミレのミニスカのチェック柄の黒色の部分が消えて、代わりに三人のミニスカのカラーである黄、オレンジ、緑に変わった。スミレのミニスカは赤、黄、オレンジ、緑の何ともステキにカラフルな柄に変わったのである。
「スミレの奴!まぁ仕方ないんだけど、あいつにアレをやられるとその間俺達がパン一なんだよ」堂島は股を閉めてそう言った。
「なに、恥ずかしがることはないじゃないか。スミレちゃんが私達の能力を使うことを想定して最初からこいつを仕込んでおいたんじゃないか」田代はそう言って胸を張って立った。
「しかし、これで外を歩くのはミニスカと同じく抵抗があるだろう」根岸も少しモジモジしながらそう言った。
三人がミニスカの下に何を仕込んでいたかというと、根岸は黄色の褌、堂島はオレンジ色の褌、そして田代は緑色の褌を仕込んでいたのである。これは彼らの修行の最終日に陀身安和尚が用意したものである。
やはり陀身安和尚は高僧だけあって考えることが違う。陀身安和尚が褌を用意するに至った考えはこうである。以下に彼が口にしたままの言葉で記す。
「君達は年末にそのミニスカを穿いてこの街の空を舞うことになるじゃろう。そうするとじゃ、心配なのはは道行く人に下からミニスカの中を見られるということじゃ。見えてしまうのは確定しているから私は手を打ったのだ。それがこれ、それぞれのミニスカのカラーの合わせた褌じゃ。二つ向こうの街の職人に用意させた特注品じゃ。これは私からのサービスじゃ。これから巻き方を教えてやるからな」
というのが和尚の考えであった。
ちなみに和尚は女の子のスミレに褌をさせるのは色々アレだと思ったので別の策を用意したのである。それというのが、前話の中でスミレ自らが穿いていることを明かしたブルマである。機知に富む高僧である陀身安和尚は、わざわざ通販で赤色のブルマを取り寄せ、それに黒マジックで色を足してチェック柄にしたのである。スミレは現在、和尚オリジナルの赤黒チェックのブルマを穿いているのである。一見の価値ありだぞ。
皆が褌やらブルマやらを貰う中、室には何もなかった。なので室が「和尚はん、ワイには何もないんかいな?」と言ったところ、和尚は「熊にそんな羞恥心はなかろうが」と返した。それを聞いて室は「あっ、それもそうやな!」と言って右手でおでこをポンッと打ったという。