第百二十三話 釘バットのミニスカ軍団と最強のメイドさん
街には数十体の小神兵が出現した。コレに立ちふさがるはミニスカ侍の根岸と堂島であった。
根岸は紙飛行機を三機出し、堂島は両手に砂糖と少しだけ金平糖を掴んでいる。二人は同時にそれを小神兵目掛けて飛ばすが、紙飛行機は先っぽが当たればポロリと地面に落ち、砂糖は砂糖なのでかかってもそこが白くなって終わりで、金平糖だって小神兵の肌にコツンと当たれば後は地面に落ちて終わりであった。結果を言うとガス欠を起こしたミニスカ侍二人にはもはや戦闘力はなく、小神兵の一体だって撃退できない状態であった。
とりあえず今出来る攻撃を一通り行った二人を次に待つのは、目の前にいる破壊者の化身による反撃であった。小神兵の内三体がこちらに走って突っ込んで来たのをかわすことなく食らった二人は「うぁ~」と声を上げて3メートル程吹っ飛ばされ、二人仲良く街のゴミ置き場に身を突っ込むこととなった。
「楽しい年末に何でゴミ置き場に寝なきゃならんのか……情けない話だぜ」と堂島は言った。
「そうだなぁ……しかしどうしたものか、今の俺たちではあいつらを引き止めることもできない」と根岸は返した。
二人は海で戦う室、港に蹲った田代と別れて街に突如現れた小神兵を何とかするために駆けつけたのだが、前述の通り何ともならなかった。
「この聖戦を前にしてメンバー7人が揃わなかったのが、今のこの情けない状況の原因なのかもしれないなぁ」と堂島は敗戦の反省めいた言葉を呟いた。
「かもなぁ。日本がピンチの時にブラジル旅行に行くバカがいるし、いざって時にトイレにこもって闘えない奴もいるし、ミニスカの人選に問題があったのかもな」根岸は丑光とこしのりのことをあしざまに言った。
疲弊しきっている二人は瞼が段々重くなるのを感じた。このまま眠れたらどれだけ良いかと二人は思って
いた。
「お休みになられるのはまだ早いですよ坊ちゃま」
根岸は誰かに抱き起こされた。根岸が後ろを振り返ってみると、根岸を抱いていたのはメイドの土上であった。
「あっ、お前何してる!」
「坊ちゃまこそ、根岸家の子息ともあろう方がゴミ置き場でお休みになるとは何事ですか」
そして堂島も何者かに両脇に腕を回されて起こされた。
「ボス、スイーツ職人がこんな不潔な所で寝てちゃいけないよ」
「ドゥージマ、ウェイクアップね!」
堂島の両側に立つのはかつて彼が所属した不良グループ『子子子子子子子子子子子子(ねこのここねこ、ししのここじし)』の現ボスである内とマードックであった。
「お前ら!どうして?」堂島がそう言って辺りを見渡せば二人以外にもたくさんの『子子子子子子子子子子子子』のメンバーが来ていた。
「知らないだろうが、ボス達の戦いはテレビで実況されてるぜ。見た時はビックリして蕎麦の汁を吐いちまったよ。テレビを見て皆集まったんだよ。俺たちはミニスカ侍じゃないけど、何か助けになるんじゃないかって思ってな」
「内、お前ぇえ……」堂島は仲間の応援に感動していた。
「ドゥージマ、俺たち、あのチビやっつけるね~」
『子子子子子子子子子子子子』の面々は皆釘バットを手にしていた。そして皆、ミニスカを穿いていた。
「という訳ですお坊ちゃま、私達は修行の甲斐なく敵に追い込まれている坊ちゃま達をお救いするために参上いたしました」
「悪かったな修行の甲斐なくて」
「おいおい根岸、お前の所のメイドさん物言いがきつくないか?」
内は釘バットを高く掲げて「お前らボスのお手伝いをするんだ!あのチビ共をとにかくバットでぶん殴って街にいかせるなよ!」と軍団に指示を出した。そして軍団は一斉に小神兵に突っ込んでいった。
「坊ちゃま、坊ちゃまは坊ちゃまの戦いをしてください。ここは私達で食い止めます」そう言うと土上も戦闘に加わった。かくして釘バットを持ったミニスカ集団とメイドの土上は小神兵討伐の闘いを始めたのである。
根岸と堂島の二人は自分達を後押ししてくれる存在を知って、この闘いに負けられないと改めて思ったのである。