表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
115/144

第百十五話 始動!史上最大の15分間

 ゴゴゴ!!

 街中に揺れとセットでこの音が響きわたった。その時我らがミニスカ侍が一人こしのりは自宅の便所にこもっていた。

「なんだこの揺れは? あああ!もう紅白が終わる時間か、あいつが動き出したのか!」事の重大さに気づいたこしのりは急いでトイレを出ようとした。だけで、なかなか出るには至らない。こしのりは思った「すまん皆、しばらく時間を稼いでくれ……」と。

 彼がそんなことを思っていると、彼が閉じこもる便所の扉を彼の母がどんどんと叩いているのが聞こえた「こしのり!あんた何してんのよ!紅白は白組が勝って巨神兵がもう動きだしたよ。あんた達しかアレは止められないんでしょ!学校の遅刻と違うんだから早くしなさいよ!」

「うるさいなぁ!俺だって遅刻したくねえよ!でも腹がぁあ!」とここまでこしのりが言い終えると、彼の腹は「ぎゅるうう~」と鳴り出した。こしのりが動けるようになるまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。


 所変わってこしのりの家の瓦屋根の上に根岸、むろ、田代、スミレは立っていた。4人は街の中央にそびえる最大の敵に目をやっている。

 巨神兵の位置する場所は街の中央である。その周り半径数100メートルは砂地が広がっている。砂地が終わる頃にはガードレールが敷かれ、その向こうには道路が広がり、やがては街へと入っていく。あんな所に巨大な像が建てられているのがそもそもおかしいが、その周りに草木も生えなければコンクリート舗装されていないのもまた不自然であると今更に想う4人であった。

 巨神兵は揺れると共に上へとあがっていく。土の中にまだ足の先の部分が隠れていて、それが地面に出てきていた。4人には巨神兵が少しずつ大きくなっていくように見えた。

 室は「おいおい、アレでかくなっとるやん。どうゆうことや」と言う。

「遂に動き出したか、おい堂島アレが見えるか!」根岸は実家にいる堂島に電話をしている。電話の向こうの堂島は「この街のどこにいようがアレが見えなきゃどうかしてるぜ」と大声で返した。

 巨神兵は遂に体全部を大地の上に晒した。いつもより更に数メートル背が高く見えた。そして、この距離でも分かるくらいに大きくアクションを取り出した。まず、巨大な両の腕を真上に上げ、体を伸ばして始めた。動くのがしばらくぶりなので伸びをして戦闘態勢を整えようとしているようだ。

 根岸はしかけるなら早い方が良い、こうしている今にも仕掛けるべきと思ったが、いざとなると事の異常さに圧倒されて行動に出ることが出来ないでいた。

 巨神兵は伸びををした腕を勢い良く降ろした。そのアクションだけで強風が巻き起こり、数キロ離れたこしのりの家まで届いた風は、一同のミニスカをなびかせた。

 巨神兵が伸びをしておじさんのように「ふぅ」と一息漏らすとその息は青い閃光となり、幅は細く、距離は長く伸び、ものすごい速さで飛んでいった。やがて閃光は毒蝮山にぶち当たり、爆発を起こした。本当に一瞬の事で4人は何が起こったか分からなかった。気づくと、今立っている屋根から右方向に見える山が燃えていた。10メートル程の範囲が一気に燃えていた。この山には室のマイホームがあり、今そこでは彼の嫁と息子が冬眠に入っている。

「ああっ!!絹子きぬこ田吾作たごさく!」室が聞き慣れない人物の名を叫んだのを聞いて一同が「誰だそれは?」と想った頃にはもう屋根の上に室の姿はなかった。家族の危機を想った後の彼の行動は速かった。室は全力で空を駆け、一直線に毒蝮山へと向かった。

「おい!室!」と根岸が言うも、もう声が届く範囲に彼はいない。未知の強敵を前にこしのりはトイレ、丑光はブラジル、堂島は実家にいて、室もいま離れて行った。7人揃っての方が事が有利に働くと思っていた根岸は戦力がバラけることに焦りを感じていた。

 根岸が視線を室から巨神兵に戻した時には、もう巨神兵の次なる一手が打たれていた。巨神兵の向かって左の海岸を見ると、先ほどまで穏やかだった海が大波を立て、その波が陸に向かって行くのが確認できた。巨神兵は場を動いてはいない。しかし未知なる強敵の奴のことである、今更動かずに波を操ることが出来たと分かっても不思議ではなかった。

「何だあれは!港の方には堂島の家が!おい堂島聞こえるか!」根岸が呼びかけるも電話の向こうの堂島から応答はない。もう電話は切れていた。

「くそ!」後手に回っていることに苛立ちを感じながら根岸が言った。

 その時田代が屋根を蹴り宙に浮いた。

「根岸君、スミレちゃん、私はとにかく室を追う。頭に血がのぼった状態の彼を一人にしておくのは心配だ」田代はそう言うと根岸達の返事も待たずに毒蝮山の方向へ飛んで行った。

「くそ、仕方ない。俺は港に行く。あのままだと街が津波に飲まれる」

「ちょっと私はどうするのよ」

「こしのりがまだトイレだ。今の奴は丸腰も同然だからお前がここに残って何かあったら対応するんだ」

「え!私がこしのりのお守りってわけ!」

「よく分かっているじゃないか」そう言うと根岸は毒蝮港の方へ飛んで行った。

 早くも皆バラバラになりスミレのみが屋根の上に残った。スミレは一人取り残されると今更になって不安を感じた。



 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ