第百十一話 「7-1=6以上」にする頑張り
丑光からの連絡があった次の日、つまり12月28日の昼、残った6人のミニスカ侍はこしのり自室に集まっていた。
「で、マジなのそれ?」腕組みをしてスミレが言った。
「残念ながらマジだ。という訳で丑光は31日に戻ってこないかもしれない。皆、最悪6人で行く覚悟を決めてくれ」こしのりはそう返した。
ブラジルの地で消息を絶った丑光に関して、皆はしばらくコメントすることが出来なかった。
「はぁ~バカねあいつは。ということで、こしのり」と言うとスミレはこしのりの前に自分の開いた手を差し出した。
「は?何だこれは、お手の芸か?俺は犬猫じゃないんだぞ」
「違う。500円、あんたが代わりに払うことになったんでしょ」
「バカな。どうして俺が。そんなものは丑光の部屋にある豚の貯金箱をトンカチで割って、その中身を貰えいいだろうが」
借りた金は返さないとはいけないが、こしのりが言うことが何だか酷い。
「今回のことは予想が出来なかったが、結果を聞けば丑光らしいな」と根岸が口にした。
「全くだ。しかしここで戦力を欠くことになるとは……」とマカロンを食いながら堂島が言った。
「そうやな~ むしゃむしゃ」同じくマカロンを食いながら室が言った。
「これだって、丑光が一番喜んで食ってくれたろうになぁ」と遠い目をして堂島が言った。
「おいしいねこれは。ことによると丑光君は堂島君の手作りスイーツを食べる最後のチャンスを失ったことにもなるんだね」田代も寂しげに言った。
「ああ、ワケの分からない奴で、ウチの超絶可愛い留美たんにデレデレするのが気に食わなかったが、そこのとこを除けば良い奴だったよ」と死んだ奴を懐かしむ感じで堂島は話していた。
「皆、俺達は丑光を失って7人から6人に減ってしまった。頭数が減ったのは仕方ない。こうなったら一人一人が、一人とちょっと分頑張ることであいつの抜けた穴を補おう」こしのりのこの言いかけに皆は頷いた。
「そうだね。丑光君はいつだって私達の心の中にいるさ。残った私たちでもきっと何とかなるよ」
「だな。丑光一人いなくてもパワーアップした俺たちなら大丈夫だ」堂島が答えた。
「どぎついピンクスカートが消えて見た目のバランスもスッキリしたんじゃないか」と根岸が言った。
「かもな。あいつのピンクは主張強いねん」と室が言った。
「そうだ!7-1が6だと誰が決めた!俺達で7-1=6の思い込みを打ち砕いて答えを6以上、いや元々の7をも越えるものに変えていこうぜ」こしのりはそう言って手を前に出した。するとスミレ以外は皆こしのりの手の上に自分の手を重ねていった。
そしてこれまで何度かやったけど、定着するにはまだ至らないあの掛け声「ミニスカ侍~ファイヤ~」を皆で叫んだ。
この光景を見たスミレは、これは色々大丈夫じゃないと想い、ため息を漏らした。そして一言「7から1を引けば6以外の何になるって言うのよ」と場を盛り下げる正論を一同に突きつけた。