第百八話 和尚の最後のホーリーナイト
今日は12月24日。遂にミニスカ侍達の修行は完了した。何を持ってして修行完了なのか、それは各々の満足感によるとも言えるが、彼らのミニスカの能力は確かに強力なものになったとこの私が保証しておこう。
この日の昼、全員が毒魔夢寺に集合した。田代はその日の朝は空き缶を集める仕事をしていた。それを終えた彼は寺へとやって来た。彼は寺の門で根岸と一緒になった。
「やぁ根岸君久しぶりだね」
「ああ、田代さん。しばらくだな」
「しばらく見ない内に何だか立派になったね。もうお坊ちゃまとは呼べないね」
「とりあえずここ数日はお坊ちゃまの生活からは離れていたからな」
「ふふ、立派になった根岸君を皆に見てもらおうじゃないか」
二人は寺の中へと入っていった。その時こしのり、丑光、堂島、スミレ、陀身安和尚は居間で大富豪をして盛り上がっていた。
「やや!どうしたんだいコレは。あの根岸君が、随分風貌が変わったものだね」手札の揃いが一番悪かった丑光が根岸を見て思わずそう言った。
丑光が驚くのも無理はない。普段は最強メイドに守られて怪我をすることのないあの根岸少年が、腕や足に怪我を負い、あちこちに絆創膏や包帯を巻いていた。
「相当追い込んで仕上げたみたいだな」ジャックのトリプルを放ちながら堂島が言った。
「へっ、その包帯や絆創膏がコスプレか何かでないモノホンの修行の証ならな!」キングのトリプルを放ってこしのりが言った。
「ああ!私はパスだ」打つ手無しの和尚がそう言った。
「メイドさんのトレーニングが凄かったって聞いてるけど」そう言ってスミレは2のトリプルを放った。
「あ~もう~またスミレが一抜けかよ!どんだけ強いんだよお前は~」とこしのりが不満を漏らした。スミレは大富豪がとても強い。
「というか、お前らカードを止めろよ」と根岸は言った。
「お~い、着いたぞ~」
門の方からおっさんの声がした。声の主は肩にかかる程長いモジャモジャな髪の毛をし、身長は2m程もあった。上半身にぼろ布をまとい、そして紫色のミニスカートをはいていた。男は皆がいる居間にまでやって来た。
「おい、お前……誰だよ」
「おいおいこしのりよぉ、お前は確かに賢いとはとても言えないお子様だが、だからと言って物忘れするのには早すぎるだろうが。俺だよ、皆の室さんだろうが」
「なんだって!お前室なのか!」
なんと山にこもって一人で修行をする内に、熊の室は人間の、しかもゴツイ中年のおっさんの姿になっていた。おっさんの顔だが、頭には熊の耳が残っていた。
「室……全然可愛くないよ。前の姿に戻りなよ」丑光がそう言った。
「おっと、そうだった。なんか人間になれるようになったんだ。熊にもすぐに戻れるぜ」
室はすぐに可愛らしい熊の姿に戻った。
久しぶりに一同の前に姿を現した根岸と室は見た目からしてかなり変わっていた。
「さてさて、これで本当に修行の締めくくりだ。皆、表にでるんだ」
和尚の一声で7人のミニスカ侍は庭へとやって来た。一同の目の前にはかつてスミレ以外が皆落ちた池がある。
「さぁ皆ここに浮いて見せろ」
和尚の指示に従って全員が水面に浮いて見せた。スミレは今回はパンツまる見え防止としてミニスカの下にジャージを穿いていた。
「うむうむ、最初は情けないことにスミレちゃん以外皆池に沈んだというのに、今は立派に修行の成果がでているな」
「僕たちはサボることなく修行に励んだのだから当たり前ですよ和尚」そう答えた丑光のみ、よく見ると足首くらいまで沈んでいた。他の者は皆足裏で水面に立っていた。
「さぁさぁ皆上がりなさい。これで今日することはあと一つだけだ」
「そうだな和尚。なんたって今日はクリスマス・イブだもんな」
「おうおう、こしのりは今日を楽しみにしていたな。さぁ皆手を洗って上がりなさい。ケーキを準備しているからね」
「キャッホ~」と声を挙げたこしのりを先頭にして一同はケーキ目掛けて居間に帰っていった。
いつもは寂しい寺での暮らしだが、今日までの修行期間は和尚にとって賑やかで楽しい日々であった。そんな生活もこれで最後。今日は毒魔夢寺で楽しくクリスマスのお祝いが行われた。