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コマンダー03  作者: 前頭禿夫
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上司から指示が出ました

「さて。ではお前の改造については姿かたちは大きく変えない。肉体強化優先。クリティカルが蹴りで発生したことから下半身強化優先、ではないのか。肉体強化は全身満遍なくが希望だな?」

「イーッ!」

 確かに初めてのクリティカルは蹴りだったが、今後は手刀で首ちょんぱもあるだろう。いや、パンチかもしれないが。

 とにかく、下半身だけに強化を限定する必要はない。NINJAは全身凶器でござる! にんにん。

 やはりNINJA……ええい、面倒だ忍者といえば、自分だけの術を一つ持たねばなるまい。下級戦闘員、つまり私は下忍。下忍は中忍や上忍の命ひとつで使い捨てにされる立場だ。故に他者には決して口外せぬ、独自の秘術をひとつ極めている。それが命綱なのだから。

 そして術を知られることは命を失うことに等しい。知られれば返し技を編み出されるのは世の常よ。故に術は秘匿する。使うはすなわち、これ必殺。

 ううむ、おっさんの浪漫回路がぎゅんぎゅんまわってるぞー。

 光あるところに影がある。ふふ、私も名もなき忍者の一人になるのだ。影一族でもいいけどね。


「他にも何か希望はあるかも知れんが、現状できることはさして多くない。できるようになってから考えてもよかろう」

 おっと、浪漫に浸っているうちに博士は手続きをしてくれていたようだ。上司に対してこの対応はちょっと申し訳ないな。反省。

「さて、ではお前の改造を始めよう、といいたいところだが。無理だ」

「イッ?」

「改造にはエネルギーストーンが必要だ。そしてお前の改造……先ほどの2体のような下らぬランクダウンならいざしらず、本格的に強化改造をするためには絶対的に足りん」

 ああ、なるほど。確かにあの程度の手間でどんどん改造できたら、今頃太陽の子とか影の月さんがごろごろしてそうですもんね。そりゃそうか。

「そこでだ。お前はこれまで同様にダンジョンでエネルギーストーンを集めよ。そのうち半分をわしがもらう。残り半分を使ってお前の改造を進めていくことにする。それ以外はお前の自由だ」

「……イーッ」

 ここは承諾しておこう。半分取られるというのはでかいが、おそらくこのあたりも含めての転属リスクだ。先ほど見たように、転属願いがまだ受理されていないというのもまずい。しかし、それ以外の行動について自由な裁量権をもらえるというのは、デメリットを加味してもおいしすぎる。何か裏があるのか?

「ほう。……なかなか計算が働くようだな。渋るかと思ったが、指揮官型の特性がうまく働いた結果か? まあよい。ついでに言っておくが、特に含むことはないぞ。下級戦闘員の1体がどのように動こうとも、わしにも組織にも影響はないということだ。お前が面白い変化を見せれば興味がわく、その程度だな」

 どうやら考えが顔に表れていたようだ。

 そうですよねー。私がいなけりゃ会社が回らない! なんて意気込んでみても、実際休んでみたら普通に回ってるんですよね。価値はあっても、代替の利かない価値を持つってものすごく難しい。

 目の前のマッドサイエンティストさんは、それをわかった上で、自分の価値を最大限利用する人だわ。ひょえー、怖い。

「ではせいぜい励むがいい。ああ、転属願いも通ったようだな。わしの部隊の詰め所は両隣だ。お前は……この研究室を出て左に向かえ。では、わしが忙しくないときにまた顔を出すがいい」

 うーん、あっさり。これ以上はお邪魔できない雰囲気だけれど、わからないことがあったらどうしよう。というか、わからないことだらけだよ。頼りになる01番02番はホストとして桃色の園に旅立ってしまったし。

「わからんことは詰め所の端末を使え。ほれ邪魔だ。さっさと行け」

「イ、イーッ!」

 あ、これはこれ以上ここにいても相手にされないな。仕方ない、なるようになることを祈ろう。


 さて、そういうわけでやってまいりました詰め所でございます。隣といっていたわりには優に10分は歩くというトラップは突破してまいりましたが、扉の前でちょっと緊張。特に認証システムはない模様。ううむ、今になってあの二人のありがたみが身にしみる。手続きがこれであってるのかさっぱりわからんが、悩んでもわからんもんは仕方ない、突撃だ!


「ああ、博士から連絡はもらってるよ。コマンダー03だね?」

 詰め所に入って、真っ先に声をかけてくれたのは、でっかいカメレオンさんでした。

「あたしのことはキリって呼んどくれ。見てのとおり、カメレオン型怪人さ。妹ともどもよろしく頼むよ」

「イーッ!」

 怪人……? 人という要因がまるで見えないが、つっこみはやめておこう。

 まず先輩に対してはしっかり挨拶。これ基本。カメレオンに話しかけられた程度では驚かない。それに私は間違いなく下っ端だろうしね。

 しかし、妹とは?

「妹ってのは、この子さ。ほれ、ご挨拶しなさい」

 キリさんがその2メートルほどはある体を動かす。なお尻尾も含めれば全長4メートルほどだろうか。尻尾は背中の上で丸まっているので正確なところはわからないが。

 キリさんの陰で寝そべっていたのだろう人影が立ち上がる。

 身長は150センチなさそうだ。小柄な、人間で言えば中学生か高校生くらいの年頃に見える、黒の地毛に白いラインがはいった、リスっぽい怪人さんだ。かわいいな。

「サキ。スカンク怪人。よろしく」

 はい、攻撃方法はもうわかりましたー! 大方、怪人になってその能力も大幅パワーアップしてるんでしょ。恐ろしい。

「正確にはゾリラ怪人だけど……みんなスカンクと間違えるから、もう、そう名乗ってる」

 それはかわいそうに。だが、攻撃方法は変わらない以上、あまり関係ないような気もする。アイデンティティの問題だから何もいわないが。

「イーッ!」

 なりは小さくとも先輩だ。しっかり挨拶しておこう。おっさん、年下の上司もいたしね。

「じゃあ、あんたの寝床と端末の使い方を教えるとするかね。あたしらも仕事があるから、悪いがあとは自分でやっておくれ」

 いえいえ、そこまでやってもらえば大満足です。捨てる神あれば拾う神ありとはこのことか。


 心機一転、がんばってみよう。

怪人の定義とは何なのか。

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