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コマンダー03  作者: 前頭禿夫
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指弾

 馬鹿でかいドラの音とともに戦いが開始された。

 だが。

「イ、イーッ」


「おほほほ、奥様ご覧になって。あのへっぴり腰」

「あらあら、本当ですわね。なんて無様なんでしょう」

「オーク相手でもひどいものでしたもの、これは当然といえば当然。でも、おほほほほ!」

「まあ、そんなにお笑いになられてははしたないですわよ。でもあの逃げ回り様は、たしかに笑いがこみ上げてまいりますわ。ぷっ、なんて姿でしょう!」


 闘技場の中では、女怪人が倒けつ転びつ逃げ回っている。


「前回のオーク相手には運よく殿方の急所に攻撃が当たりましたけど、今回はどうですかしら。おほほほ」

「ま、急所だなんて奥様。でもそうですわね。さすがにあのモンスターには運よく買って命をつなぐとはいかないのではないかしら?」

「おほほほほ。それは残念ですわ。あの奇妙なモンスター、ゴブリンを倒していい気になっている様子や、それからゴブリンキングに深手を負わされて慌てる情けない姿など、とても芸術的でしたのに。わたくしこのように優れた道化の姿を目にしたのは初めてでしたわ」

「うふふ、当のモンスターは道化を演じているつもりはないのではなくて?」

「だからこそ、最高の道化なのではありませんか奥様! 今まで舞台で目にしたどのような喜劇も、この道化の前にはかすんで見えますわ。すばらしい、ああ、すばらしいですわ! おほほほほほ!」

「奥様、ご趣味が悪いですわよ。うふふふふふふ!」


 そうか。道化か。

 …………。

 人生を生きていれば、自分の生き方を笑われることもある。

 他人から見れば道化にしか、滑稽にしか見えないこともあるだろう。

 それは仕方のないことだと思う。

 人間ってものはそういうものだ。理想や理屈だけで説明できないのが人間だ。だからこうして笑われるのは仕方のないことだ。実際滑稽なのだから。


 だが。

 他者を笑うことが人間の性ならば、それに怒り立ち向かうのも人間の性だ。

 なめるなよ、厚化粧のババアども!

 意地ってものを見せてやる!!


 ……え、お前は怪人だから人間じゃないだろうって?

 はっはっはっ。

 俺は身体は怪人になったが、人間の心は失わなかった!貴様らは人間の身体を持ちながら怪人に! 怪人になったんだぞ! これが! これが! 俺が身をすててまもろうとした人間の正体か!

 はい、嘘です。すいません。

 おっさん、身をすてて人間を守ろうなんてしてません。許してください。不動明にはなれません。

 だが、根っこのところに意地を張って生きてきたのは事実だ。この奥様方には絶対に理解できないだろうし、理解しようとは思わないだろうけどな。


 闘技場を見やる。

 状況はお世辞にも良いとはいえないな。二つの首が繰り出す噛み付きをなんとか回避しつつ打撃を時折与えているが、まるでダメージが通っていない。かえって双頭の蛇のほうが動きが良くなってきている。

 まずいな。時間は残されていないようだ。

 ここは円形闘技場のほぼ最上段に近い観覧席。周囲にも人影は多く、おかしな動きをすれば一目瞭然だ。

 この位置から、この状況であの女怪人を助けるためには、打てる手段は多くないだろう。そして自分が思いつくのはひとつしかない。

 ステータスを表示。

 該当のスキル、毒手にBPを一気にぶち込んでいく。

 20BPでLv.9に上昇し、そしてそれまでの2倍の10BPを最後に投入することでLv.MAXとなった。合計30BPの消費だ。

 そしてここからが本番だ。

 毒手となった右手の指先に神経を集中する。

 滲み出ろ……滴れ……神経毒を分泌しろ……!

 全神経を集中し、指先を構成するすべての細胞に対して強く命じる。

 がちり。

 来た。

 指先からじわりとわずかに液体が滲んだ。

 直ちにステータスを確認すれば、狙いを実現したスキル「神経毒作成」を収得している。

 よし。これはLv.1で十分。次のステップだ。

 今度は左手で袋から硬貨をつまみ出し、それを右手に持ち替えると神経毒をたっぷりと塗りつけ、親指で弾けるように位置を調整する。

 そう、指弾だ。

 自分の中での指弾のイメージは闇の○鬼だな。小学生のころあこがれて結構練習したもんよ。当然ものにはならなかったがな。

 だがこの肉体ならいける、なにせ無刀取りまでやれるのだ。間違いなくできる。

 信じろ! イメージしろ!

 肉体操作を完全収得した今なら絶対にできる! もっと熱くなれよ!!

 狙いは、牛馬も平気で飲み込めそうな双頭の蛇の巨体ど真ん中。指弾のコントロールの正確性までは不確定。ならばもっともあたりやすい場所を狙うのが当然だ。


 くらえィッ!


 僅かに空気を震わす音を残して硬貨が飛び出す。

 闘技場では蛇の牙をほうほうの体でかわした女怪人が、ちょうど苦し紛れに蹴りを放つところだ。蛇のほうはといえば、すでに相手の力を見抜いているのか、避けようとするそぶりもなくその蹴りを受け止めた。

 その瞬間、蛇の背中を硬貨が僅かに掠めた。

「! キ、キシャアアアア!!」

 のた打ち回る双頭の蛇。

 その突然の狂乱に観客も、そして女怪人もただただ呆然とするばかりだ。

 やがて蛇は二つの頭から泡を吹き出しつつ痙攣し始め、しまいにはとうとうピクリとも動かなくなった。


 あ、危なかった……。

 硬貨が揚力を受けて浮き上がってしまい、危なく空振りに終わるところだった。やはりこれだけ距離があると、あの巨体が相手でも命中精度はお笑いレベルに低下してしまうようだ。もっとも、これは指弾のスキルレベルを上げれば改善されるのかもしれないが。

 周囲の様子に耳を傾けてみるが、どうやら私が指弾を放ったことに気づいたものはいないようだ。

 ほっと一安心していると、後ろからまたあの会話が聞こえてきた。


「まあ奥様。あのモンスター、また生き残りましたわ」

「ほんとう。なんて悪運がいいんでしょう。でもこれで、またあの道化振りが見られますわね」

「おほほほほ。次は闘技場の関係者もそろそろ本気で処分するのではなくて? 今日も大方そのつもりだったと思いますわ」

「違いないですわ。そろそろ飽きが来るころでしょうし、最後は派手に貪り食わせるか、冒険者に切り刻ませるか……うふふふふ」


 一難去ってまた一難、か。

 せっかく出会った、秘密結社への手がかりをここで失うわけには行かない。

 こいつは早めに、どうにかしないといけないようだな……。

現時点ステータス

【名前:なし】  【称号1:尊厳を破壊する者 称号2:裏迷宮主討伐者】

 種族:C怪人(成体・前期)  レベル:1  未確定BP:78

 生命値:400/400/670  魔力値:270/270/670

 肉体:200   精神:150  

 器用:160   俊敏:160

 信仰心:120  運:55

【スキル】

 肉体操作Lv.10(MAX)

 投槍術Lv.1(↑4BP)

 投槍術(特殊)Lv.2(↑4BP)

 槍術Lv.03(↑4BP)

 指弾Lv.1(↑4BP)

 流水拳(極)Lv.∞ 消費魔力:25

 毒手(神経毒)Lv.10 消費魔力:3(MAX)

 神経毒作成Lv.1

 気配察知(強)Lv.1(↑8BP)

 気配遮断(強)Lv.1(↑8BP)

 睡眠耐性Lv.5(↑4BP)

 待伏せ

 家計簿

【獲得可能スキル】

 どS(要4BP)

 窮鼠の一撃(要4BP)

 ソムリエ(要20BP)

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