表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コマンダー03  作者: 前頭禿夫
49/57

初心者用? 迷宮攻略2

 実体化した直後のオークさんに槍を突き入れる。

 股間にヒット!

 素早く引いた槍を、ひざから崩れ落ちるオークさんの首に突きこみ、介錯する。

「ふぅ」

 出てもいない汗をぬぐうふりをする。これで今回のリポップは終了。一仕事終えた気分だ。

 ビールが呑みたいね!


 サーベルタイガーを狩りまくったときもそうだが、どうもこういう単純作業になると時間を忘れてしまう。

 社会人だったときは単純労働の繰り返しは苦手だったんだがなぁ。やはりこの肉体のおかげだろうか。

 同じ動作を飽くことなく繰り返せるというのは、非常に恐るべき特性だ。

 肉体操作を意識していることも大きな要因であろうが、扱えば扱うほど、槍捌きが上達している。

 同じ動作を、しかしわずかに修正を繰り返しながらひたすらひたすら続けるのだ。

 同じ動作でありながら、毎回違う。それもわずかなぶれやずれを常に修正しながら繰り返される。

 自分でも、リポップ管理に入って最初の一突きと、今の一突きでは雲泥の差があることが実感としてわかるのだ。楽しくなってくる。


 オークから回収したエネルギーストーンを山に向かって放り投げる。

 すでに、子供が砂浜で作る山くらいのサイズの、うずたかく積まれた、エネルギーストーンの山が出現していた。

 いつも首からかけているあの道具袋は、エネルギーストーンでぱんぱんに膨らんで、その横に置かれている。ちなみに持ち運ぶ際を考え、山の下にはドレスが敷いてある。風呂敷のように包んで持ち帰る予定。

 しかし、おっさん(見た目美少年)が素っ裸で、素っ裸のオークを槍で突く。

 ひどい字面だ。

 もはや時間の感覚はすっかり無いのだが、一週間くらいひたすらオークを突き殺していたのではないだろうか。

 うん。やりすぎた。槍だけに。

 おっさんギャグ! 私はおっさんの心を忘れない!

 あほ言っとらんで、ステータスを確認しよう。


【名前:なし】  【称号:尊厳を破壊する者】

 種族:C怪人(亜成体)  レベル:15  未確定BP:24

 生命値:120/120/230  魔力値:110/110/230

 肉体:60   精神:30  

 器用:40   俊敏:40

 信仰心:80  運:15

【スキル】

 肉体操作Lv.04(↑20BP)

 投槍術Lv.1(↑4BP)

 投槍術(特殊)Lv.2(↑4BP)

 槍術Lv.03(↑4BP)

 流水拳(極)Lv.∞ 消費魔力:50

 毒手(神経毒)Lv.5 消費魔力:5(↑5BP)

 気配察知(弱)Lv.5(↑2BP)

 気配遮断(弱)Lv.1(↑2BP)

【獲得可能スキル】

 どS(要4BP)

 待伏せ(要4BP)

 窮鼠の一撃(要4BP)

 家計簿(要100BP)

 ソムリエ(要20BP)


 レベル15か。ずいぶんあがったな……。

 24時間ひたすらレベル上げをするbotみたいなものだからな。

 残念なことに、槍術はLv.3までしかあがっていない。

 ただ、その理由は思いつく。自分がやっているのはひたすら槍をつく、引くという基本動作だ。その基本は繰り返しの結果としてかなりのものになっているが、槍に限らず長物は円の動きを基本とするはずだ。そこに踏み込んでいない段階では、ここが限界ということだろう。

 さて、BPの割り振りは保留にしようと思う。

 現状、問題を感じていないのだ。

 ドレスでエネルギーストーンを包み、右肩から左脇を通して結ぶ。そして袋を首から提げる。

 ……重さはさほどでもないが、動きが阻害されそうだ。今後どうにか工夫が必要だな。

 槍2本を持つ。

 さあ、ダンジョン探索といこうか。


 小部屋の先は、行き止まりの国でした。

「…………」

 神隠しの国じゃないんだから。

 でも、冷静に考えればそうだよなぁ。一週間くらい、あの小部屋でひたすらオークを狩ってるのに、一度も他の冒険者と遭遇していないのだ。

 このダンジョンに入って最初の十字路、あそこを右に来たのがこのルートだが、行き止まりだということはここを稼ぎ場にしている冒険者の間では常識なのかもしれない。

 しかし地下1階、行き止まりか。

 ふ~ん。既視感を覚えるねぇ。こいつはちょっとあるんじゃないかい?

 カメレオン怪人さんの口調を真似てみる。

 ま、駄目でもともとだ。調べてみよう。

 まず、突き当りの壁に触れる。軽く体当たり。うむ、異常なし。

 通路左右の壁、まったく変哲の無いところを一歩ごとに同じことを繰り返していく。隠し扉探しの基本だよね。

 そういえば罠発見や隠し扉発見スキルは覚えられないかな。あるとすれば気配察知の上位からの派生だろうか。気が遠くなりそうだ。

 結局、隠し扉は見つけられず、戻った小部屋はオークさんがすべてリポップ済み。骨折り損だったかな。

 とりあえず、こっちの通路で少し休憩しよう。

 通路を行き止まりの中ほどまで戻ると、荷物を降ろしてごろりと横になった。

 石造りのダンジョンの床はひやりとして気持ちいい。睡眠は必要ない体だが、軽く目を瞑って休憩するのもいいだろう。

 そう思いながら天井をなんとなしに眺めていると、違和感を感じた。

「なんだ……?」

 自分が感じている違和感の正体に思い至らず、天井を片っ端から注視していく。

 あった。

 レンガひとつ分程度の大きさの石。その石だけが周囲と材質が違い、少し張り出してまるでスイッチのようになっている。

 立ち上がると壁に立てかけていた槍を手に取り、その石突でもって、そのスイッチを押し込む。

 ズズズズ……。

 天井の一画がゆっくりと降下してくる。

 ずぅっと伸びてきた天井を、真下を避けて待つと、やがて床にぶつかろうかという直前で止まる。

 エレベーターがそのまま下りてきたかのような形をしたそれは、三辺を石壁に囲まれ一辺だけが出入り口として開いている。

 中にはのぼり梯子。


 地下都市建設時の逸話を語った際の、キリ姉さんの言葉が脳裏に蘇る。

「いいかい03番。迷宮内部は別次元だ。天井を掘っても上の階には到達しない。床を掘っても下の階の天井に穴が開くわけじゃない。迷宮外の常識にとらわれると、その点を見逃しがちだよ。気をつけるんだね」

 そうだ。

 ここは迷宮、ダンジョンの地下1階。

 天井の先は地上、ではないのだ。

「宿星、星の導き。おもしろい」

 サキちゃんの声が聞こえた気がした。


 エネルギーストーンの備蓄は十二分。

 2本の槍を左腕に抱え持ち、私はのぼり梯子に右手をかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ