表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コマンダー03  作者: 前頭禿夫
46/57

攻略準備

 ぽりぽりぽりぽり。

 二箇所目の迷宮に到着し、山の中で準備を始めて半日ほど。

 夜をとおして活動し続け、再び上がった太陽も高くなりつつある。

 そんな中、エネルギーストーンをかじりつつ、のんびりと周囲を見渡す。

 うむ、山だ。


 現実逃避してる場合じゃねえええ。

 幼児体型だったときは扱える道具にしたって限界があったから妥協もしやすかったが、下手に力がつき、体ができあがってきたのがまずい。

 手ごろな枝を手に入れて石槍を作ってみても、どうにも使いづらさを感じるし、ちょっと使えばあっという間にぽっきりだ。幼児のときとはわけが違う。

 まいったなぁ。結局的に用意できたのは投槍器アトラトスだけか。

 首からかけた小袋の口をあけ、中から貨幣の入った袋を出す。

 少ない。

 それも当然だろう。盗賊はそれなりの量の貨幣を持っていたが、幼児の体では持てる荷物に限界があった。そして最優先したのはエネルギーストーン。

 この世界の物価は知らないが、武具というのは大概、値の張るものだ。

 初心者らしきPTが採取をやっていたのも、ダンジョンにもぐるという武器防具を消耗する稼ぎ方以外が大切だという点もあったのだと思う。

 しばらく思案する。

 よし、盗もう。

 え、それでいいのかって?

 いいのだよ、私は怪人なのだから。わはははははは。

 迷宮の場所は覚えた、とんぼ返りだ。


 往路は冒険者の足に合わせていたこと、休憩に野営を挟んだことから丸一日かかったが、復路は全力ダッシュ兼無休憩だ。

 とはいっても、まだ少年体型。かつて目標地点Mに向かってダッシュしたときのような速度とは比べ物にならない。なんだか肉体の衰えを見せ付けられたような気がして内心ショックを受ける。

 それでも時間はかなり短縮し、まだ夜もあけやらぬ時間帯に到着した。

 ダラムの街、ではない。

 その周辺に広がる耕作地帯、そこに点在する倉庫にである。

 倉庫といっても収穫物を収納しておくものではない。そっちは恐らく盗難対策もそれなりにしてあるはずだ。ここは農具を置いているところだ。ちなみに少しはなれたところには家畜小屋と宿舎らしきものが見える。

 こういった倉庫があることは、近辺を行き来するなかで目にしてわかっていた。

 さて、お百姓さんの朝は早い。すばやく行動しよう。

 倉庫の入り口に取り付く。

 鍵がかかっている。

 だが、それは人間相手の盗難を警戒したものではない。野生動物などが中を荒らしたりしないようにした、つっかえ棒を何本か通しただけのものだ。早速はずして中へ入る。

 おじゃましまーす。

 おお。

 素晴らしい。バーゲンセールではないか!

 が。

 残念なことに、ほとんどが牛馬用のものだ。そうか、これだけ農耕が大規模だとそうなるのが当然か。

 人間が扱うサイズのものは無いかな。

 暗がりを見渡していくと、発見!

 でっかい鎌。フォーク。そして鍬。あるじゃないあるじゃない。

 さっそく金属部分のつくりを確認する。

 しっかりとしたつくりだ。この社会の鍛冶技術の高さが伺えるな。

 木製の柄の接続部位も確認する。

 ん、これは少し緩んでいるな。隣はどうかな。こっちはしっかりしてる。

 いかん、目移りしてしまうぞ。

 大量に盗んでも、持ち運びで苦労するだけだ。しかし手入れする技術も金も方法も無い以上、消耗品になるだろう。

 取り回しと丈夫さを考慮し、フォークを2本選んだ。

 槍術スキルで使うことができるのは、おそらくフォークだけだ。モンスター相手には先端の金属部分が簡単に折れてしまいそうだが、槍投術で投げるのに適している重心を持っているのもフォークだ。折れた後は先端を金属で補強した棒だと思えばいいだろう。

 よし。

 一応、気配を隠し、周囲の気配をうかがう。

 問題なさそうだ。外に出て、つっかえ棒を挿しなおす。

 いざ行かん、ダンジョンへ!


 ようやっと戻ってまいりました、こちらダンジョン前のおっさんでございます。

 エネルギーも減ってきていたので補給。すこしエネルギーストーンが心もとなくなってきた。そろそろ本気でモンスターを狩り始める必要がある。

 武器として失敬してきた鍬は、金属部分での攻撃は考慮に入れず、棒術として使っていこうと思う。

 こうして考えると、クリティカルのありがたみがわかるなぁ。

 愚痴を言っても仕方ない。

 武器が武器だけに、冒険者に姿を見られるのは避けなければならない。気をつけることが多い。

 気配を探る。周辺に人影なし。

 エネルギーも完全回復したところで、さあ、行きますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ