ダンジョン発見への道
若かりし日の欲望は捨てた!
ここにいるのは、現実社会に家族という名の安らぎを求めるおっさんなのだ!
え、若返ったから欲望を再発動させろ? 女幹部さんをあひんあひん言わせたいんだろう?
もうヤメテ! おっさんもうそういうのはいいの!
欲望は滅びぬ。なぜなら欲望こそ人類の夢だからだ!
うるさいぞ、大佐の名台詞をシモに変換すな!
脳内金曜ロードショーに悶絶しつつ文句をつけていると、ふと、近くで水を汲んでいた少女たちと目があう。
「ねえねえ、ちょっとかわいいよね」
「うん。でもなんだか変な服」
「旅人にしてもちょっと変よね。かわいいからいいけど」
聞こえてる。聞こえてるんだよ小娘どもおおおおお。
お水に注ぎ込んだ給料の額が脳裏に浮かんでくる。
ああああああ、やめてくれぇ。俺のトラウマをえぐらないでくれぇ。
02番にアドバイスしたのは、自身の経験があればこそだったのだ。自身の経験からどうやって手玉に取られたかよくわかっていたからなのだ。
02番が地下都市№1ホストになったときは嬉しかったけど、あとで自己嫌悪に襲われたんだよ! 許して!
水に映った美少年顔を覗き込む。
く、ずっとこうやってたらなんか神話のナルキッソスみたいじゃないか。
うん? ううううん?
あれ、この顔どっかで見た顔だぞ。
あーーーーーーーーーーー!
これ、02番の顔じゃねえか! なんで地下都市の№1ホストASUKAの顔になってるんだよ! まだ子供だけど、めちゃくちゃ面影があるよ、これ!
いかん。泡を吹いて悶絶しそう。
顔に巻く布とかないだろうか。ないよな。衣類すら十分満足できない現状なのに。
大体、昼間から顔隠して歩くとか不振人物でしかないわ。逆に注目を浴びてしまう。
うぐぐぐ、隠密行動とはいわぬが、目立つ行動はしたくなかったのに……。
とりあえず建物の陰に退避する。
視線が切れる。ふぅ、一安心。
がちり。
……この感覚は。
はい、気配遮断(弱)Lv.1を取得いたしました。
嬉しいけど、嬉しいけど、うぐぐぐぐぐ。
そんなこんなで怪しくならないように人目を避けつつ、やってまいりました冒険者ギルド。
冒険者らしき風体の人々が頻繁に出入りしているので、まず間違いあるまい。
ちなみに中には入りません。入ってどうするの?
さて、探しているのは初心者っぽい、あまり強そうではない冒険者。
それも単独ではなく、しっかりPTを組んでる皆さんだ。
狙いは、彼らが向かうダンジョンの位置確認。
この街で見かける冒険者の数に対して、あのダンジョンにきていた人数で考えると、どうしても周囲にもう何箇所かダンジョンがあるとしか思えない。
それに、あのダンジョンにきていた冒険者たちは、皆なかなか実力のありそうな連中ばかりだった。なんというか一流ではないだろうが、ベテランの風格があった。
では街でそこそこ見かける駆け出しっぽい、初心者に毛が生えたような彼らはどこへ行ってる?
それこそが、私の狙い。ふふ、頭脳が冴え渡るぜ。
きゅぴーん。
父さん、妖気です!
おっさんの妖怪アンテナに感! 安っぽい革よろいにまだまだな顔つき、そして熱意と無駄にあふれる自信。
うむ、まごうことなきルーキー。テンプレか。
ではでは、早速ストーキングといこうではないか。
結局のところ、3PT目にして正解を引き当てた。
最初と2組目のPTは、森に入って採取をしたり、積荷作業や運搬をしていた。
テンプレルーキーとかいってゴメンナサイ。地に足をつけて、立派に働いておられました。本当に申し訳ない。赤面の至りだ。
どうも冒険者は一攫千金目的のギャンブラーという感覚だったせいか、泥臭い仕事をしっかりこなす姿を見ると頭が下がってしまう。地道な努力の上に夢を目指すならいいじゃないか、応援したくなる。
ま、世の中そんな単純ではないので、真面目な冒険者がいれば不真面目なのもいるわけだが。
さて、ストーキングの結果見つけました、新たなダンジョン!
行程はダラムの街を出てからほぼ丸一日。途中野営を経て到着いたしました。
ちなみに、野営中の冒険者に接近、逃走を見つからないように繰り返した結果、気配遮断(弱)がLv.2にあがりました。
これをきっかけに考察したのだが、スキルは該当する行動によって取得したりレベルアップが可能なのだろうと。それならBPが必要ないじゃないかと思いがちだが、恐らくそこは違うと思う。BPでレベルアップすることのメリットは、時間が短縮できること、そして現状では取得できないレベルであっても取得可能であることなのではないか。ついでに、どう考えても取得でき無そうなスキルはBPでしか無理、とかかな。
まだまだ考察中だが、とりあえずこの認識で問題は無いだろう。
そうそう、夜間訓練で気がついたことがもうひとつ。
この体、夜目が利く。
これはすんごくありがたい。秘密結社の科学力は世界一ィィィィィ!
冒険者たちがダンジョンへと挑むようだ。
あまり高くない山のふもとにあいた洞窟が、どうやらダンジョンの入り口のようだ。名前はあるのだろうか。
彼らは準備がどうたら、モンスターがうんたらと話をしつつ入っていく。
よし。
その背を見送り、自分の準備を始める。
いきなりダンジョンに挑んだりはしない。毒手という格闘術はあるものの、積極的に武器は使っていく予定。それも飛び道具。
スキルとして身につけた投槍術だ。石器時代にも用いられた武器だし、威力は折り紙つきだ。
問題は、投槍器はいいとしても、槍の穂先として用いることができる黒曜石のような固い石があるかだが……。まあ贅沢は言わぬ。無かったらとりあえずとがって無くてもいいから硬そうな石をつけよう。それを2本用意し、1本を投げてダメージを与え、もう1本で接近戦だ。
槍術ではなく棒術になるのかもしれないが、別にかまわない。
使えるものは何でも使えばよかろうなのだぁ!




