ステータス向上 後編
ううむ、予想が外れた。
現在のステータスは以下のとおり。
【名前:なし】 【称号:尊厳を破壊する者】
種族:C怪人(亜成体) レベル:1 未確定BP:70
生命値:80/80/190 魔力値:110/110/190
肉体:40 精神:30
器用:20 俊敏:20
信仰心:80 運:15
【スキル】
肉体操作Lv.03(↑20BP)
投槍術Lv.1(↑4BP)
投槍術(特殊)Lv.1(↑4BP)
流水拳(極)Lv.∞ 消費魔力:50
毒手(神経毒)Lv.5 消費魔力:5(↑5BP)
【獲得可能スキル】
槍術Lv.01(要4BP)
どS(要4BP)
待伏せ(要4BP)
窮鼠の一撃(要4BP)
家計簿(要100BP)
まず、魔力値は精神と信仰心の合計であることが判明。正直、偶然だろうと思ってたほうが正解だった。
そして肉体操作をLv.3まであげたが、派生スキルが発生せず。こっちのほうがつらい。
獲得を狙っているのは気配察知と遮断なのだが、肉体操作のレベルがもっと必要なのか、それとも肉体操作とは無関係に取得できるのか、正解がまったくわからない。
それにスキルの派生が起きるのかどうかも、これでは正直わからない。
当たり前だがわからないことだらけだ。
BPは一度振り込めば訂正は効かない。まず割り振ってみて確認、という手段が取れないのはつらいな。
残りBPは70か。悩みどころだ。
まず、一番ステータスの低い運に5割振って、20にしようか。
……問題発生。
運にはBPが割り振れないことがわかった。
だが、これは考えようによってはラッキーだろう。悩むべき選択肢が一つ減ったのだ、良しと考える。
さて、そうなると。
肉弾戦が主体のおっさんとしては、やはりそこにかかわる肉体、器用、俊敏は上げておきたい。
肉体操作によってそれらは底上げされるのだろうが、その計算式がそれぞれの値の3割アップとかだった場合、基本のステータスが低かったら有効性も低下してしまう。
よし、ぞれぞれ+20して、60、40、40にしよう。
残りの10BPは保留だ。
【名前:なし】 【称号:尊厳を破壊する者】
種族:C怪人(亜成体) レベル:1 未確定BP:10
生命値:120/120/230 魔力値:110/110/230
肉体:60 精神:30
器用:40 俊敏:40
信仰心:80 運:15
【スキル】
肉体操作Lv.03(↑20BP)
投槍術Lv.1(↑4BP)
投槍術(特殊)Lv.1(↑4BP)
流水拳(極)Lv.∞ 消費魔力:50
毒手(神経毒)Lv.5 消費魔力:5(↑5BP)
【獲得可能スキル】
槍術Lv.01(要4BP)
どS(要4BP)
待伏せ(要4BP)
窮鼠の一撃(要4BP)
家計簿(要100BP)
よし、完了。
ステータスの設定も落ち着いたので周囲を見渡す。
ダンジョンの中は痛いほどの静寂に包まれている。正直、意識を失っている間にモンスターに襲われて命を落としても仕方ない状況だったが、どうやら運がよかったようだ。
ダンジョンのエネルギーが尽きて、モンスターがリポップしなくなったのだろう。
エネルギーが尽きた、か。この後ダンジョンはどうなるのだろう。素っ裸にドレス着用という変態極まりない格好なので、できれば衣服でもないか探したいところだったが、探索中に崩壊が始まりましたなんてことになったら洒落にならない。
ここは素直に外に出よう。
エネルギーストーン確保のために、手ごろなダンジョンがあればいいんだがなぁ。
さて、戻ってきました、え~とダラム、だっけかこの街の名前。
ちなみにドレス着用だが、森で採取した蔓で腰縄を作り、袖を捲り上げて貫頭衣のようにしている。当然下着は無い。ドレスがスケスケでなくてよかった。
相変わらずの人ごみ。いったいこの街の経済を支えているのは何なのだろうか。貿易行路の重要中継地点とか、金が採掘できるとか、何かしら中心になる産業があると思うのだが。あるいはこの一帯の首都機能を持っているのだろうか。
うむ、わからん。どうせおっさんには関係ないしね。
戻ってきた目的は、冒険者たちの動向を探ることだ。
あのダンジョンが「涸れた」という情報はすでに冒険者たちに伝わっているはず。情報収集中にギルドという言葉も出てきていたから、ファンタジーおなじみの冒険者ギルドがあるのは間違いない。いくら街に程近いとはいえ、たった三日ほどで冒険者たちの姿がぴたりと途絶えたことを考慮すると、彼らの情報網はなかなか優秀なようだ。
その点を考慮すると、この近くに他のダンジョンがなければ、冒険者の数も減ったりしているのではないかなぁと思うのだが。
さっぱりわからねぇ。人が多すぎるんじゃ!
それにしても、先ほどからちらちらと視線を感じる。やはりこれだけ豊かな都市で、このなんちゃって蛮族衣装は目立つのか……。くそ、盗賊の衣装をあと2着くらい奪っておくべきだった。
ええい、一度気にし始めたら視線が妙に気になる。よく注意して感じ取ってみると、思っていた以上に多くの視線がこちらを向いているではないか。ちょっと居心地が悪すぎる。
監視されている、とかそういうことではないらしい。まとわりついてくる視線は多いが、それほど長い間ひとつの視線が向けられ続けるわけではない。いい気分ではないが、我慢するより他になさそうだ。
そんなことを考えていると、不意に、頭の中でがちりと何かがかみ合う感覚があった。
この感覚は。
ステータスを確認する。
……あった。
【スキル】
肉体操作Lv.03(↑20BP)
投槍術Lv.1(↑4BP)
投槍術(特殊)Lv.1(↑4BP)
流水拳(極)Lv.∞ 消費魔力:50
毒手(神経毒)Lv.5 消費魔力:5(↑5BP)
気配察知(弱)Lv.1(↑2BP)
やった、気配察知だ! なるほど、肉体操作かステータスか知らないが、何かしらの条件をクリアした上で、そのスキルの取得にかかわる行動を成功させればいいのか!
冷静に考えると、えらい難しい条件だな、これ。
まあいい。(弱)とはいえ、気配察知だ。これはすぐさまBPをつぎ込んでレベルを上げよう。
というわけで、保留にしていた10BPをすべてつぎ込んで気配察知(弱)をLv.5に上昇させる。
よしよし。まだまだ不十分だが、これで先日の不意打ちのような状況を少しでも回避できる可能性があがるならば万々歳だ。
と、思ったのだが。
うん。見られてる。
めっちゃ見られてるよぉぉぉ。
気配に敏感になった結果、かなり見られていることがわかるようになってしまった。
確かに監視しているわけではないのだが、なんだろう、この視線の多さは。
ためしに、今向けられている視線のひとつの追ってみる。
商売をしている女性。目が合う。にっこり笑われた。こちらも笑い返す。視線が外れたな。
次の視線。女子高生くらいの年頃の少女2人。左側の少女と目が合う。きゃいきゃい喜ばれた。右側の少女を見る。こちらもはしゃぐ。そして、2人は通り過ぎていく。
なんかいやな予感。
次々視線を合わせていく。その先その先、みんな女性ばかり。あ、なんか時々ひどくねばっこい視線をよこす男性もいる。
こ、これはもしや。
鏡、鏡は無いか!?
ええい、見当たらぬ。それもそうか、鏡なんて貴重品だろう。
くそ、何か代替品は無いか。
そう思っていると、広場に出た。広場の中央には、水場がある。上水路のようだ、人々が水を汲んでいるのが見える。
小走りに駆け寄り、水を覗き込んだ。きれいな水だ、顔が映る。
美少年。
…………。頭が痛い。
もう一度覗き込む。
美少年。うごごごごごごご。水面に映る美少年が頭を抱えている。
おっさん、そういうのはいらないって前に言ったよね!!




