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コマンダー03  作者: 前頭禿夫
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地下都市散策

 ぶらりぶらりと3人、いや3匹連れ立って地下都市を散策する。

 カジノから少し離れると、フリーマーケットのような光景が広がっていた。

「酒とギャンブルはカジノで提供してるからね。あたしら以外が提供することは禁止してる。それ以外の取引なら自由にできるのさ」

「ただし場所代は払う」

 なるほど。

 二人の解説を聞きながら出店を冷やかして回る。と、なにやらまたもや争い合う声が聞こえてきた。


「困りますよぉ。ちゃんと場所代を払ってもらいませんと。あんまりわがまま言ってると、怖いお兄さんが来ちゃいますから。お願いしますよ、ね」

 困ってるのか脅してるのかよくわからないことを言ってるのは、カジノの店員の制服を着た男だ。こちらに背を向けているので顔はわからない。

 口調だけ聞くと、なんだか軽薄そうな印象を受けるな。

「なに言ってやがる。俺たちゃ、この迷宮に入るときに税金は払ってきたんだ。どこで自分のものを売ろうが勝手だろうが!」

 対する相手は、いかにも荒くれ者の冒険者という三人組。

 どうやら今のやり取りを聞くと、この三人組はここのルールがわかっていないらしい。新規参入組だろうか。

 双方ともにそのまま言い争いが続いていたが、やがて堪忍袋の緒が切れたのか、冒険者が、カジノ店員を殴り飛ばした。

 そのとたん、周囲が一斉に静まり返った。

 殴り飛ばした冒険者たちの隣で店を出していた者たちが、慌てふためいて荷物をまとめると、その場から距離をとった。その様子に、何かおかしな気配を感じたのか、冒険者たちがきょろきょろと周囲を見渡した。

 ガシャン。ガシャン。

 人混みの向こうから、全身鎧をまとった騎士のような足音が聞こえてくる。

 ガシャン。ガシャン。

 その足音にあわせるように、人混みが左右に割れ、道ができる。

 ガシャン。ガシャン。

 やがて足音の主が、冒険者たちの前にその姿を現した。


 う、宇宙刑事!? 宇宙刑事ギャ○ンじゃないか!

 若さ、若さって何だ! おっさんには失われたものさ!

 いかん、ちょっと興奮してしまった。宇宙刑事三部作、大好きだったからなぁ。

 宇宙刑事はそのまま、殴られた顔をさすっている店員を一瞥し、冒険者たちに向き直った。

「お、おう。なんだ手前ぇ。そいつが場所代払えとか訳わかんねぇこといいやがるから殴っただけだぜ」

「抜け」

「……は?」

「剣を抜け。せめて武器を抜くぐらいは許してやろう」

 なかなか渋い声で冒険者に告げた宇宙刑事が、腰につけた武器を取る。

 ……十手かよ! 宇宙刑事に十手とかないわー。ないない。……なかなかアリだな。うん。似合ってる。驚きだわ。

 自分たちが明らかな敵意を向けられていることに気づいた冒険者が、あわてて武器を構える。だが、次の瞬間には、振り下ろされた十手によって一人の頭が熟れすぎたトマトのようにつぶれた。

 そりゃ長剣と同じくらい長さのある金属の棒でぶん殴られればそうなりますよね。当然過ぎる結果よ。

 しかし速い。まるで全力を出してないのだろうが、ぎりぎりかわせるかどうかという速さだ。この宇宙刑事、強いぞ。すくなくとも私じゃ勝てないな。

 そんなことを考えている間に、続けてトマトが二つはじけた。わお、問答無用。

 宇宙刑事はそのまま立ち去る……あれ? こっちに歩いてきたぞ。

「久しぶりだな、キリ、サキ。面白い個体の研究だと聞いたが?」

 おやおや。宇宙刑事さんは、どうやらうちのお目付け役2匹と旧知の間柄のようです。というか顔広いな、この二匹。伊達に博士の助手をしていたわけではないのか。

「お久しぶり、マフィア将軍。相変わらず現場主義だねぇ」

「攻略指揮官が用心棒。怖すぎ」

 怖いといいつつ、サキちゃんの口調は楽しげだ。

 てか、ちょっと待って。今何か重大な発言があったよね。いや、宇宙刑事で十手持ちで名前がマフィアとか、どんなキャラクターなんだよってつっこみもしたいけど。今さらっと、攻略指揮官っていったよね。

 え、この宇宙刑事さんが、この地下都市を作り上げた指揮官さんなの。

「イーッ」

 とりあえず敬礼しておく。困ったときはまずお辞儀! アイムジャパニーズビジネスマン!

「ああ、かまわん。私は堅苦しいのは嫌いでね。楽にしたまえ。しかし、そうか、君がドクターの言っていた個体か」

 じっと見つめられる。う、かなりのプレッシャー。なんというか、この人、強者の気配がぷんぷん漂ってます。さっきの冒険者たち、こんな人相手に武器を抜くとか馬鹿じゃね? あ、そうか。気配を感じ取れなかったのか。気配察知持ってなかったんだろうなぁ。

「ふむ。何か困ったことがあったら相談にきたまえ。ドクターから直接頼まれてもいる。よほどのことでなければ融通を利かせよう」

 おお、ありがとうございます。切れ者上司に目をかけてもらえるってうれしいよね。その代わり、プレッシャーも半端なくなるけど。

「ありがと。大丈夫だとは思うけど、何かあったら頼りにさせてもらうよ」

「感謝」

 二人のお礼に、将軍は満足そうに頷く。

「ではまた会おう。私はもう少し見回りをしていく。君たちはゆっくり見て回るといい」

 立ち去っていく宇宙刑事将軍。

 はあ、風格漂ってますわ。あれだな、「先生お願いします」って言ったら、「ど~れ」って襖を開けて剣聖がでてきたような感じだな。

 怖すぎるだろ、その用心棒。サキちゃんの言葉に納得だわ。


 ふと視線を感じて振り返ってみると、先ほど殴られたカジノの店員がこちらを見ている。

 なんだ? まだ帰ってなかったのか。それとも何か用だろうか。

 んんん。んんんんんん? あれ、この店員さん、どっかで見た顔だぞ。あれ、あれれ?

「やっぱり、03番だよね。僕だよ、覚えてる? 02番だよ」


 ホ、ホスト2号おおおお!

感動の再会です。

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